表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
341/413

335 襲うモノ、阻む者たち ④

「んー……ウチ、歌なんて全く分かんないんだけどさー、前提が違うんじゃないの?」

『……え?』



 ライアーの放った一言に、ウィルとビシャヌは思わず目を丸くする。



「やーさ?ウィーちんのハナシ聞いてる限り、ウィーちんはその、魅惑の歌?ってやつを歌いたいんでしょ?」

「え、えぇ……」

「でもさー、それで歌えたとして、()()()()()()()()()()()()()?」

「……ライアー?何が言いたいんですの……?」

「あぁ、メンゴ。イミフになっちゃったね。要は、形だけの歌で(ココ)に響くもんなの?」

「「……あ」」



 そこでようやく、二人はライアーが何を言いたいのかを察した。

 そして、それは同時に、二人の中にあった共通の問題を、簡単に解決できる答えであった。



「……そうでした。歌とは、ただ歌うものではなく届けるもの……こんな当たり前のことを、どうして忘れてしまっていたんでしょうか……」

「……ビシャヌ」

「えぇ」



 ウィルとビシャヌは頷きあうと、手を取り合い、目を瞑る。


 魅惑の歌というものについて、二人を始め、人魚族の殆どは〝歌えるもの〟という認識でしかない。

 故に、そこに〝歌を届ける〟気持ちを込めることはない。そのため、彼らの歌は、ただ魅了するか、ほんの少しの特殊な効果を発揮するかのどちらかにしかならない。

 それでは、ただ言葉の羅列を読んでいるのと、なんら変わらない。


 だが、本来歌というものは、〝歌い手〟と〝聞き手〟が揃って、初めて成り立つもの。

 歌い手が聞き手に向けて、〝その歌に込められた想いや願い〟を届ける。そして、聞き手は歌い手の〝その歌で伝えたい想いや願い〟がなにかを考え、感じ取る。

 そうすることで、それは初めて〝歌〟として完成するのだ。


 そしてそれは、魅惑の歌も例外ではない。

 歌い手が気持ちを込め、聞き手に届けることができれば、その歌は、本来の力を発揮する。

 あの日ウィルが、ケインだけに想いを伝えたように。



(想いを、伝える)

(願いを、伝える)

((ここに居る、皆に……!))


『―――――――――――――――――』

「「――?」」



 歌声が、戦場に響く。

 じりじりと詰め寄っていた二人は、聞こえてきたその歌声を訝しむ。

 ――何故戦場で歌を?

 一瞬考えはしたものの、すぐに無意味だと判断し、終わらせるべく一気に距離を積めた。

 だが、それを阻むように、再び無数の糸が彼女らの目の前に現れた。

 しかし、彼女らは足を止めようともせず、そのまま糸の網へと突っ込んでいった。彼女らにとって、その糸はなんら脅威にならないことが分かっていたからだ。

 だが



「「――ッ!?」」



 先ほど通り、糸を引きちぎろうとしたが、糸は一向にちぎれる素振りを見せない。

 何故?と彼女らが考えるよりも早く、叫ぶような声が上がる。



「ナヴィ!」

「〝重力(グラビティ)〟!」



 瞬間、彼女らは強い衝撃と共に、地面に叩きつけられた。すぐに起き上がろうとするも、身体は異常に重く、顔を上げることすらままならない。

 それどころか、直前に触れていた糸が巻き込まれ、変に絡まっていた。



「エラー、発生、質量、増加」

「出力、強化、対応し――」

「させると思ってるのかしら?」



 ナヴィが少し冷めたような口調で言うと、彼女らにかかる重力が更に強さを増す。

 そのあまりの強さに、彼女らの身体から、ギチギチと軋むような音が鳴り始めた。

 そんな状態でも、彼女らは起き上がろうとしていた。



「なっ……まだ起き上がるつもり!?」

「ナヴィ!もっと強くできないの!?」

「もうやってるわ!でも……」

「エラー、eラー、エRaー」

「っ!こいつら、本当になんなの!?」



 ナヴィが出力を上げても、彼女らは無理矢理にでも起き上がろうとする。

 その度に軋むような音は強くなり、やがて彼女らの身体が放電を始め、節々から火花が散り始めた。



「……なんじゃ?」

「エrA――Eラa――eAeeaeeEeeeeaeEeae」

「――っ!?いかん!全員、頭を下げるのじゃ!」

「へ!?ベイシア何を――っ!?」



 彼女らの異変にいち早く気がついたベイシアが、素早く自身の糸で大きな布を作り、背後に居る仲間たち全員に被せるように広げ、体制を低くした。

 ユアとアリスも、ベイシアが何を伝えたいのかを瞬時に理解し、すぐさま木々の裏へと回る。


 次の瞬間、彼女らの身体の放電と火花が一気に強まり、その場で爆発が巻き起こった。

 強烈な爆風と熱波が、一瞬を駆ける。だが、ベイシアの産み出した布が、それらを防ぎ、ベイシアたちを守った。


 爆発もおさまり、少し静かになったタイミングで、ベイシアたちも布から出る。



「……なんじゃったのじゃ、彼女らは……」



 ベイシアは、彼女らが居た場所へと視線を向ける。だが、彼女らの姿は何処にも無く、酷く焼け焦げた後だけがそこにあった。

ビシャヌ「さぁさぁ始まりました〝ビシャヌのなんでもラジオ〟!皆さん、元気にしてましたか~?」

ウィル「……前触れもなく始めましたわね……」

ビシャヌ「さて……何を話しましょうかね?」

ウィル「まさかのノープラン!?」

ビシャヌ「えへへ」

ウィル「えへへ、じゃないですわよ!?」

ビシャヌ「でも、お便りも来ていませんし……」

ウィル「……そもそも、送り方を言っていないのでは?」

ビシャヌ「あ、そうでした。お便りは各話の感想の方に〝ビシャヌ宛て〟と明記して送ってください。全てをここで読むわけではありませんが、しっかりと読まさせていただきますよ~」

ウィル「……そもそも送ってきたとして、何処の誰がどうやって送っているんですの……?」


※気にしたら負けですよ


ウィル「って、貴方が一番謎なんですわよ!」

ビシャヌ「気にしたら負けですよ♪」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ