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36 異形なる審判

 ―最初に異変に気づいたのはケイン、次に気づいたのはナヴィだった。


 二人は少女の秘密を知っている。

 その秘密を知ってなお、少女と共にいようとした。

 それゆえ、すぐに気づけた。


 今の少女は、これまで一緒にいた頃の少女ではない。

 全く別の、()()()()()()だということに。



 そして、少女(メリア)は咆哮した。

 自分の居場所になっていた二人の苦しむ姿と、傷つく姿を見て。


 ―怪物(メリア)は嘆いた。

 怒り、憎しみ、憎悪を抱いて―



 少女の側にいた男は勝利を確信した。

 少女が、洗脳から溶けようとしていると思ったから。

 遠くにいた男の親は高らかに笑った。

 繁栄の為の駒(操り人形)が完成したと思ったから。



 そして、そのまま少女は項垂れた。


 男は少女に触れようと手を伸ばす。



 その刹那、男の伸ばした右腕の()()()()()()()()()()()


 男はなにが起きたのか理解できなかった。

 突然自分の腕が消えた。

 その理由を理解することができなかった。


 男は少女を見た。


 男の目の前には、少女(メリア)がいた。

 少女はまだ、項垂れたままだ。

 だが、先程までとは明らかに違う点があった。


 少女の髪の一部とおぼしき何かが、()()姿()()()()()()()()形で蠢いていた。

 それがなんなのか、男にはわからなかった。


 不意に、男の目の前に何かが降ってきた。

 ビチャッ、と音をたててソレは男の足元へ落ちた。

 男はそれを確認しようとしたが、本能がそれを許さない。

 見てしまったら全てを察してしまうと、頭の中では理解していたから。


 ―だが、男は見てしまった。

 足元に転がった、()()()()()

 そして、()()()()()()()()()()


 男は叫び声をあげた。

 そして、その場から逃げようとして―


 ―胴と足は切り離され、胴は下へと落ちていった。



 少女(メリア)は少し苦しみ…そして立ち上がり、再び咆哮する。

 その咆哮は、人が発したとは思えぬ威圧を含み、デュートライゼル全体に響き渡った。

 その咆哮は地を揺らし、空気を震わせ、硝子を割った。


 咆哮が止み、人々が再び少女(メリア)を見たとき、そこにいたのは先程までとは違う存在だった。


 髪が象った蛇は6体に増え、宙をうねり動く。

 鋭さを増した瞳は、見たもの全てを硬直させる。

 肘から先が鱗で覆われ変化した左腕は、全てを切り裂く龍のよう。

 どこからともなく生えた尾は、細く、長く、刺々しい。


 色々な歴史的書物に存在し、しかしどの歴史的書物にも存在しない。



 異形な姿をした怪物(メドゥーサ)が、そこにいた。



 怪物は手始めに、自分の近くにいた者達を、一人残らず引き裂いた。

 血が飛び、下にいた者達へ降り注ぐ。

 それを見た民衆が、ようやく事を理解した。



 ―自分の命が危ない、ということに。



 民衆から絶叫が走る。

 我先にここから―デュートライゼルから逃げようとする。



 だが、それは叶わぬ願いだった。


 いつの間にか、デュートライゼル全域を結界のようなものが包んでいた。

 それは怪物(メドゥーサ)使()()()()()()安息(セーフティ)だった。


 だが、焦りで周りが見えていない民衆はそれに気づかず、我先にと醜く争う。

 そして、逃げ遅れた者―動けない者―何も知らない者へ、怪物は容赦なく襲いかかる。


 建物も、自然も、兵隊も…

 怪物の暴走は、何にも止められず、逆に全てを壊していく。



 しばらくして、ようやく数名が門へ辿り着いた。

 そこでようやく安息(セーフティ)の存在に気づき、絶望する。

 そんな彼らの背後には…


 すでに怪物がいた。

 そしてまた、叫び声が町に響き渡る―








 ―かつて、その村はどこにでもある、普通の村だった。

 その村には、後に世界の危機を救う英雄達がいた。

 彼らは世界の危機に立ち上がり、そして見事に世界を守り抜いた。


 人々は彼らを勇者と呼び、村を発展させ、いつしか町へとなった。

 勇者と呼ばれた者達は、その町を良い物にすべく奮闘した。


 いつしか彼らの名前を取ってデュートライゼルと名付けられた町は、それはとても良い町になっていた。


 だが、いくつもの世代を経て、平穏は終わりを迎えた。

 一族をはめ、自らを町の支配者にしたてあげた愚かな者。

 彼らの犯した罪は数知れず。


 彼らの罪の代償は、あまりにも大きく―









 ―時間にして約一時間が過ぎた頃。


 この日、誰にも知られることなく1つの町は焦土と化し…



 ―そこにあった多くの炎は、ひとつ残らずその火を消した。

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