279 水の中の探し人 その1
時を遡ること数十分。
青い扉に入ったナヴィ、レイラ、ウィル、イブ、ビシャヌの五人は、鍾乳洞のような場所に飛ばされ、そこで青い髪と瞳を持った、レースのワンピースを纏った水の精霊ウィンディーネと出会った。
そして、告げられた試練の内容は
「……かくれんぼ、ですの?」
「えぇ。ワタシはすでに、この湖のどこかに隠れているわ。貴方たちは、ワタシをどんな方法でもいいから見つけるだけ。簡単でしょ?」
「すでにって、ウィンディーネさま、そこにいるのに?」
「ふふっ、これは蜃気楼で作った幻影よ。わざわざ隠れる様子を見せるわけにはいかないじゃない」
「見つける、というのは具体的に、貴方の姿を視認出来ればいいのかしら?」
「えぇ、それで間違いないわ。でも、そう簡単には姿を現さないから、頑張りなさい?それじゃあ、始めるわよ」
そう言い残し、ウィンディーネの幻影が消える。
それを視認したウィルとビシャヌは、すぐに湖に潜る。水の中は、彼女たちにとっては我が家当然。
ウィルとビシャヌは、手分けして湖の中を探し回った。しかし、どこにもウィンディーネの姿は見つからず、数十分と経ってしまったのだ。
「……ウィル、あまり感情的になってはいけません。それこそ、相手の思うツボです」
「……分かってます、分かってますわ」
叫んだことで冷静になったウィル。その様子に、ビシャヌはホッとした。
ビシャヌとて、ウィルと同じく、見つからないことに焦りを感じていない訳ではない。
だが、ウィンディーネが試練と称し、どんな手段を用いても構わないと言った以上、闇雲に探したところで無駄であると気がついていた。
だからこそ、普通じゃない一手を打たなければいけないと確信していた。
「とりあえず、一度戻りましょう。長いこと戻っていませんし、心配していると思いますし」
「……そうですわね」
二人は、捜索を一度諦め、ナヴィたちの元へと向かう。その様子を静かに、そして密かに見ている者がいた。
(成る程。一度仕切り直し、というわけですね。さて、どのような手を見せてくれるのか、楽しみですね)
ウィンディーネは一人ほくそ笑む。
その姿は、水と同化し、消えていた。
*
「……これだけ探して見つからないってことは、ただ隠れている訳ではないことは確定するわね」
「はい。小さな見落としはあると思いますが、ここまで見つからないとなると……」
「それじゃあどうするの?幽霊の私はともかく、二人は水の中に長く居られないでしょ?」
「問題はそれよね……水の中に隠れられたら、私とイブは手を出せない訳だし……」
全員が頭を悩ませる。
そんな中、イブがなにかを閃いたような素振りを見せた。
「どうかした?」
「ウィンディーネさまに、出てきてもらうのは?」
「「「「……はい?」」」」
「ウィンディーネさまから出てくれば、みつかるとおもう!」
「いやまぁそうかも知れませんけど、そんなこと無理に決まって」
「……いや、アリかも知れないわ」
イブの唐突な発言に呆れるウィルだったが、ナヴィは逆に、イブの発言で閃いた。
そして、ナヴィの作戦が告げられる。
「……それ、本当に上手くいきますの?」
「わからない。でも、やる価値はあると思うわ」
「そうですね……なにもしないよりはいいかもしれません」
「決まりね。それじゃあ、頼むわよ」
「……分かりましたわ」




