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367 最後の五分間 ①

「ぅおらぁぁぁぁっ!!」

「させるかっ!」

「爆ぜろ、〝花火〟」

「チィッ!?」



 小細工無く突撃してくる健也をケインが受け止め、そこに少女が無数の小さな火の粉の球を飛ばす。それらはケインを避け、健也に向かって飛んでいく。

 健也はそれに気がつき、軽く舌打ちをしながら後方に飛ぶ。すると、丁度先ほどまで健也が居た位置ピッタリに火の粉が飛んできており、健也の身体を捕えることなく地面に落ちていく。

 そして、地面に落ちた瞬間、火の粉の球はパァンッ!という音と共に、弾けるような小さな爆発を起こしたのだった。



「それで、具体的には何をすればいい?」

「やってもらいたいことは二つ。今から五分間、わたしを守って欲しい。その上で、彼を含めた全員を、一ヵ所に集めて欲しい」

「わかった――全員に告ぐ!各自敵を確保し、五分以内に一ヵ所に集めろ!」

『了解!』



 ケインたちの背後から揃った声が聞こえたと同時、ナヴィたちが一斉に動きだし、確保に向かう。

 そしてケインは地面を蹴り、怒る健也に斬りかかっていった。



「なんでだよ……なんでなんだよ!どうして俺じゃない!どうしてお前なんだ!答えろ!ケイン・アズワード!」

「……何を聞きたいのかわかんねぇ、よ!」

「分かっているくせに、分からねぇフリしてんじゃねぇぇぇっ!!」



 健也が叫びながら聖剣を振るうが、ケインはそれを的確に捌いていく。そして、何かを待っていたかのように強い一撃を入れると、そのまま少し後方へと下がっていった。



「どうせ、脳内お花畑なお前のことだ。あいつらのことを聞いてんだろ?あぁ答えてやるよ。別に、俺が特別な訳じゃない。出会いも、きっかけも、全部が偶然だ。そのうえで、あいつらが()()()()()()()()。ただそれだけだ」

「……は?」



 あえて少し煽るように問を予想し、答えを返すケイン。健也はその答えに一瞬呆けた後、すぐさま元に戻った。



「偶然……?偶然だと?ふざけんな!そんな適当な理由で、お前が選ばれただと!?あり得ない!世界に選ばれたのは俺だぞ!?なら、選ぶなら俺だろうが!なんでお前が――」

「〝選ぶ〟と〝選ばれる〟は、同じじゃ無い。選ばれるだけなら、誰にだってできる。だが、選ぶのは、何時だって自分自身だ。小さな選択一つでも、未来は大きく変化する。だから、俺もお前も、文句を言う権利なんて無い」

「……何言ってんだお前?この世界じゃあ俺が主人公だ!俺の望む未来こそが正しいん――」



 ケインの答えに心底納得がいかない健也が、一歩踏み出しケインに詰め寄ろうとする。

 その時、踏み出した地面が輝きを放ち―次の瞬間、地面が槍のように突き出してきた。



「ぁが――ッ、なっ……!?」



 致命傷にならない程度でありながら、確実にダメージを与えてくる謎の攻撃に軽く突き飛ばされた健也。だが、地面に着地し、足を付けた地面が再び輝き、今度は背中から攻撃を受けた。



「ぐっ……!貴様、何をした!?」

「それを教えるとでも?」

「黙って答えろっ!」



 下手に動けなくなった健也は、矛盾した言葉を発しながら、ケインに向けて火球を放つ。

 だが、ケインは落ち着いた様子で左手を前に出すと、レンズのような水の壁を産み出すと、そこに激しい水流を作り出す。

 そして、それが火球と衝突した瞬間、火球が激流に飲み込まれ、一瞬にして消え去った。



「んなっ……!?」

「本当は、後の反動を考えなきゃいけないんだが……」



 水の壁を書き消しながら、ケインが健也を鋭く睨む。そして今度は、右手に()()()を作り出した。

 その顔に、あえて余裕さを見せながら。



「今回は出し惜しみ無しだ。来いよ勇者」

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