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207 曰くモブvs主人公 その2

構成に悩みまくった結果、書くのに一週間もかかるとは……

 何度目かの衝撃が、空気を震わせる。

 冒険者達はすでに言葉を失い見入っており、そこには聖剣と天華がぶつかる音、そして俺達の声だけが響き渡っていた。



「クソッ、いい加減倒れろっ!」

「断る」



 俺に攻撃を防がれているのが気にくわないのか、先程から男の口調は厳しくなってきている。

 対する俺は、男の力量を計っていた。仮にも相手は勇者を名乗り、聖剣を手にしている。

 確証は無かったが、男は何かしら強力な力を持っている、と感じていた。


 そうこうしているうちに、男の息が少しずつ上がってきていた。

 あれだけ無駄に聖剣を振り回していたのだ。体力の消費もその分激しくなるのは目に見えている。



「くぁっ、はぁっ、はぁっ」

「どうした?もう終わりか?」

「ふざっ、けるなっ!」



 男は強がるが、明らかに疲れと焦りが見え見えになっている。

 恐らく、これまでは今の戦い方が通っており、すぐに戦いが終わっていたのだろう。でなければ、ここまで体力を無駄にする必要がない。

 だが、俺がひたすらに持久戦を仕掛けた結果、これまで通用してきた脳筋戦法は、己の体力を奪う結果となったのだ。


 だが、男の目は諦めていない。というより、勝つことに異様な執着を示していた。

 先の男の言葉を借りるなら「主人公がモブに負ける訳がない!」だろうか?その一点で戦っているように思えた。



「……こうなったら仕方ない、勇者の力を使わせてもらおうか!」

「……じゃあこれまでは本気じゃなかったと?」

「そうさ。使うまでもないと思っていたが……ここまで倒れなかったご褒美だ。特別に見せてやろう。俺の真の力を――!」



 瞬間、男の姿がその場から消え、俺の目の前に現れる。そして振るわれた聖剣を咄嗟に天華で受け止めるが、受け止めきれずに吹き飛ばされてしまった。



「ぐっ……!」

「ハッハッハ!これが勇者の力、限界を越えた力を引き出すスキル〝制限解除(リミットオフ)〟だ!」

制限(リミット)解除(オフ)……ねぇ……」

「これぞ、選ばれた者のみが持つことを許されたスキル!さぁ、今度こそ終わらせてやる!」



 俺を吹き飛ばしたことで勝てると思ったのか、先程までの厳しい口調が、再び得意気なものへと変わる。

 確かに、制限解除(リミットオフ)は凄まじい能力のスキルだ。事実、ここにいる大半の冒険者は何が起こったのか分かっていないだろう。

 そして、一部の冒険者は目で追えこそすれど、同じ動きはできないと確信してしまう。

 それほどまでに、制限解除(リミットオフ)による強化は凄まじいものであると言えるのだ。


 そして、嫌でも分からされた。制限解除(リミットオフ)を使った以上、コイツは紛れもなく勇者であると。



「……まぁ、この程度なら余裕だけどな」

「なっ!?」



 そんな状態の攻撃を、俺は軽々と受け止めた。

 あまりにも予想外だったのか、男の目が大きく見開かれる。



「ま、マグレだ!受け止められるわけがっ……!」

「遅い」



 男は一度距離を取ると、再び突撃。今度は俺の死角をついてきたが、俺は即座に対応して聖剣を受け止めた。



「ありえない!ありえる訳がない!制限解除(リミットオフ)を使ったんだぞ!?」

「……確かに、そのスキルは凄まじい力を持っている。だが、使い手が未熟なら、ただの宝の持ち腐れでしかない」

「未熟……!?貴様、主人公に向かってなんてことを言いやがるんだ!」

「じゃあお前は、剣を握って何年経つ?」

「そんなの関係ないだろ!?」

「俺は十年以上、剣と共に生きてきた。剣が無かったら、俺は今頃死んでいたかもしれない。……だが、お前は違う。争いも戦いもない平坦な世界で、苦労することなく生きてきた。だから、お前の剣からは何も感じない」

「な、なに訳のわからないことを……」

「剣の持ち方も、剣の振るい方も、威力も技術も何もかも、お前はただ力任せにしているだけ。そのスキルも、ただ力任せに使うだけで本質を理解しようともしていない。だから、宝の持ち腐れと言ったんだ」

「だから、訳のわからないことを言うなぁぁ!」



 怒りに身を任せ、男が突撃してくる。殺気を放つような形相で距離を詰め、叩き伏せようとしてくる。

 全ては、自分の為。そこに他者の意見など必要ない。いや、合ってはならない。そう言いたげな攻撃が、目前に迫る。



「……〝制限解除(リミットオフ)〟」

「……は?ぁがっ!?」



 だから俺は、男に聞こえるようわざと声量を上げ、がら空きの懐に天華を打ち込んだ。

 強烈な一撃を受け、男は再び地面を転がる。不殺の付与がなければ、今の一撃は致命傷になったのだろうか。



「かはっ……なっ、なんで、お前もっ……!」

「悪いな。この力を使えるのは、お前だけじゃないんでね」

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