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348 邂逅

三十五章、開幕です。

「……」

「皆様、お食事の準備が整いましたので、席にお座りください」

「はーい!」

「……」

「マスターはこちらの席へどうぞ」

「……」

「どうぞ、お飲み物でございます」

「ありがとう。……ところでなんだが」

「応答。なんでございましょうか」

「……その格好、どうした?」



 両手を前で重ね、お手本のような体勢で俺の一歩斜め後ろに立つティアに、俺は単純な疑問をぶつけた。

 ティアが仲間に加わって、二日目。すでにナヴィ達とも打ち解けており、空気が悪くなる、なんて事は無かった。そこは、非常にホッとしている。

 ただ、昨日までとは違う点が一つだけあった。

 それは、ティアがメイド服を着ていることだ。

 昨日までは、ボディースーツ?らしきものを着ていたティアだったが、なぜか今朝目が覚めたら、メイドさんになっていたのだ。



「解答。昨日、改めて皆様を観察していた時に、当機は気が付いたのです。皆様には、様々な個性があると」

「は、はぁ……」

「容姿、言葉使い、装い。皆様、各々の個性がございます。ですので、ここは一つ、当機も個性を出そうと思いました」

「……それで、メイド服を?」

「はい。ライアー様に頼みましたら、すぐに拵えていただけました」

「ぶい!」



 笑顔でピースしてくるライアーはとりあえず放っておいて、一つだけ言いたい。

 お前、元々個性盛り過ぎだろ!?と。

 ただでさえ心持つ機巧人形(マギアドール)に一人称当機に独特な口調と個性盛り盛りなのに、なぜそこにメイド要素まで付け加えた?

 いやまぁ、ものすごく似合ってるけどさぁ……

 とりあえず、そんな事を言ったら色々と面倒そうなので、心の内に秘めておくことにした。



「……まぁ、ティアがそれで良いのなら、文句を言う理由も無いな。それに、似合ってるし」

「喜悦。お褒めに預かり光栄です」

「あぁそれと、頼んでいた件なんだが……」

「問題ありません。ユア様のお力添えもあり、順調に進んでおります。ですが、やはりそれなりにお時間は頂戴させていただくかと」

「わかった。何度も言うが、特段焦る必要は無いからな」

「お心遣い、感謝申し上げます」



 本人に疲労という概念は無いだろうし、焦らずとも完璧にこなしてくれるのだろうが、俺は皆と同じように接している。

 元々ティアは、あれやこれやと命令された結果、心が疲弊した過去がある。なので、彼女を機械だと思わず、同じ人間として見ることにした。

 まぁ、下手に特別扱いするよりも、そっちの方が自然体に出来るってのが一番であるが。


 そんなこんなで、休憩を挟みながら、パンドラが指し示す方向へと進み続ける。

 時には川を越え、時には迂回し、時には身を潜めながら。

 そうして進むこと十三日。ついに、その場所へとたどり着いた。



「うむ、ここじゃな」

「……え?本当にここ、ですの……?」

「む?なんじゃ人魚よ。儂を疑っておるのか?」

「いえ、そういう訳ではないのですけれど……」

「まぁ、主の気持ちが分からんでもない。じゃが、間違いなくここにある」



 パンドラが立ち止まった場所は、なんの変哲もない、森の中。

 森の中心という訳でも、近くに何かあるわけでもない、本当にただ森の一端であるこの場所に、アテナが居るというのだ。



「じゃあパンドラ、頼めるか?」

「無論じゃ。任せるがよい」



 そう言うと、パンドラは虚空に向けて手を伸ばす。すると、徐々に空間が捻れていき、天族の里に行った時のような光の道が出現した。

 俺達は、パンドラを先頭にして、光の道を進んでいく。やがて、進んでいった先に、その空間は広がっていた。


 天からの光を浴びて、美しく輝く緑。

 何処からともなく吹いてくる、心地よい風。

 せせらぎのように流れる、透明な川。

 所々に咲き誇る、可愛らしい花達。

 そんな、神聖さすら感じる空間に、一人の女性が佇んでいた。



「誰かが、わたしの空間に干渉してきたとは思っていましたが……お久しぶりですね、パンドラ」

「……あぁ、久しいの。アテナよ」



 エメラルドブロンドの髪をたなびかせ、神聖な装いに身を包んだ女性―アテナは、そう言いながら、優しい笑みを浮かべていた。

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