196 ヒュドラ攻略戦 その2
200話目達成しました!
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「ガラル!初撃は任せた!」
「おうよ!いくぜオラァ!」
「フギュラァァァ!?」
ガラルが地面を蹴り、ヒュドラとの距離を一瞬で詰め、頭の一つを殴り飛ばす。ヒュドラも先制されるとは思っていなかったのか、防ぐ暇もなく殴られた。
しかし、殴り飛ばせたと言っても、それは五つある頭のうちの一つにすぎない。残り四つの頭は、ガラルをしっかりと捕らえていた。
「ベイシア!右は任せた!」
「承知!」
「〝波斬〟!」
「〝飛槍〟!」
「「フグァ!?」」
「「フギュラッ!?」」
ガラルに襲いかかろうとしていた四つの頭。その右にある頭に、ベイシアが素早く糸を絡ませる。
襲おうとしていた二つの頭は、急にその勢いを殺された影響で、首が変な方向に曲がってしまっていた。
そして、残り二つの頭には俺とアリス、二人の攻撃を浴びせた。どちらも、避けられること無く命中し、退けることに成功した。
「ガラルはそこで暴れ続けろ!ベイシアは可能な限り粘ってくれ!」
「オッシャラァァァァ!!!」
「わかっとるのじゃ!」
「行くぞアリス!」
「えぇ!」
ガラルがヒュドラの胴体に着地し、そのまま拳を振り下ろす。
例えヒュドラであろうと、個の力に特化している鬼人の攻撃は重く、強い衝撃となって体中に響き渡る。
ヒュドラはガラルを振り落とそうとするも、ガラルは気にすることなくそのまま殴り続ける。
おまけに、右側の頭はベイシアが拘束しており、思ったように動かせない。
ならば、と左の頭で攻撃しようとして、視角が生まれる。
そのチャンスを、俺とアリスは逃さない。
「「はぁっ!」」
「「フガァァッ!?」」
背後から、天華と槍が眉間を襲う。どちらも致命傷にはならないが、大きなダメージになることには間違いない。
と、痛みで頭同士がぶつかりそうになったので、素早く武器を引き抜き、頭から退避。その瞬間、ヒュドラの頭同士がぶつかり合った。
「グルブァァァァァァ!」
だが、ヒュドラがやり返してこないハズがない。残っていた頭―最初にガラルが殴り飛ばした頭の口から、毒のブレスが吐き出された。
しかし、そのブレスが俺達を襲うことはなかった。
「ほいサー!〝風刃〟!」
ソルシネアが、ブレスに向かって羽を羽ばたかせて風の流れを作り出し、風刃と合わせ、ブレスを俺達から逸らした。
そして、再び接近。今度は二人同時に首もとを切りにかかった。が
「くっ……!?」
「グシャァッ!」
「「ぐぅっ!?」」
ベイシアが押さえていた頭のうちの一つが、拘束から抜け出し、俺達に体当たりをしてきた。横からの攻撃だったこともあり、俺達は防御もロクに取ることが出来なかった。
「すまぬご主人、アリス!」
「こっちは大丈夫だ!それより、次の段階に移行してくれ!」
「わかったのじゃ!」
「ガラルも戻ってこい!」
「あぃよ、ご主人サマ!」
ベイシアが糸による拘束を止め、ガラルもこちらへと戻ってくる。形としては、ヒュドラから見て右側に俺達、左側にベイシア、真上にソルシネアが構えている状態だ。
「……行くぞ!」
「おぅ!」
俺とガラルが、それぞれヒュドラの正面と背後に向かって駆け出す。ヒュドラも、俺を踏み潰そうと前足を上げ、ガラルを弾こうと尻尾を振るう。
しかし、そのどちらも俺達を捕らえることは出来ず、むしろそれを利用して、ヒュドラの体に乗った。
だが、ヒュドラは動揺しない。俺達を視界に捕らえると、ブレスを吐いてきたのだ。
「ふーじン!」
「〝飛槍〟!」
空からソルシネアが風刃で、アリスが地上から飛槍で、それぞれブレスから俺の身を守る。しかし、ガラルは正面から受けてしまう。
だが、そんなもの気にしないとでも言わんばかりに跳躍すると、そのままガラルに向かってブレスを吐いてきた頭に狙いを定める。
そして俺も、魔法鞄からあるものを明後日の方向に投げ飛ばしつつ、同じ頭を狙う。
「おらよっ!」
「〝火炎波斬〟!」
ガラルが、頭を勢いのままに後ろに曲げ、無防備に開いたその口目掛けて俺が火炎波斬を放つ。
その頭は、口の中から焼き切られ、ブレスの余波が僅かに残っていたせいか、首もとで小さな爆発を何度も起こした。
一方、毒のブレスをまともに食らったガラルだが、その進行方向に小さな瓶が飛んできていた。
それは、あらかじめ俺が投げておいた解毒薬。
ガラルは目の前に飛んできた瓶を握り潰すと、そのまま解毒薬を体中に浴びた。
「よし、まずは一つ!」
『グギャラァァァァ!!』
「気を抜くでないぞ!まだ首は四本残っておる!」
「わーってるよっ!」
ベイシアの一喝。
今のは、不意を付けたからこそ出来たようなもの。もう一度やれるかと言われたら、厳しいと言わざるをえないだろう。
だからこそ、気を抜くわけにはいかない。まだヒュドラを倒せたわけではないのだから。




