250 敵陣攻略
所変わって、ダンジョンの中。
ラミアからダンジョンコアを奪った鬼人は一人、高笑いを続けていた。
「あーはっはっは!また死んだ!雑魚とはいえ、こうも容易いと呆れを通り越して笑えてくるぜ!なぁ?」
「わらえない!」
鬼人は、ダンジョンコアの力を使い、ダンジョン内をモンスターで溢れさせ、潰し合う様子を眺めていた。
中には、ラミア達すら呼び出さなかった高ランクのモンスターも含まれており、本来であればマスターが抑制しなければいけないことを、鬼人は放棄していた。
そんな鬼人の側には、ダンジョンから生えるようにしてできた岩に捕まっている、小さなラミアが一体いた。
「このっ!コアをかえして!」
「やーなこった。オレはなぁ、人だろうがモンスターだろうが、なんでもいいから潰れるのを見るのが大好きでねぇ?お前みたいなガキだろうが、潰したくなるんだよ!」
「ぐぇっ……!?」
「どうせ、あいつらが助けに来てくれるとでも思ってんだろ?ざぁーんねんでした!あいつらなら一回来ようとして無様に逃げてるよ!ぎゃはは!」
「うげっ!かはっ……!?」
「苦しいか?そりゃあ良かった!その顔、最っ高だよ!ぎゃはは!……あぁ?」
突然、ダンジョンコアが強く反応し始める。ダンジョンに侵入者が現れた合図だ。
鬼人は子ラミアから手を離すと、ダンジョンコアに触れる。すると、コアがダンジョンの入り口付近の映像を映し出した。
「ははっ、良かったなぁ?お前のお仲間さんが戻ってきてくれたぞ?あぁでも、すでに一回逃げてんだったなぁ?」
「ごほっ……お、ねーちゃ……」
「ぎゃははは!……あぁ?んだこいつら?」
そこに映し出されたのは、前マスターのラミア達と、見知らぬ冒険者達であった。
その姿を見た鬼人は一瞬呆けたものの、すぐに笑い飛ばした。
「ぷっ、くくくっ……ぎゃぁーはっはっは!おいおいあいつら、ついに人間を引き連れて来やがった!自分たちじゃ無理だからって、人間なんかに助けを求めたのか?あーっひゃひゃひゃ!」
この鬼人にとって、人間は取るに足らない存在であった。
鬼人に進化を果たしたその日、彼は近くにあった村を一つ壊滅させた。その時得た快感が、今の人格を作り出していた。
「ばぁーかだなぁ?人間なんて、すーぐ壊れる雑魚に頼るなんて!それなら早速、潰してやろう!」
「な、にを……!」
「人間ごとき、適当にCランクのモンスターを数体呼んどきゃ死ぬ!さぁ、その無様で滑稽な死に様を見せてくれよ!なぁ!?」
鬼人はコアを使い、冒険者達の側にモンスターを召喚する。呼び出されたモンスター達は、一斉に冒険者達へ襲いかかった。
「ぎゃはは!さぁ、蹂躙して、や―――は?」
鬼人は、高笑いをしたために、映像から一瞬だけ目を離した。
そして再び映像に目を映した時、そこには、蹂躙された映像が流れていた。
ただし、それは鬼人が思い描いていたものではなく……
一人の少女によって、モンスター達が全滅していたものだった。
*
「ったく、こんな雑魚程度で殺れるとでも思ってんのか?あぁ?」
「いや、Cランクを雑魚って言えるのはお前だけだと思うぞ……」
ダンジョンに潜って早々、目の前にCランクのモンスターが出現した。俺も初めて見たが、これがコアによる召喚なのだろう。
そして、現れたモンスター達が、俺達に向かって一斉に牙を向いた。
だが、モンスター達はガラルが金棒を一振りしただけで全滅したのだ。
「ちょっ、ホントにこなことしてヘーキなん?」
「あぁ、俺達が暴れれば……ほらな」
ラミア達の心配を他所に、目の前に再びモンスターが出現する。しかし、再び瞬殺され、魔石へと姿を変えていく。
……成る程、コアによって産み出されたモンスターも、倒せば魔石に変化するのか。これはいい発見をした。
「ガラル、分かってるよな?」
「わーってるよ」
モンスターもなぎ払いながら、ガラルが返事を返す。俺達も次々と現れるモンスターを倒しながら、さらに奥底へと向かう。
だが、ラミア達はなにもしない。正確には、まだなにもさせない。彼女達の役目は、最深部にあるからだ。
奥に近づくにつれ、モンスターの出現頻度が高くなる。だが、俺達は臆することなく、そして止まることなく前進し続ける。
そして、攻略を開始してから僅か一時間足らずで、その姿を現した。
「おねーちゃ……!」
「なんだよ……なんなんだよお前らは!」




