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23 説教、そして一つの出会い

途中で視点が切り替わります。

「あーさっぱりしたぁー!」

「はぁ…追い回された…」

「ごめんってば。それよりも、ケインはどこに…」

「あそこ」

「あ、ほんとだ。おーい!ケーイーンー…って、あれま…」

「寝てる…」

「寝てるね…」

「そっとしとく?」

「いんや、こうする」






 …うん?

 あぁ、いつのまにか寝てたのか。

 心を無にするのに集中しすぎて疲れたんだろうなぁ…

 そもそも、ナヴィが変に意識させるようなことしたのが原因だし、後で叱って…

 というか、なんか柔らかいなぁ…

 気持ちいいけど、いったいなんだろ「んぁん」う…!?


 俺の意識はそこで覚醒した。

 おそるおそる頭を動かす。


「おはよう、ケイン」


 満面の笑顔を浮かべたナヴィがいた。

 そして、この体勢って…



「うぉわぁぁぁぁあたぁ!?」

「あ、ケイン起きたぎゃっ!?」

「ありゃま」

「いっつつ…あ、メリアごめん!」

「だ、大丈、夫…」



 飛び起きた俺は、顔を覗かせていたメリアとおもいっきりぶつかった。

 肝心のナヴィは少し笑っている。

 いや、お前のせいだからね?


 落ち着いた後に話を聞くと、湖から上がったあと、木にもたれ掛かるようにして眠っていた俺を、ナヴィが膝枕していたようだ。

 やっぱり、あの体勢は膝枕だったか…

 悔しいが、めちゃくちゃ気持ちよく眠れた。



「なるほどな…ナヴィ」

「なに?」

「とりあえず説教な」

「うぇ!?なんで!?」



 もちろんさっきの(脱ぎ捨てた)事だ。他に誰も居なかったとはいえ、さすがにデリカシーが無さすぎだ。



 ナヴィにちょっとだけ説教をしたあと、俺達はすぐさま出発した。

 というのも、ナヴィへの説教中にメリアがこちら側に向かってくる集団を察知したからだ。

 メリアが言うにはモンスターの群れと、それに追われている冒険者の一員のようだ。



「それで、どの辺りなんだ?」

「あっち…あ、見えた。一人が足をケガしてるみたい。囲まれかけてる」

「…俺、まだ見えてないんだが…」

「私もよ…どんだけ視角いいの…」

「そんなことないよ…ちょっと、視角強化して、見てるだけ、だから」

「それでも凄いと思うんだけど…」

「ま、まぁとにかくあの群れをどうするか考えないと」

「そうね…さすがに彼らが囲まれるのは時間の問題だし、ここから先制攻撃をかけるのは愚策ね」

「となると奴らが一番油断する、囲んだ直後に一気に叩き込むのがいいか?」

「どのみちここからだと到着までに囲まれてしまうわ。それでいいと思う」

「よし、到着次第、俺は前の敵を。ナヴィは後ろの敵を頼む」

「オーケー任せなさい!」

「メリアはケガ人の治療をしたら、そのまま彼らを守ってくれ。彼らの安全が最優先だ」

「…わ、分かった」



 メリアの顔が少し怯えているように見える。

 やっぱり、まだ冒険者は怖いか…

 だが、緊急ゆえにメリアも覚悟はできているようだ。

 俺達は彼らの元へと急いだ。




 ―――――――――――――――――――――




「くっ…も、もう足が…」

「ギル!しっかりしろ!…チッ、囲まれたか!」

「こんなときに限って、上級ポーションが無くなるなんてついてないわ…!」

「リ、リーダー、セーラ。俺の事はいい…お前らだけでも…!」

「ダメだ!お前を置いていくなんて、それこそありえん!」


(クソッ、どうしてこうなっちまったんだ…)



 この俺、ビードとギル、セーラは「銀獣」というパーティー名で冒険者活動をしている。

 名前の由来は俺達が獣人であること、リーダーの俺が銀髪であることからそう名付けた。

 全員がDランクの冒険者であり、稼ぎもなかなかよかった。


 ある日、俺達はある村の近くにあるこの森にいるロックボアの討伐依頼を受けた。

 ロックボア自体はすぐに見つかり、チームプレーを駆使して難なく討伐した。

 が、そのあとが問題だった。

 こいつら…ガビューウルフの群れが襲いかかってきたのだ。

 ロックボア討伐の証拠は手にいれたからいいのだが、こいつらに追われ続け、いつの間にか森の奥深くへ入り込んでしまっていた。

 そうなってしまえば奴らの独壇場。

 あれよあれよと追い詰められ、しまいにはギルが足にケガを負ってしまった。



「こ、のォォォォォォォ!!」

「バウッ!」


 俺は奴らに切りかかったが、横から攻撃を受け、仲間の元へ弾き飛ばされた。


「がっ、はっ、」

「ビード!」


(クソッ、ここまで、なのか…!)


 死を覚悟したそのとき、



「吹き飛べ!「空気弾(エアーバレット)」!」



 どこからともなく、女の声とともに風の弾丸が飛んできた。

 その弾丸は見事に奴らに命中し、一瞬で倒してしまった。


「はぁぁぁぁぁぁ!!」


 今度は男の声。

 声がした方を見ると、剣を持った少年がガビューウルフを一掃していた。

 奥の方には、先程のスキルを放ったと思わしき少女がいた。

 俺達が苦戦したガビューウルフ達をいとも簡単に…コイツらは一体…


「ケガ、みせて」

「…!?」


 再び別の声が、後ろの方…ギルの方から聞こえた。

 振り替えると、先程の二人ではない少女がいた。

 この子、いつの間に俺達のところに!?

 いや、それよりもギルを守らな…


「待って、ビード」


 剣を向けようとした俺に対し、セーラからストップがかかった。

 なぜだ、と反論しようとしたが、すぐに理解した。


「…ここ、だね。「回復(ヒール)」。」

「なっ、なんだ…!?」


 少女がギルに手をかざすと、ギルの体を光が包み込んだ。

 その光は優しくかつ強力に輝き、ギルのケガを直していく。


「…ん?う、動ける…動けるぞ!」

「こ、これが回復(ヒール)だというの…!?」


 セーラの驚きもわからんでもない。

 なにせこの少女は、たった数秒の回復(ヒール)で、ギルのケガを完治させてしまった。

 普通の回復(ヒール)使いだと、ギルのケガを直すのに数分はかかるというのに、だ。


 目の前の光景に呆気をとられていたが、ふと気づけばガビューウルフの声がしなくなっていた。

 辺りを見回すために頭を上げた俺は、再び呆気にとられた。



 すでにガビューウルフの群れは全滅し、辺りはガビューウルフの魔石とドロップアイテムで埋め尽くされていた。

 全滅させた張本人達は、何気無い顔で立っている。

 ギルを回復してくれた少女も、彼らの元へ向かった。


 なんて奴らだ。

 それと同時に、憧れを抱いた。

 彼らのように強くなりたい、と。



 この出会いが、俺の運命を大きく変える出会いだとは、この時の俺は知るよしもなかった。

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