225 ビシャヌとの再会
Amang Usしたいけど、人が集まらなくてやれない日々を過ごしてる……
もっと宇宙人狼やりたい
「よくぞ参られた。ワタシがこのマリンズピアを治める王、フルブーク・ヴァルフリュート・エクシリアである。フルブーク、と呼ぶといい」
「わたしはエマ。ビシャヌの母です。よろしくお願いしますね?」
「は、はぁ……」
国王と女王に挨拶されるも、少し上の空のような返事しか出てこない。
その原因は、女王からも名前の上がった、二人の側にいる少女である。
―ビシャヌ。かつてパライル島で、ウィルと共に出会った人魚族の少女。
その時から育ちが良いことは感じていたが、王族とは思っていなかった。
「お父様、お母様。ケインさん達は私のお客様。ですので、私が色々と案内しようと思うのですが、よろしいですか?」
「あぁ、構わない。見張りも特に必要ないだろう」
「……良いのか?あんたの娘だろ?」
「あぁ、これでもワタシは、人を見る目が良い方だと自負している。君たちなら問題ないと、ワタシが判断した。それでは不満か?」
「……いや、すんなり受け入れたから驚いただけだ」
「なに、気にすることはない。もしなにかあれば、優秀な兵士達がすぐに駆けつける。その事さえ忘れなければよい」
「ケインさん達はそんなことしませんよ。さぁ、こちらです」
ビシャヌに先導されるがまま、謁見の間を出る。
そして、再び螺旋階段へとたどり着いた時、登ってきた一人の青年が現れた。
「あ、姉さんだ」
「カンザ?どうかしたの?」
「いや、少し困ったことが起きたから、父さんに相談しようかなぁ……って思ってたんだけど……」
「あぁ、今なら大丈夫ですよ」
「そっか、ありがとう姉さん!……ところで、そちらの方々は?」
「私の友人です」
「あぁ、例の!」
青年がこちらへと体を向ける。
髪や瞳の色はビシャヌと違うが、顔つきはそれとなく似ている。
「皆さん初めまして、僕はカンザ。ビシャヌ姉さんの弟です。よろしくお願いします」
「ケイン・アズワードだ。全員が挨拶すると長くなるから、リーダーである俺だけが挨拶するが、気を悪くしないでほしい」
「そんなことはないです。むしろ会えて嬉しいくらいですから。なにせ姉さん、時々空を見ながら皆さんのことを呟――」
「カンザ?」
「――いや、なんでも無いです」
ビシャヌが声のトーンを落とした瞬間、カンザは一気に顔を青ざめさせた。
まぁ、確かに恐いわな。
「それでは皆さん、またお会いしましょう」
「気をつけてくださいね?でないと……」
「わ、分かってるから。じゃっ!」
カンザは少し小走りでその場を後にする。
それほどに恐かったらしい。
「では、行きましょうか」
「あぁ」
ビシャヌの案内の元、城の中を見て回る。時折すれ違う人々に頭を下げられている所を見るたび、ビシャヌが王族であると実感させられる。
そして、とある部屋へと連れてこられた。
「ここは?」
「私の部屋です。どうぞ」
どうやら、ここはビシャヌの個人部屋らしい。
俺達全員が入っても、まだ余裕のある広さがあるが、そのわりに置いてある家具は最低限。
植物や人形などが置いてあるわけでもなく、中央に置かれている大きなベッドが一番目立つ形になっている。
「それでは、初めての方もいらっしゃいますし、改めて自己紹介を。私はビシャヌ・ヴァルフリュート・エクシリア。ビシャヌ、とお呼びください」
「……本当に、王族なんだな」
「はい。あの時は、素性を明かせず申し訳ありませんでした」
「……いや、むしろ明かされなくて良かったと思ってる」
「というか、一国の姫様が外に出ていて大丈夫だったのかしら?」
「ふふっ、あれは〝素性を隠し、外の世界を知る〟という名目で出て来ていたので問題ありませんよ」
ニッコリと笑うビシャヌ。その笑顔を見た時、先程のカンザの気持ちが良く分かった。
恐らく、一番怪しまれない理由を付けて、ウィルと共に行動していたのだろう。でなければ、一国の姫が護衛も無しに外に出られるハズがない。
目的の為に、最も良い方法で行動できる。その頭脳を、ビシャヌは持ち合わせているのだ。
「……それで、ケインさん」
「なんだ?」
「私との約束、覚えていますか?」
「あ、あぁ、覚えているが……」
パライル島での別れ際、俺はビシャヌを仲間にすることを約束してしまっていた。
だが、後々になって少しだけ後悔し、今完全な後悔へと至った。
だって一国の姫様だぞ?ダリアの時ですら無理矢理断ったのに、ビシャヌに関しては約束を先にしてしまっている。
この状況、どうすればいい?
「良かった……覚えていてくれましたか」
「まぁ、ウィルもいるし、忘れようにも忘れられない感じだからな」
「ふふっ、そうですね……Ra―――」
突然、ビシャヌが歌声を放つ。
すると、部屋全体を包むようにして膜のようなものが張られた。
「ビシャヌ、今のは……?」
「〝防膜〟です。これで、外に声は漏れません……ケインさん、折り入ってお願いがあります」
「な、なんだ……?」
ビシャヌが真剣な顔で俺を見つめる。
俺は少しだけ動揺したが、すぐに持ち直すとビシャヌと面を向き合った。
ビシャヌは、わざわざ外に声が漏れないようにした。つまり、ここにいる俺達以外に聞かれたくない話をするつもりなのだろう。
俺達の視線が、自然とビシャヌに集まる。
そして、ビシャヌは口を開いた。
「ケインさん。私と駆け落ちしてください」




