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213 月下乱舞 その1

 その日は、一点の曇りもない夜がやって来た。

 月明かりが夜の町を照らし、まだ残っている店の明かりと混ざり合う。


 そんな中、俺達は町の外へと来ていた。俺達だけではない。ガーナ王国の騎士団もいる。



「不抜の旅人の皆様、協力感謝するぞ」

「畏まらなくてもいい。それより本当にいいのか?俺達を指揮の対象から外して」

「元より、我々だけで戦うつもりでしたからな。それに、ナーゼ殿から聞いております。貴殿らは曲者揃いだと。故に、我々が縛るよりも、自由に動いてもらった方がいい、と判断したまでです」

「そうかぁ……そんな風に思ってたのかぁ……」

「い、いや……その……」

「はぁ……メリア、ソルシネア!今どんな状況だ?」

「……まだ、なに、も」

「集まってル様子もないヨー」

「だ、そうだ。まだ月も出たばかり。油断はできないが、もう少しだけは余裕がありそうだ」

「わかった、皆にも伝えよう」



 団長らしき人物が、俺達の元を離れる。

 まだ月明かりが差し始めたばかりだからか、思っていたよりも静かだった。

 しかし、逆を言えば、これから忙しくなるということでもある。



「……さて、ここからは別行動になる。いいな?」

「……ん、だい、じょーぶ」

「久々の大喧嘩!くぅぅっ、滾ってきたぁ!」

「はぁ……これだから戦闘狂は……」

「あはは……」



 今回、俺達は複数のチームに別れて行動することにした。

 まず、俺率いる特攻部隊。常に全線に出て、頭数を減らしていくのが役目である。メンバーはユア、アリス、イルミス、ガラル。

 次に、ナヴィ率いる防衛部隊。群生地前で待機し、流れ込んできたモンスターを刈ってもらう。メンバーはウィル、イブ、リザイア、ベイシア。

 そして、メリア率いる支援部隊。主に敵の行動を阻害したり、傷ついた味方の救出をする。メンバーはレイラだけだが、今回はナーゼも支援部隊として入っている。

 最後に、ソルシネアは情報部隊として空にいてもらう。万が一空を飛ぶモンスターが現れた際は、そのままソルシネアに相手をしてもらう算段だ。



「……ケイン」

「ん?メリア、どうしたんだ?」

「なんか、無理して、ない?」

「別に無理はしてないが……どうしてそんなことを聞くんだ?」

「……ううん、なんでも、ない」

「そうか……」

「見えタ!見えたヨー!」

「っと、ここまでのようだ。それじゃあ、そっちは頼んだぞ」

「ん、任された」



 ソルシネアの敵襲を知らせる叫びが、この場を緊張感に塗り替える。

 俺達はメリア達をその場に残し、森の中へと入っていく。


 見えてきたのは、種族の垣根を越えたモンスターの集団。ゴブリンを始め、オーク、ウルフ、リザードマン……あらゆる種族のモンスターが、まるで引き寄せられるようにしてこちらに向かってきていた。



「……今さらかも知れないが、イルミスとガラルは平気なのか?」

「んぁ?……あぁー、フェロモンの影響があるのかってことか?まーったくこれっぽっちもねぇよ」

「わたしも問題ありません」

「だとすれば、フェロモンで引き寄せられるモンスターは、低ランクのモンスターってことか……全員、低ランクが相手だからって油断するなよ!相手の数は未知数なうえに、常に囲まれて戦うことになる!常にお互いの位置や状況を把握しながら戦うように!行くぞ!」

「はい!」「えぇ!」「おう!」「分かりました」



 俺の号令の元、ユア達が駆け出す。

 夜明けまで、残り七時間。



 *



「……皆さん、大丈夫でしょうか……」



 エイエルが一人、月明かりが射し込む部屋でぽつりと呟く。と、部屋の扉が空く音がした。

 エイエルがそちらの方を向くと、一人の男性と一人の少女が入ってきた。ガーナ王国国王アルフレット・ガーナと、その娘クラリア・ガーナだ。



「エイエル……調子はどうだ?」

「……今は大丈夫よ」

「そうか……」

「お母様……あの人たちのこと、心配しているんですね」

「えぇ……彼らが自ら望んだとはいえ、巻き込んだのは事実。それに……」

「エイエル、それ以上言うな。お前の気持ちは分かっている。だから、もう……」

「そうね……ごめんなさいあなた、クラリア……」



 三人は体を寄せ抱き合った。

 その表情は、とても優しく、とても悲しそうだった。


 夜空は、少しずつ曇り始めている。誰にも気付かれることなく、ゆっくりと。

前までに書いてなかったですね。

エイエルは王妃で既婚者で子持ちです。

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