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332 襲うモノ、阻む者たち ①

「目標捕捉。排除を実行します」

「「了解」」

「っ、来るぞ!」



 飛びかかってくる三人に対し、俺達はそれぞれのやり方で、その攻撃を受け止める。



「……あ?」

「っ、これは……!?」



 彼女らの攻撃を受け止めたイルミスとガラルも、俺と同じ違和感を覚えた。だが、今それを詮索しているような余裕はない。

 俺達は、そのまま反撃をするが、三人は揃って後方に飛び、そして、再び仕掛けてきた。



「あぁ!?ナメんじゃねぇッ!……チッ!」

「一手攻めれば引き、また攻める……厄介ですね」



 ガラルが悪態をつき、イルミスが冷静に三人を見る。

 あの三人、おそらく攻めようと思えばもっと攻めれるだろうに、なぜか攻めきろうとはせず、攻めては引いてを繰り返していた。

 普通に考えれば、何かしらの罠を張っていると見れるだろう。だが、例えそうだとしても、こちらも攻めなければ、一方的にやられるだけだ。



「イルミス、ガラル……仕掛けるぞ!」

「はい!」

「おぅ!」



 二人に指示を出し、彼女らがこちらに向かってくると同時に駆け出す。だが、彼女達は動揺の一つすら見せず、こちらの攻撃に合わせるように武器を振るってくる。

 しかし、彼女達が対応してくることは想定内。なので、こちらも一つ、予想外の動きをしてみよう。



「今だっ!」

『――ッ!?』



 俺が叫んだ瞬間、俺達は飛び上がり、()()()()()()()()()()

 さすがの彼女達も、それは想定していなかったのか、表情や態度こそ変化していないものの、明らかな動揺を、ようやく見ることができた。


 空を駆ける。そのカラクリは単純で、空歩を使っただけ。ただし、二人の歩幅を合わせながら。

 自分だけなら、自分の歩幅に合わせればそれで済む話だが、そこに自分とは全く異なる二人を加えたとなれば、その大変さが分かるだろうか。


 兎にも角にも、この瞬間を逃すような俺達ではない。俺達は、彼女らのほぼ真上から、一気に攻撃を叩き込んだ。

 ……が、



『――いッ!?』

「……っ!?」



 拳を叩き込んだ二人、天華を振り下ろした俺は、それぞれに伝わってくる感触に、驚きと困惑に近い声をあげる。

 とはいえ、折角撃ち込んだ一撃を無駄にするようなことはしない。

 俺達はそのまま押しきり、彼女らを強く後退させることには成功した。



「ぃっ、つぁぁ……なんだぁアイツら?人間がしていい固さじゃねぇぞ?」

「え、えぇ……まるで地面……いえ、鉱石を殴っているのかと思いました……」

「……俺なんて、一応致命傷を避けたとはいえ、天華を振るったんだぞ?それなのに、傷を負うどころか、血の一滴すら流してない。なんなんだ?コイツらは……」



 少し離れた場所で、何事も無かったかのように立ち上がる三人を見て、俺達は冷や汗をかく。

 特に俺は、大きな違和感を覚えていた。

 いつぞやの決闘みたく、殺傷不可の結界があるわけではない。彼女ら自身が、スキルで受けきったという可能性は、俺の魔力眼がそれを否定する。

 つまり彼女らは、その身一つで、イルミスとガラルの拳だけでなく、俺の天華をも受けきったというのだ。

 そんなこと、普通じゃあり得ない。というか、あって良い話ではない。

 魔力を込めず、致命傷をも避けたとはいえ、天華の切れ味は俺が一番良く知っている。だからこそ、改めて思い知らされる。


 あの三人、普通じゃない。



誤算(エラー)。対象の危険度を更新」

「再考。対一は非効率と判断。対三を提案します」

「思考中……思考中……思考完了。提案を受諾。これより、対三による排除行動へと移行。目標(ターゲット)設定を、各個から共通へ変更」

「「了解」」



 三人はなにかを呟くと同時、再びこちらに向かってくる。

 ただし、()()()()()()()()()



「あぁ……!?――ッ、チィッ!?」

「ガラルさん!?――なっ!?」

「っ、どうなってやがんだアイツらは!?」

「分からない!だが気を付けろ!常にカバーし合える状態を維持し続けるんだ!」



 ガラルを狙ったかと思えば、次はイルミス、そして俺へと、狙いを切り替えながら、彼女らが攻めてくる。

 先程までは、一対一での攻撃だったのに対し、突如として()()()での攻撃に切り替えてきた。

 確かに、連携を重視しがちな俺達に対し、各個撃破を狙うその行為自体は有効だろう。だが、それを思考し、実行に移すまで、あまりにも統率が取れすぎている。

 まるで、言葉や思考以上のなにかで、繋がっているような。



「ヤベッ――」

「っ、〝竜の息吹(ドラゴニュート)〟!」



 偶然、足場の悪い場所に着地してしまったガラルが、ほんの少し体勢を崩す。その瞬間を、まるで見透かしたかのように三人が同時に狙い、仕掛けてくる。

 だが、すかさずイルミスが竜の息吹(ドラゴニュート)でカバーに入る。三人はそれに気が付くと、空中で互いの足を蹴り、三方向に散った。

 その間に、こちらは三人で集まることができたが、それでもまだ、状況は変化していなかった。



「おいどうするご主人サマ?このままじゃ拉致が空かねぇぞ?」

「ですね……せめて、あの連携さえ崩せればいいのですが……」

「――なら、やることは一つ、相手の数を減らすしかない」

「ですが、どうやって……」

「簡単だ。相手が一対三で来るのなら、こちらも三対一で挑めばいい」

「……あぁ?オレらもアイツらみたく、一人を狙うってか?」

「そうだ」

「ですが、そう簡単には――」

「っ、来るぞ!」



 三方から、三人の攻撃が迫り、俺達は再び散り散りになる。

 俺は、そんな彼女らの攻撃を見ながら、必死になって考えた。どこかに、付け入る隙が無いかと。

 それを見つけなければ、こちらに勝機は無い。

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