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327 ケイン・アズワードという存在 ②

「ケイン、君はもう、人間じゃない」

「……そう、か」

「……意外と、驚かないんだね」

「いや、驚いてるさ……でも、それ以上に、腑に落ちた感じが強くてな……」



 ナーゼから告げられた言葉は単純で、それでいて残酷なものだった。


 自分が、人間では無くなっている。


 だがそれを聞いた時、自然と受け入れられた自分がいた。理由は分からない。ただ、納得できてしまっていた。

 とはいえ、それを聞いたのは俺だけではない。

 現に、パンドラを除いたナヴィたちの顔は、困惑に染まっていたのだから。



「ま、待ってくださいまし!ケ、ケインが、人間ではない……それってどういう――」

「ウィルよ、その気持ちは痛いほど分かるが、一先ずは落ち着くがいい。いちいち話の腰を折っていては、話にならぬぞ?」

「うっ……そ、そうですわね……ごめんなさい、続けてくださいまし」



 困惑のあまり、ウィルが詰め寄ろうとしていたが、リザイアに止められる。リザイアも、他の皆も、ウィルと同じ気持ちなのだ。

 一人早まったウィルも、気持ちを抑え、踏み出しかけた足を一歩引き、ナーゼに続けるよう促した。

 ナーゼも、ウィルたちの気持ちを察したのか、複雑そうな顔を向けると、一度目を閉じ、改めて正面で向き合うように、俺の方を見た。



「ケイン君の、今の状態……その説明をするために、先にボクが持っているスキル解析(アナライズ)について、少しだけ触れるね。

 知っての通り、解析(アナライズ)は情報を見るスキル。草や木の種類だったり、人の名前や種族、状態、果てはその人が持つスキルまで。レベル次第ではあるけれど、万物を見通すことができるスキル、それが解析(アナライズ)だよ」



 改めて聞いたが、やはり末恐ろしいスキルだ。

 戦闘において、直接的な関与をする訳ではない。

 だが、ほぼ一方的に相手の情報を抜き取れる、相手の手の内を簡単に知ることができるという点で見れば、これほどまでに恐ろしいと感じるスキルはあるだろうか。

 ナーゼは薬師という性分上、必要以上に他人の情報を見たがらないが、もし他の人物であれば、そんな容赦はしてこないだろう。

 これまでに出会った中で、解析(アナライズ)を持っているのがナーゼだけで助かった、というべきなのだろうか。



解析(アナライズ)で得た情報は……えっと、なんて言えば良いのかな……一枚のボード?みたいな感じで見えるんだ。ただ……」

「ただ?」

「ただ、その……解析(アナライズ)で得た情報は、他の人に見せられないから、上手く表現できないんだけど……ケイン君の情報を得ようとした時、上手く得られなかった……いや、殆ど()()()()()()んだ」


 ナーゼが困った顔で、そう告げてくる。

 俺は解析(アナライズ)を持っていないから、その辺りはあまり詳しくない。だが、ナーゼの表現と、迷っているような言葉からして、相当な異常が起きているのだろう。



「殆どの情報が混ざっていたり、見たことのない文字らしいものに変わってたり、欠けていたり……ハッキリと見れたのは、ケイン君の名前と、君が持っているスキルだけ……それ以外は、何も分からなかったんだ」

「……そうか」

「でも、その見えたスキルが問題なんだ。ボクはそれを見て、君の身体を少しだけ調べさせて貰ったんだ。その結果、君は人間では無い、別のナニかに変化している、そう結論付けるしか無くなってしまったんだ」

「俺の、スキル……?」



 俺は、ナーゼの言葉に疑問を抱いた。

 自分が持っているスキルは、よく知っている。だからこそ、俺のスキルを見ただけで問題を感じた、というナーゼの言葉が引っかかったのだ。



「ケイン君が持つスキルは、ボクたちもある程度は把握している。でも、今君は自覚していないようだけど、二つ……いや、総合的に見れば一つかな?スキルが増えているんだ」

「……つまり、その二つのスキルが、問題ってことだな」

「そうなるね。あぁいや、心配しなくてもいいよ。身体に直接害を成すとか、そういうものじゃあ無いから……」



 ナーゼはそう言ってくれたが、僅かに生まれた心配は拭いきれない。

 俺の中に、知らないスキルがある。俺の身体の変化に、俺の知らないスキルが関係している。

 不安を抱かない方が、無理があるというものだ。


 ……だが、こんな程度で尻すぼみしていてはいけない。俺は知らなければならないのだ。他でもない、俺自身のことを。



「……教えてくれ。ナーゼ」

「うん、分かった」

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