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390 裏切りの刃 ①

「アッハッハッ!ほら、どうしたどうした!?この程度でくたばるようなタマじゃねぇだろ!?」

「ぐはっ……!?この、化け物が……!」

「はっ、モンスター相手に化け物ってぇのは褒め言葉なんだ、ぜっ!」



 また一人、騎士を冒険者たちの中に投げ飛ばしながら、ガラルは不適な笑みを浮かべ続ける。

 最初の会合から、数十分と経過していることもあり、すでにこの場には何組もの集団が合流してきていた。

 だと言うにも関わらず、ガラルは一人、彼らを相手にして、目立った傷も負わず、息切れ一つすることなく戦い続けていた。



「くっ、遠距離班!撃てぇい!」

『――――っ!!』

「……はっ」



 最初に彼らに発破をかけ、自身も前に出つつ、全体の指揮を取っていた老騎士が、ガラルの周囲に誰も居なくなった隙を見計らい、冒険者たちに指示を飛ばす。それに合わせるようにして、ガラルの元へ矢やスキルが飛んでいく。

 が、ガラルはそれを鼻で笑うと、スキルの隙間を縫うように動き、迫る矢は手にした武器で打ち落とし、一切の被弾をすることなく耐えきった。



「――嗚呼、いい。やはりいい!最高だ!最高に手に馴染む!」



 **



「アリス、ガラル」

「あ?なんの用だ?ご主人サマ?」



 ガラルたちが、向かってきているであろう冒険者たちを迎え撃つべく、散ろうとしていた中、アリスとガラルは、ケインに呼び止められていた。



「二人とも、武器はどうするつもりなんだ?」

「んなもん、拳一つで十分だろ……って言いてぇところだが、やっぱ得物の一つはねぇと物足りねぇな」

「わたしも……そうね、この剣の扱いにも馴れてきたけれど、やっぱり、わたしには槍の方が合っているわね」

「……だろうな。だから、ティア」

「はい。マスター」



 いつの間にかケインの側に立っていたティアは、空間から()()を取り出し、二人の前に差し出した。



「っ、これは……!?」

「俺が、リアーズの制作と一緒に、ティアに頼んでいた二人のための武器だ。受け取ってくれ」



 **



 〝カグナ〟


 ティアによって作成された、ガラルの新たな武器。柄から先にかけて、徐々に大きくなっていく六面体のシンプルな武器であり、〝切る〟ではなく〝叩く〟が主となる、限りなく金棒に近しい大剣となっている。

 ガラルの持つパワーを最大限発揮できるよう、並みの大剣よりも数倍重くなっており、激震(ヴィード)をフルに使っても耐えうる強度を誇っている。

 文字通り、ガラルの力を最大限に生かせる武器となっていた。



「ってことで、今度はこっちからいくぜ!」

「くっ……!させぬ!」



 地面を蹴り、冒険者たちの元へと駆け出すガラルを前に、老騎士が巨大な盾を持って前に出る。

 そして、助走によって威力を増し、大きく振り下ろされたカグナを、正面から受け止めた。



「オラオラどしたァ!最初の威勢は何処へ行きやがったんだァ!?」

「うぐっ、うぅぅぅ……っ!?」



 ガラルは、受け止められたことをいいことに、カグナで追撃を叩き込んでいく。

 老騎士も、冒険者たちから何重にもバフを重ねて貰っているとはいえ、ガラルの容赦ない連続攻撃を、そう何度も受けきれはしない。

 やがて、ピシッ、という音とともに、大盾に大きなヒビが入った。

 そしてそれを、ガラルが見逃すハズもなく、ガラルはそのヒビ目掛けて振り下ろし、盾の一部を完全に破壊することに成功した。



「な――」

「貰っ――」



 盾の一部が壊されたことに、思わず意識を向けてしまう老騎士。

 それとは裏腹に、ガラルはチャンスと言わんばかりに、砕けた部分に狙いを定め、更なる破壊、あるいは盾から手を離させようと、カグナを振り上げる姿勢に入った。


 その瞬間だった。老騎士の背後から、紫電が走ったのは。



「――っ!」



 紫電を纏ったソレは、二人の頭上で静止する。それを見たガラルは、咄嗟の判断で地面を蹴り、後方へと飛んだ。

 その瞬間、紫電はちょうど二人のいた場所の中心目掛けて墜ち、そのまま老騎士を平然と巻き込みながら、広範囲に紫電を撒き散らした。



「――はっ、ようやく動きやがったか」

「……』



 ガラルは、紫電の落ちた場所を睨み付けながら、歓喜に満ちた笑みを浮かべた。

 そして、土煙が晴れ、ソレは姿を表した。


 ソレの容姿を一言で言い表すならば、囚人だろう。

 首の下から指先、爪先に至るまで、紫色の皮のような布に覆われ、黒に金の金具を用いたベルトが、手足、胴体をピッチリと締め上げている。

 顔の方も、謎の仮面とマスクを、同じくベルトで締め付けており、頭の先から爪先まで、肌はおろか、髪の毛一つすら露出していなかった。

 ただ、全身をピッチリと締め付けているためか、スタイルの良さに加え、胸部の膨らみが激しく主張しており、ソレが女性であることだけは明らかだった。

 そして、彼女の手には、彼女の着ているものと同じ紫色をした、禍々しい剣が握られていた。



「んで?テメェはなにもんだ?」

「……答える義理はない』



 ガラルは彼女に問うが、彼女は男と女、二つの声が入り交じったような、そんな声で答えることを拒否した。


 実のところ、ガラルは彼女がこの場所に現れた時から、他の誰をも差し置いて、彼女のことを警戒していた。

 だが、彼女はこの場所についてからずっと、離れたところで静観し続けていたのだ。

 そんな彼女が今になって動いたのは、一体どういう理由なのか……それを知るには、戦う他ないと、ガラルは分かっていた。



「いくぞ』



 彼女が、地面を蹴る。

 それは、先の紫電を纏っていた時よりは遅い。それでも、気を抜いていれば、一瞬で首が飛びかねない、そんな速度で斬りかかってくる彼女の剣を、ガラルはカグナで受け止めた。



「……っ!?」



 剣とカグナが衝突し、火花を散らす。互いにぶつけた魔力の余波が、衝撃波となって老騎士たちにも届く。

 そして、二人は数秒つばぜりあった後、彼女の方から剣を引きつつ後方へと飛び、距離を開ける。

 その場にいた誰もが、そのたった一度の衝突で、二人の、個の格の違いを感じ取っていた。


 しかし、ガラルだけは違った。

 鬼人という種は、強敵との戦いを本能的に求めている。例外的な者も少なからずいるが、元を辿れば、この闘争本能に由来しているものが多い。

 そんな話もあり、突然現れた強敵に対し、喜びを感じているのだろうと、誰もがそう思っていたのだが……その顔には、困惑と、怒りの表情で溢れかえっていた。



「……おいテメェ。その剣、どこで手に入れた?」

「答える理由はない』

「あぁそうかよ。なら、無理矢理にでも吐いて貰うぜッ!!」



 なぜ、ガラルが彼女に―正確には、彼女が持っている剣に対し、怒りを向けているのか、老騎士たちには理解できない。

 それもそうだろう。その理由は、ガラルにしかわからないものなのだから。


 そう―彼女の持つ剣の素材に、()()()()()()使()()()()()()ということは。

風邪でダウンしてる間にちょっと減ってた……

悲しい……

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