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冒険者のパーティーにモンスターが居るのはおかしいですか?  作者: 華心夢幻
三十三章 運命の分岐点(ターニングポイント)
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295 龍王集結

「ヴェルドラッヘ、ってまさか……!?」



 イルミスの呟きに、思わず声を漏らす。

 かつて、イビルが暴走させた天族との戦いで、人間達の味方をした七体のドラゴン。

 やがて龍王と呼ばれる彼らの一体こそ、俺達の仲間であるイルミス改め、〝聖龍〟イルミスガルド。

 そして、ヴェルドラッヘという名は――龍王が一体、邪龍が持つ名だ。



『おいおいアイツ、人間の真似事なんてしてやがるぜ!』

『ふむ、理解しがたいですね。龍王としての威厳を感じられない』

『本当です。そんな弱者に成り下がるような真似、わたしはしたくありませんね』



 イルミスの容姿について語りながら、邪龍の後ろに控えていた三体の龍が高度を下げる。そのどれもが、邪龍と同じ威圧感を放っている。

 龍王特有の威圧感、そして体の色から察するに緋龍に蒼龍、天龍……龍王の三体だろう。

 四体の龍王が今、俺達の頭上にいる。それはまさしく、この世の地獄と言っても差し支えないだろう。

 ただ、その四体にとって、俺達はどうでもよい存在なのか、イルミスだけしか見ていないらしい。



「……それで、なんの用ですか?」

『決まっているだろう。今こそ、俺たちが再び世界の王として君臨する時だ!貴様も知っているだろう?人間は俺たちへの敬意を忘れ、今や我が物顔でこの世界を侵食してやがる。そう、俺たちが救ってやったこの世界をな!だから分からせてやるんだよ、俺たちの手で!聖龍、貴様も来い!』

「っ、イルミスはそんなこと望んでな――」

『口を挟むんじゃねぇ虫けら!』

「……虫けら?」

「――ッ!?」



 イルミスの思いとは間反対の、人類支配を語る邪龍に対し、俺は否定をするが、咆哮によってかき消されてしまう。

 ……ところで今、とてつもなくおぞましい殺気を感じたんだが……気のせい、だよな?



『聖龍、貴様も暴れたいだろう?あの時、最も多くの天使を殺した貴様にとって、これは最高の話だろう?さぁ、そんな虫けらどもなんぞさっさと殺して俺たちと』

「お断りします」

『共に――は?』



 邪龍の誘いを、ばっさりと切り捨てたイルミス。

 それが信じられなかったのか、邪龍はそれまで上機嫌に語っていた口を、ぽかんと開けたまま言葉を詰まらせた。

 他の三体も、似たような感じだろう。



『……貴様、今なんと言った?』

「お断りします、と言いました。それが?」

『何故だ!?俺は見た!あの日、貴様が天使を殺している時の、あの恍惚とした顔を!なのに何故!』

「……一つ、勘違いしているようですね」

『何?』

「わたしが戦ったのは、わたしが愛する人間たちを守るため。……確かに、わたしは多くの天使を殺してしまったのでしょう。抑えられないほどに強い闘争心で、喜んでしまっていたのでしょう」

『なら――』

「ですが!わたしは愛した人間を守るために戦っていました!支配も王位も、わたしは何一つ望んでなんかいませ――」

『っざけるなァァァァァッ!!』

「「――っ!?」」



 イルミスが言い切るより先に、邪龍が怒りに満ちた声を荒らげる。自分達が見ていたイルミスが間違いだったという事実を、否定するかのように。



『聖龍!貴様がそんな腑抜けたようなことを言うハズがない!あの時の姿こそが、貴様の本当の姿だ!それを偽物と愚弄するのか!』

『落ち着いてください。どうやら彼女はそこにいる人間に絆されている模様。ならば、その人間さえ葬ってしまえばよいだけのこ――ッ!?』



 荒れる邪龍の側に居た蒼龍が、イルミスが変わったのは俺のせいだと言い出した。その刹那、蒼龍の頭上から無数の光が降ってきた。

 蒼龍はすぐさまそれに気が付き、すぐさま回避に動いた。しかし、全ては回避しきれず、その一部を翼に受けてしまった。

 片翼に穴が空き、上手く飛べなくなった蒼龍は、そのまま地面に落下するように叩きつけられた。



『かはっ……!?』

「あら失敬、いい加減目障りだったので殺すつもりでしたのに……外してしまいました。ですが、蜥蜴にはお似合いの姿ですよ。うふふっ」

『っ!?貴様ァ!?』



 落下し、地面に降りた蒼龍に対し、光を放った犯人―イビルが、不気味な笑みを向け、挑発する。

 それを受けた蒼龍は、それまでの冷静さが嘘に思えるほどに激情した。

 邪龍や緋龍も密かに憤怒する状況の中、天龍は一体、冷静にイビルのことを見つめ、そして驚愕した。



『っ、まさか、天使……!?』

『天使だと!?馬鹿な、奴らは全員殺したハズだ!生きてる訳がねぇ!』

「あら、蜥蜴の分際で、理性を失い狂っただけの塵を殺しただけなのに、随分と大きな顔を立てるんですねぇ?」

「イ、イビル……?」

『貴様……先程から言わせておけば、俺たちを蜥蜴だと……?俺たちに束になっても勝てなかった負け犬種族の癖に、いい気になってんじゃねぇ!』

「嗚呼、不愉快。わたしがあの塵どもと一緒の扱いだなんて不愉快です。まぁでも、今そんなことは―どうでもいいんですよ」

『――ッ!?』



 イビルから、悪意に満ちた魔力が溢れ出る。

 その魔力は、邪龍達ですら息を飲んでしまうほどに凶悪で、おぞましいものだった。

 そんな魔力を放ちながら、イビルは一人、口が割けて見えるような、邪悪な笑みを浮かべていた。



「たかだか翼の生えた図体の大きいだけの蜥蜴の分際で、高貴なる我が君を虫けら呼ばわりするとは、なんと愚かな……貴方たちには、死を以て理解してもらうとしましょう。罪を悔やみ、逝ってもらうとしましょう。我が君の贄となる喜びを、全うしてもらうとしましょう。嗚呼……全ては、我が君のために、この場で全員、殺してしまうとしましょう!」

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