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376 さぁ集え、神の元へ

()()()()()()()()()……っ!?」

「ダンジョンだけではない。森、洞窟、大都市、王国……この世界の、ありとあらゆる場所に穴を開け、そして繋げた。当然、この場所もな」

『――っ!』



 世界各所に、無作為に穴を開き、繋げる。

 そんな、あまりにも意味不明、あまりにも規格外、そして、現実味の無いことをやってのけたと言い張るディスクロム。

 だが、村の何ヵ所かに開いた穴が、現実であることを告げていた。



「お前、こんなことして、一体何が目的だ!?」

「私が神に至るために、必要なものが三つある。肉体、魂、力。そのうちの二つ、肉体と力は、すでに手に入れた。残すは一つ、我が糧となる、強き者たちの魂!それを以て、私は、完全なる神と()る!そして、その贄となるのはお前たちであり、この世界に生きる、愚かで愛おしい愚者たちなのだ!」



 その瞬間、ディスクロムとダンジョンコアを囲むように、魔力が障壁を作り出す。

 それと同時に、まるでソーサラーの塔で使われていた魔導具のように、空に、俺達が映し出された。



『この世界に生きる人々よ、我が名はディスクロム。この世界を守護せし神なり。

 此度の異変、不安を感じた者も多いだろう。だが、これは私にとっても不本意な事故であり、同時に、皆への助力を求める私からの声でもあるのだ。これを見て欲しい。

 この者たちは、かつてこの世界で起きた厄災を復活させ、神である私を滅ぼそうと計画していたのだ。

 現在私は、この者たちをとある場所に閉じ込めている。本来であれば、私自らが相手をするべきなのだろうが、神の掟として、過度な干渉はできない。しかし、今回は私が狙われたということもあり、こうして僅かながら、干渉することを許されたのだ。

 ……だが、見ての通り、許されたのは、あくまでも閉じ込めることだけ。それに、永遠に閉じ込めておくことは、過度な干渉に値してしまうためできない。

 だからこそ、皆の力を貸して欲しい。世界中に開いた穴は、各地を繋ぎ、この場所まで繋がっている。だが、閉じ込めることに注力しているため、直接繋がっているかまでは確約できない。そのかわり、強く思えば、自ずと導かれるようにしておいた。

 再三告げることにはなるが、時間はあまりかけられぬ。勇気ある者たちよ!神たる私に力を貸してくれたまえ!君たちこそが、英雄となるのだ!』



 そこで、ディスクロムの言葉は途絶え、映像も切れる。そして、障壁の中から、不敵な笑みを浮かべていた。



「分かったかな?私が各地を繋げた意味が」

「……世界中から戦える者を呼び出し、俺達に差し向ける。お前の言う、魂ってやつを手に入れるために……!」

「お見事!大正解だ!」



 軽い拍手をしながら、笑顔で返してくるディスクロム。安全圏から的確に、こちらを逆撫でてくる態度が、本当に疎ましく思えてならなかった。



「……そうだとしたら、貴方、やり方を間違えたんじゃないかしら?さっきの言葉、どう考えても胡散臭さ全開で、信用する気も起きないと思うけど?」

「あぁそうだな。()()()()()()()()()言葉を選んだからな」

「……どういう意味?」

「そんじょそこらに散らばっているような、有象無象の魂なんぞ、大した足しにもならない。言っただろう?私は、強い魂を求めていると。

 私の言葉を信じ、立ち上がった者。

 私の言葉に惑わされず、己の目で確かめようとする者。

 自らの名声のために、乗り込もうとしている者。

 お前たちとの強い因縁によって、引き寄せられる者。

 使命、正義、我欲、因果。なにが理由だろうがどうでもいい。()()()()()()()()()、それこそが、強き魂を持つ者だろう?」



 ……ディスクロムの言っていることは、あながち間違いじゃない。

 理由がどうあれど、戦いの中に身を落とすというのは、勇気がいる。その勇気を〝強さ〟とするのであれば……ディスクロムの言うとおり、俺達の元へ来ようとしている者達は、「強い魂を持つ者」になるのだろう。


 そんな中、ディスクロムはダンジョンコアに再び触れる。すると、障壁の中、台座の奥の方で、空間に穴が開いた。

 その先には階段のようなものがあり、どこか神々しい輝きが漏れていた。



「さて、このままお前たちの無様に足掻く様を見るのも良いが、準備をする必要があるのでね。一足先に行かせてもらおう」

「――っ、待て!」

「嗚呼……お前たちと強き者たちの、生死を賭けた闘争、実に楽しみだ。最も、その戦いで散った魂は残らず私のモノだがね。それでは」



 立ち去ろうとするディスクロムを止めるべく斬りかかるが、障壁に阻まれる。

 そして、ディスクロムが別の空間に入ったと同時に、その穴が徐々に狭まっていき、やがて、障壁と共に、跡形もなく消えてしまった。

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