278 砂嵐を突き破れ その2
昨日更新する予定だった……だったんだ……
「なに?逃げるのかしら?」
「逃げてない、よ。ただ、閉じ籠もってるだけ」
「それを、逃げてるって言うのよ!」
アリスが、砂の壁に向かって攻撃を仕掛ける。
「――っ!?」
「アリス!?このっ!」
しかし、槍が砂壁を貫こうとした瞬間、砂壁の一部が爆発し、アリスを弾き飛ばした。
ケインは驚きつつも、すぐさま爆発した箇所めがけて波斬を放った。
アリスもなんとか受け身を取り、爆発した箇所を睨む。が、そこには爆発の穴も、切られたような痕も無かった。
「……なるほど、あの壁に触れようとすると、爆発を起こすみたいだな」
「……本気で閉じ籠もるつもりなのかしら?」
「さぁな。それと、爆発に使う砂は周りから調達しているらしい」
「……アレ?これ、もしかしなくても鬼ヤバ?」
「かも知れないな!」
ケインは、再び波斬を放つ。しかし、砂壁に触れるより早く爆発が起こり、波斬をかき消した。
アリスも飛槍で追撃するが、やはり爆発によってかき消された。
「なにこれ……無理ゲーじゃん!」
「あんのガキ……絶対にクリアさせる気無いわね……!」
「落ち着けアリス。……まぁ、気持ちは分からなくもないが……」
どれだけ攻撃しようとしても、攻撃が届く前に反撃を食らう。おまけに、辺り一面砂だらけであるため、四方八方、どこからでも砂壁を維持するための砂を調達できる。
ライアーの言うとおり、無理難題にも程があった。
「ケイン、どうする?このままだとジリ貧でしかないわ」
「そうだな……せめて、あの壁さえどうにかできれば……って、ルシア?」
「うー……」
「ルーちん!?ちょっ、そっちは危ないって!」
ケインがそう呟いた時、突然ルシアが砂壁に向かって駆け出した。ライアーが声をかけるも、ルシアは気にせず近づいていく。
そして、砂壁に向けて手を伸ばした。
『ルシア!』
壁は、ルシアの手を攻撃と判断。ルシアが触れるより早く、爆発を起こした。
三人が叫ぶが、間に合わない。ルシアは抵抗する暇もなく、爆発に巻き込まれ――
「はぐっ」
『……へっ?』
――体の一部をスライムに戻し、そのまま壁ごと食べた。
ケイン達は勿論、中に籠っていたノームも、思わずすっとんきょうな声をあげる。
数秒とはいえ、お互いの思考が停止した時間が続く。だが、同時にハッと我に帰ると、二人は即座に動き始めた。
「ルシア!そのまま食べ続けろ!」
「あい!」
「あわ、あわわわわっ」
ノームが慌てて壁に空いた穴を塞ぐも、ルシアが即座に食ってかかる。そうして空いた穴を埋めようとするノームだったが、今度は絶え間なくルシアが食べてくる。
そして、修復が間に合わないほどの穴が空いた瞬間、ケインとアリスがその穴の前に現れた。
「くっ……!」
「「遅い!」」
ノームはなんとか穴を塞ごうとするが、それよりも早く、火炎波斬と飛槍がノームを襲う。
このままでは間に合わないと悟ったノームは、壁の修復を諦め、別の壁を作り出そうとする。
が、
「『動くな』!」
「――っ!?」
咄嗟にライアーがノームの動きを止める。
そして、動けなくなったノームに、二人の攻撃が命中し、ノームを吹き飛ばした。
その瞬間、それまでノームを守っていた砂壁が崩れ、ただの砂となった。
「……」
「えっと、合格……で良いんだよな?」
「……うん、合格。合格……なんだけどさ……」
「……あぁ」
「スライム、ズルい……」
「……すまん」
「う?」
かくして、ケイン達は合格した。
残す試練は、あと二つ。
*
「ウィル、気持ちは分かりますが、少し落ち着いてください。ね?」
「うぅ……!あぁもう!絶対に見つけてやりますわよ!ウィンディーネェェェ!」




