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264 異変発生

更新が遅れた理由ですが……簡単に言うと、二回ほど全文書き直しをしていました

どうしても納得のいく形にできなかったので、二度の書き直しをしていたら、いつの間にか時間が経っていました……

 リザイアが語るそれは、決して軽いものではなかった。

 瞳が消滅した右目は、今尚おぞましい状態で存在している。リザイアにとって、これがどれだけ苦痛であったことか……



「……メフィロアンナは、我の目を直そうと手を尽くしてくれた。だが、どれも駄目だった。失ったものを再生することなど、できるハズがないのだからな」

「リザイア、お前……」

「あぁ、案ずるなケインよ。我は別に困ってなどおらぬ。片目を失った程度で済んだのだ。生きているだけでも十分なのだからな」



 リザイアはそう言うが、本当にそう思ってはいないだろう。

 その目は、夢魔であろうと人間であろうと、到底受け入れられるものではない。決して報われることのないそれを、リザイアは一生背負っていかなければならないのだ。



「とはいえ、片目では色々と不敏なのだ。慣れるまでは、距離感や視点のズレに手こずってしまうほどにな。そんな我に、メフィロアンナがコレを授けてくれた」

「……ヴァルドレイク(それ)を?」

「そうだ。なんでも、こいつは歴史的人工物(アーティファクト)と呼ばれている代物らしい。まぁ、色々と改造されているので、すでに原型からは離れているがな」



 手にしたヴァルドレイクを、軽く手回しするリザイア。話す間もリザイアは笑顔を見せていたが、どこか張り付けたような感じがしてならない。

 だが、リザイア自身もわかっていたらしく、無理矢理張り付けていた笑顔を止めた。



「……気持ち悪いだろう?」



 リザイアがどこか悲しそうな、諦めたような顔で聞いてくる。右目を見られたことで、嫌われたとでも思っているのだろう。

 ……あぁもう、どうしてこいつは……



「はぁ……リザイア、俺は――」


 ドカァァァァンッ!


「「――ッ!?」」



 俺がリザイアに声をかけようとしたその時、背後から爆発音が聞こえた。

 慌てて振り替えると、ディヲルエーラの方角から煙が立っていた。それに加え、悲鳴のようなものも聞こえてくる。



「な、なにが……」

「……っ、リザイア!」

「なっ――!?」



 動揺するリザイアの肩を掴み、無理矢理こちらに意識を向けさせる。

 俺もメリア達の様子が気になるが、リザイアに伝えなければいけないことがあった。

 後回しになんてできない、今でなければいけないことだ。



「リザイア!お前は俺の仲間であり家族だ!俺は仲間のことを見捨てないし、家族のことを嫌ったりしない!どんな過去があろうと、絶対に!」

「……っ、あ、待っ――」



 俺は、なにかを言いかけたリザイアに背を向けると、駆け足でディヲルエーラへと向かう。

 だが、すぐにあり得ない光景が、俺の目に飛び込んできた。



「なっ、これは……!?」



 視界に映ったのは、ディヲルエーラの結界を、内部から打ち破ろうとするモンスターの影。それも、一体や二体どころの話ではない。何十といった数が、一ヵ所に群がっているのだ。

 そして、モンスターが群がっているその場所に、少しずつヒビが入ってきていた。


 ―改めて、夢魔族について少しだけ話そう。

 夢魔族は本来夜型であり、昼間に目が覚めていることはない。ではなぜ、このディヲルエーラに住む夢魔族は昼間に起きているのか?

 それは、ディヲルエーラの町を包んでいる黒い結界が原因である。

 この結界は、強い光は通しにくく、逆に弱い光は通しやすい性質を持たされている。故に、太陽の光はほぼ入らず、月明かりはよく通す。その効力は、先程直に見ているから分かる。

 そして、日が入らないということは、ディヲルエーラは常に夜に近い状態になっている、ということだ。

 そう、ディヲルエーラに住む夢魔達は、日中の境目を()()()()()生活していることになるのだ。

 しかし、誤魔化しているのは時間感覚だけであり、日光自体を克服した訳では無い。

 リザイアも言っていたが、日光を浴びて平然としている夢魔族は数少ない。

 もし、日の光に慣れていない夢魔族が、日光に晒されたとしたら……



「はあっ!」



 ディヲルエーラに入った俺は、即座に結界付近で屯していたモンスターを一掃する。が、それでもまだ一ヵ所。モンスターはまだまだ存在している。

 ……そもそもの話だが、なぜ町中にモンスターが現れているのだろうか。俺がリザイアを追って戻ってくるまでの時間は、決して長いものではない。

 だと言うのに、モンスターが大量発生しているのには、なにか原因があるハズだ。



「……ユア!」

「お呼びでしょうか、主様(マスター)



 俺が呼ぶと、ユアは即座に俺の側に来る。恐らくだが、ユアはすでに原因となるものを掴んでいると感じた。

 俺はモンスターを倒しながら、同じくモンスターを倒しているユアに問いを投げかけた。



「ユア、状況を説明してくれ」

「はい、主様(マスター)がリザイア様を追うため出ていった後、メフィロアンナ様よりリザイア様の過去についての話を聞かせて貰っていました。ですが、話終えた直後に、突如として町中にモンスターが大量出現。現在、不抜の旅人全員で避難誘導とモンスターの殲滅を図っているところです」

「原因は?」

「恐らく、これかと」



 ユアが、手にしたなにかを差し出してくる。それを覗くと、そこには一ヵ所だけ杭のように細長くなっている、魔導具らしきものが握られていた。

 停止させるために破壊した際に出たのか、埋め込まれていたであろう魔石の破片もある。



「これは……簡易召喚具か!?」

「はい」



 簡易召喚具は、文字通り簡易的にモンスターを召喚するための魔導具。

 呼び出せるモンスターは精々ゴブリンくらいなものだが、何体でも呼び出せるうえ、魔石の魔力が続く限り召喚し続けることができる魔導具なのだ。

 しかし、モンスターを呼び出せる魔導具ということもあり、簡易召喚具は全て冒険者ギルドが厳重に管理している。

 逆を言えば、管理されていない簡易召喚具は、全て違法な手段を用いた魔導具、と言うことだ。



「どうやら、この召喚具が町中にばら蒔かれているようです。把握している限りでは、すでに十を越える数の破壊を確認しております」

「見つかった場所に規則性は?」

「ありません。ですが、どれも町の外周付近で見つかっています」

「……なに?」



 ユアのその一言に、思わず足を止める。

 召喚具が見つかったのは、町の外側に集中している。もちろん、偶然見つかったのが外側のみ、という可能性もあるだろう。

 だが、特に混乱を招きそうな中央部で見つかっていないのはおかしい。むしろ、中央部にモンスターが現れた方が、被害を大きくできるだろう。

 しかし、召喚具をばら蒔いた犯人はそれをしなかった。つまり、犯人の狙いは……



「っ、ユア!スイートナイトメアに向かえ!俺もすぐに行く!」

「承知しました」



 俺が指示を飛ばすと、ユアがその場から消える。

 俺もある程度モンスターを蹴散らすと、人混みの中に入り込み、スイートナイトメアに向かって走った。

 気が狂いそうな香りに頭がやられそうになりながら、なんとかスイートナイトメアへとたどり着いた俺が見たのは、



「……」

「退いてくれないかな?用があるのはキミじゃなくて、そこにいるヘレンなんだからさ」



 入り口を守るようにして武器を構えるユアとメフィロアンナ。その背後に、混乱を良いことに抜け出したであろうヘレン。

 そして、夢魔族の男―インキュバスが三人、ユア達と向かい合うようにして立っている所だった。

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