274 旋風を捕らえろ その1
大変お待たせしました。
前回の投稿後、現実の方でトラブルが多発してしまい、書く時間をあまり取れずに一週間近く更新できずにいました。
ひとまず落ち着きを取り戻したので、今日からまた再開していきます。
「くっ……!」
「このっ!」
「あはは!すごいすごい!」
ベイシアが放った蜘蛛の巣、その隙間からナーゼの矢がシルフを狙うが、シルフは蜘蛛の巣も矢も軽々と躱す。
勿論、二人は手など抜いていないのだが、シルフを前にして、中々実力を出しきれずにいた。
そしてそれは、ユアとリザイアも同じだった。
「〝暴風〟」
「充填10!」
「ほいっ」
「「なっ……!?」」
二人の同時攻撃が迫る中、シルフは風を膜を纏うように展開。二人の攻撃が風膜とぶつかると、そのままユアの暴風とリザイアの電撃を飲み込み、霧散させた。
「んー、悪くは無いんだけどね~わたしが強すぎるかな?」
「くっ……!」
「ほいっと。エルフちゃんも、その程度の風じゃあダメダメだ~よっと!」
『……っ!?』
シルフが指を鳴らすと同時に、風膜が弾け、突風となってユア達を襲った。四人はとっさに防御をするが、防ぎきれずに吹き飛ばされてしまう。
「いっつぅ……」
「どんなに強い風でも、竜巻が相手じゃあ勝てないでしょ?これは、言うなら小さな竜巻。エルフちゃんの暴風程度なら、簡単に取り込んじゃうんだから」
「竜巻、じゃと……!?」
「お?蜘蛛ちゃん、いい反応だね!さぁ、君たちはどうするのかな?頑張っちゃう?それとも、諦めちゃう?」
「ぬかせっ!」
シルフの挑発に乗ったリザイアが、連続で雷弾を放つが、シルフは軽々と躱す。その顔には、相変わらず無邪気な笑顔が浮かんでいた。
見ているだけの人がいれば、シルフが小さいから捕まえられていないと思うだろう。
だが、実際に対面している四人からすれば、そこに居るのは、圧倒的な力で追い詰めてくる、とてつもない壁の先にいる存在そのものだった。
だが、それで諦めるような者は一人として居なかった。
「ボクだって……諦めない!」
「当然、妾もじゃ!」
ナーゼとベイシアが、再び同時に仕掛ける。そこにリザイアの雷弾が合わさり、常人には回避不可能な攻撃が生まれる。
だが、相手にしているのは常人ではない。
シルフは再び風膜を産み出し、それら全てを巻き込んだ。
「うんうん、いいねいいね!そうこなくっちゃ!それじゃあ――」
「……〝暴風〟」
「……おりょ?」
シルフが攻撃に転じようとしたその時、ユアの暴風が風膜とぶつかり、巻き込まれた。
「エルフちゃん、わたしの話聞いてた?その程度の風じゃあ――」
「暴風……暴風、暴風」
「お、おいユア!お主、一体どうしたのじゃ!?」
「暴風暴風暴風暴風……」
「あれれ……?エルフちゃん、もしかしてやけになっちゃったのかな?」
突然、壊れた道具のように暴風を繰り出し続けるユアに、困惑を隠せない三人。
シルフも、ユアの行動に疑問を抱きつつも、冷静に風膜で暴風を巻き込んでいく。
「暴風暴風暴風暴風……」
「おい!本当にどうしたのだ!敵に塩を送っているだけではないか!?」
「まだ……もっと……もっと……!」
「……あーあ、ちょっとは見込みあると思ったんだけどなっ!」
『――っ!?』
ユアに落胆したシルフが、風膜を攻撃に転じる。ユアが放った暴風を全て巻き込んだそれは、四人を意図も容易く吹き飛ばし、地面に叩き付けた。
「くっ……なんという威力……!」
「一体、どうすれば……?」
「ユア、お主、先程は一体何をしていたのじゃ?」
「……」
「ユア、聞いておるのか?」
「はい……なんとか、間に合いました」
「……ユア君?」
「皆様、一度だけ、私に力を貸してください」
「……何か策があるのか?」
「はい。ですが、チャンスは一回きり。次はありません」




