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29 ナヴィと影の槍 その3

今回はナヴィ視点です。

「それでは、始めてくれ」



影の槍(シャドウランス)チャレンジ」ねぇ…

 このスキルロールに魔力を流し、それを10分間維持し続けられれば、影の槍(シャドウランス)を継承できる挑戦。

 ただ、かなーり危険が伴う挑戦らしいし…

 ケインも、相談も無しに決めないでよ…

 だけど、ここまで来て引き下がる訳にもいかない。

 それに、勝手に決めたとはいえ、ケインが私に期待をしてくれている。

 それなら、余計に頑張らないとね!


 大きく深呼吸をし、手にしたスキルロールに魔力を流し込む。

 流し込んだ直後、スキルロールから瘴気が溢れだし、瘴気に触れた私は魔力の乱れを感じた。

 でも、スキルロールと私の間を流れている魔力の流れが乱れた感触はない。


 ―成る程、この瘴気が原因ね。


 この瘴気、触れているだけで魔力が乱れているように錯覚させる効果があるらしい。

 この瘴気にあてられ、魔力が乱れたと錯覚して制御を誤れば、即暴走。

 それに、仮に乱さなくても、10分という長い間耐え続けつつ魔力を流さなければ、この瘴気に飲まれて、これまた即暴走。

 とんでもない挑戦ね…


 それでも、やるしかない…!

 ケインが、メリアが見てる前で、カッコ悪い所を見せるわけにはいかない!



 私は責任から逃げて、あの城へ閉じ籠った。

 そこに来たあの二人。

 メドゥーサである事を隠すメリア。

 そのことに気づいていながら、一切の他言をせず、傍にいてあげているケイン。

 私は血を貰ったから気がついたけど、それよりも前、出会った時からずっと気になっていた。

 最初は何故?と思っていたけど、少し分かった気がする。


 ―楽しいんだ、一緒に居ると。


 二人についていくと無理矢理決めたのに、文句を言うどころか歓迎してくれたケイン。

 私と一緒にツィーブルを回ってくれたメリア。

 私達が、最大限に力を発揮できる戦略を組み立ててくれたケイン。

 私の作った食を、「美味しい」と何度も言ってくれるメリア。


 きっとこんな未来が来るんだって、本能で感じ取ったんだと思う。

 そんな二人にいい格好、見せなくちゃ!







 体感にして、5分が経過した頃だろうか。

 まだ私は瘴気に飲まれてはいない。

 だけども、体はそうではなさそうだ。

 長いこと瘴気にあてられ、感覚が次第に麻痺し始めている。

 このままでは、10分持つか怪しい。

 一体、どうすれば…



影の槍(シャドウランス)は闇属性のスキルだし、適正があるのかもしれん』



 …え?

 なんだろう…どうして、聞き覚えのない言葉が…


 …いや、聞いた。

 ケインが、店主と話していた時の店主の言葉だ。

 でもなんで?どうしてこの言葉が浮かんだ?

 その言葉に、何かヒントが?

 影の槍(シャドウランス)…闇属性…


 ()()()



 ―そうか、だから私なんだ。



 ようやく、私を選んだ理由が分かった。

 これは、新しい力が欲しいわけじゃない。

 無論手にはいれば嬉しいけれど、()()()()はそうじゃない。


 これは、私が(ダーク)を使いこなすための練習なんだ。

 (ダーク)と同じ闇属性の影の槍(シャドウランス)

 用途は違えど、使う感覚は似ている。


 それに、一つ理解した事がある。

 闇を産み出すスキル〝(ダーク)〟。

 攻撃に特化している訳でもなく、守りに特化している訳でもない、ただ闇を産み出すだけのスキルだと思ってた。


 でも、違ったんだ。


 (ダーク)は攻撃スキルでも、防御スキルでも無い。

 支配だ。()()()()()()()()()()()()()()()スキルなんだ。

 ただ支配するのではない。スキルの本質を生かした上で、その上から被せるように使うんだ。


 ならばどうするか。

 私は、一言ずつ会話を頭の中で復唱していく。

 魔術回路、暴走、計測。

 魔力の流れを維持しつつ、ひたすら交わした会話を復唱し、そして気付いた。


 ―見つけた。この試練の穴…!


 その事に気付いた私は、()()()()()()()()()



「〝(ダーク)〟」



 (ダーク)は闇を産み出し、静かにスキルロールを包み込む。

 それはまるで、底無し沼のように。


 ふと、体にまとわりついていた感覚が収まっていた。

 気付けば瘴気は消え失せ、スキルロールは()()()()()()()()()()()()()()()()と化していた。

 恐る恐る横を見ると、嬉しそうな二人と、満足げな店主の顔が映った。



「参ったね。まさか、ソイツを支配してしまうとは…認めざるを得ないね。合格だよ」



 その言葉の意味が、最初は分からなかった。

 動揺で、頭が回らなかった。


 でも、すぐにその言葉の意味が分かった。

 喜びと、驚きと、色んな感情が混ざりあいながら、私は二人の元へ駆けた。



 やっぱりそうだ。


 この二人のいる場所が、私がいたいと願う場所なんだ。

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