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191 孤児院での再会

 あれから三日後、俺達は無事にフォアリスへ到着した。

 このフォアリスという町は、特別なことをしていたり、名所があったりする訳ではない。しかし、自然と共に暮らす町ということもあり、町の雰囲気はとても心地よいものとなっている。



「それで、どこへ向かうのかしら?」

「そうだな……この町には冒険者ギルドも無いし、これといった場所も……っと」



 ちょうど交差路を歩いていた少女が、偶然にも俺とぶつかってしまう。いや、偶然というよりは、少女が俺達のことを気づけていないように見えた。

 というのも、少女の顔が、すごく落ち込んだ表情をしていたからだ。



「あっ……ご、ごめんなさい!」

「大丈夫。それより、どうしたんだ?元気が無いみたいけど……家族とはぐれたのか?」

「ううん、違うの。最近、ともだちが病気になっちゃって、ずっと遊べなくて……」

「心配すぎて、ぼぅっとしてたわけか」

「うん……ほんとにごめんなさい……」

「いいって。……でも、少し心配だな。君、家はどこだ?」

「わたし、孤児だから、家はないよ」

「孤児……?ってことは、孤児院か」

「うん」

「じゃあ、孤児院までいこう。このまま暗い顔してたら、さっきみたいになるかもしれないぞ?」

「……うん、わかった。お兄ちゃん、ありがと」



 聞き分けのいい子で助かった。

 しかし、孤児院という言葉を聞くとは思わなかった。孤児院が珍しい訳ではないが、このような町にあるとは思っていなかったからだ。

 だが、現にこの少女は孤児院があると言った。ならば、そういうことなんだろう。


 孤児院までの間、少女に色々と質問をしてみた。

 その結果分かったのは、孤児院と名しているが、働く親が子供を預ける場所としても使われていること。

 シアという少女が、重い病気にかかってしまったこと。

 そして今、偶然この町に来ていた薬師が、シアを診てくれている、ということだ。



「でも、それなら他の子と遊べばいいのではないですの?」

「みんなと遊ぶのは楽しいけど……やっぱり、シアと遊びたいから……」

「健気よのぅ……妾が慰めてあげ「やめろ」……うむ」

「大丈夫だよ。ありがとう、お姉ちゃん」

「はぅぅっ!?かっ、可愛いのじゃ……やはり、妾が慰め――」

「……ガラル、やれ」

「あいよ」

「ちょっ!?待つのじゃご主人!冗談!冗談じゃから!流石の妾でもこれは無――」

「心配すんなって。――ただのビンタだ」

「お主のはただでは済ま――」

「そぅらよっ!」

「ふべらっ!?」



 後ろの方で、ベイシアの断末魔が町中に響く。

 一応、ベイシアは俺の従魔であるため、俺の言うことは素直に従ってくれる。だが、それでもこうして暴走することがあるので、その際はガラルに任せ、制裁を与えることにしていた。


 近くの住人の注意を引くのは諦めているが、少女の耳を塞ぎ、頭を動かないようにしておいたのは正解だった。

 さすがに、幼子に見せられるような光景ではないからである。



「あアッ、いイッ!そのビンタ、ワタシにモッ!」



 あと、今のソルシネアも見せられないし、聞かせられないからな。

 まぁ、怪我してもメリアがいるからある程度は治せる。安心して殴られておけ。

 ……とは、流石に言えないので、心の中で言っておく。

 言ってしまえば、それだけ命の危険を顧みないような行動をしてしまうかもしれないから。

 怪我が治る、というのはいいことだけではない。それだけ、死に対する恐怖心も薄れてしまう可能性がある。だからこそ、過信だけはしないよう、この言葉は口に出さない。


 そうこうしているうちに、孤児院が見えてきた。外見はシンプルなお屋敷、といった感じだ。

 だが、その土地はかなり広々としており、下手な権力者よりも広いと思われる。



「お帰りなさい、クララ」

「ただいま、マザー」

「それで、そちらの方々は?」

「わたしをここまで送ってくれたの」

「そうだったんですね。皆様、この度はありがとうございます」

「いや、顔色も良くなかったし、放っておくには心配だったから連れてきただけだ」

「そうでしたか……やっぱり、シアが心配?」

「うん……」

「大丈夫ですよ。先程診てもらいましたが、大分良くなっているみたいですよ。お見舞いもしていいって」

「ほんと!?」

「えぇ、会いに行ってあげてね?」

「うん!……お兄ちゃんたち、ありがと!」



 手を振りながら、屋敷へと掛けていく少女。

 俺達は、少女に手を振り返した。



「ご挨拶が遅れました。私はこの孤児院でマザー、つまり、母親がわりをしています、グレイスと申します。この度は、クララがお世話になりました」

「かしこまらなくてもいいですよ。俺はケイン。俺達は、不抜の旅人というパーティーで旅をしています」

「では、そうさせてもらいます。貴方がたも、堅い言葉は使わなくていいですから。先程みたいに、砕けた言葉でいいですよ」

「そうか?なら、そうさせてもらう」



 このグレイスという女性が、この孤児院の経営者のようだ。物腰は柔らかそうで、先の少女のように、マザーという愛称で呼ばれているらしい。信頼されている証だろう。



「そういえば、さっきの子も言ってたが、病気の子がいるとか」

「えぇ、シアという名前なのですが、少し重い病気を患ってしまって。偶然この町に来てくれていた薬師さんがいなかったら、もっと酷くなっていたかもしれません」

「その薬師って、一体……」

「……噂をすれば、あの人ですよ」



 グレイスが指差したのは、屋敷の扉。そこからちょうど、外へと出てきた少女がいた。

 茶緑色の髪を靡かせた、眼鏡を掛けた少女。白衣を纏い、そこから見える手は、肌の色とはうってかわって茶色……って



「あそぼー!おねーちゃん!」

「わかった、わかったから落ち着いて、ね?」

「人気者だな、ナーゼ」

「そうなんだよね、少し困っ……ふぇ?」



 俺が声を掛けると、困ったような言葉を一瞬だけ口にしたが、すぐに驚きの声に変わる。

 そして、顔を上げ、俺の顔を見ると、表情まで驚きに変わっていく。



「ケイン!?どうしてここに?」

「偶々、な。それより、元気そうだな」

「う、うん。ボクは元気だよ。そっちは?」

「俺も、俺達も元気だ」

「そっか……っと、そうだ」



 驚いたままの顔を伏せ、再び顔を上げるナーゼ。その口は、僅かに上がっていた。



「久しぶり、ケイン」

「あぁ、久しぶりだな。ナーゼ」

おまけのキャラ詳細②


イブ

種族:魔族

性別:女

年齢:9

所持スキル:炎、闇、煉獄、監獄、灯り、爆炎


ユア

種族:エルフ

性別:女

年齢:24

所持スキル:気配遮断、索敵、暴風、魔術付与[概念追加]


リザイア

種族:サキュバス

性別:女

年齢:21

所持スキル:電撃、精神解放、魅了、???、???、???


アリス・フィルミエ

種族:人族

性別:女

年齢:18

所持スキル:槍術、飛槍、制限解除


イルミスガルド

種族:ドラゴン[聖龍]

性別:女

年齢:439

所持スキル:人化、威圧、部分龍化、竜の息吹

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