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190 従魔達の服事情

二十一章、開幕です。

「おっ、見えてきたな」

「あれが、トゥラスク……」



 ベイシア、ソルシネアを新たに仲間に迎え入れてから三日。俺達は次の町、トゥラスクに来ていた。

 町自体はそこまで大きく無いが、ここでなら目的の物がありそうだったので寄ることにした。


 というのも、このトゥラスクという町は、染め物を使った服を主に生産しており、その技術は王族すらも認めるほど。

 そこまで距離が離れていないこともあり、王都にもトゥラスク製の服が売られていたりする。

 ちなみに、オーダーメイドも受け付けているらしく、過去にはランデル達の服も作ったんだとか。これは本人達から聞いたから間違いない。


 ここまで言えば分かるだろうが、目的はベイシアとソルシネアの服の購入。

 ソルシネアはこのままでもいいと言っていたが、やはり新しいもののほうが見映えがいいと言ったら素直になった。そして息をするように暴走した。コイツの沸点がわからない。

 ベイシアは元々別の服を欲しがっていたので、なにも問題なかった。

 問題は、気に入る服があるかどうかだが……



 *



「駄目じゃな」

「駄目かぁー」



 駄目でした。

 大勢で行くのもあれなので、店の外で待っていた俺に、ベイシアがそう告げた。

 ソルシネアはすぐに決まったようで、僅か数分で戻ってきていた。それに対して、ベイシアはかなり時間を掛けていたようだが、お目に叶うものはなかったようだ。

 ソルシネアが選んだのは、空色のフリルが所々にあしらわれたワンピースと、焦げ茶色のホットパンツ。

 よほど気に入ったのか、ソルシネアは先程から目の前でクルクルと空を飛んでいる。


 ちなみに、ソルシネアは言葉が喋れるようになっただけでなく、人化も出来るようになっている。

 ただ、本人が人化をするのを嫌っているため、自由にさせることにした。ハーピーなら、鬼人やアラクネとは違って騒ぎになりにくいし。



「というか、どんな服がいいんだ?」

「そうじゃのぅ……やはり、品があり、趣のある物がよいかの」

「趣、ねぇ」

「この店に限った話ではないのじゃが、女性ものとなると、どうにも可愛らしい物しかなくての。妾はそのような服を着ようとは思わぬしの」



 可愛らしい服を着たベイシア、というものを少し想像してみたが、本人が自負するとおり、お世辞にも似合うとは言いづらい。

 どちらかと言えば、落ち着きのある服の方が似合いそうである。



「とりあえず、他の店も回ってみよう」

「……そうするかの」

「あのー」

「……はい?」

「あ、さっきの店員さん」

「はい、先程はお買い上げありがとうございます」



 次の店に向かおうとしていた俺達に、この店の店員だと言う女性から、突然声をかけられた。



「それで、用件はなんだ?」

「えっと、そちらの女性が着る服をお探しなんですよね?」

「そうじゃ。すまぬが、この店では妾にあう服はなかったのじゃ」

「それは申し訳ありません。ですので、かわりに一ヶ所、お連れしたいお店があります」

「それは良いんだが……店を離れても大丈夫なのか?」

「オーナーからは許可を得ていますので問題ありません。では、ついてきてください」



 先行する女性に連れられること数分。やって来たのは、裏路地にある店だった。



「ここは?」

「〝和服〟と呼ばれている、伝統的な服を作っている店です。ただ、普段着にも、冒険者用にもあまり向かない服ですので、売り上げは良くないのです。ただ、お求めになる方もいますので、こうして店を建てているのです」

「……だとしても、ここまで人は入って来ないのではないかしら?」

「実際、そのとおりです。お求めになる方の大半が貴族であったりしますから」

「あー、そういうことか」

「……それと、ここだけの話なのですが、この店の店主は私の妹なんです」

「……それ、言っても良かったのか?」

「最悪、見てくれるだけでも喜んでくれますから。そんなわけですので、よろしければ購入を検討してみてください」

「あぁ、ありがとう」



 店に戻っていく女性を尻目に、メリア達は店の中へと入っていく。

 俺と一部の女子は、大人しく外で留守番だ。

 ……気に入った服が、あればいいんだが。



 *



「……ありゃ?珍しいな。この時期に、しかもこんな場所にお客さんが来るなんて」

「……それ、客に言うことですの?」

「あっはっは、ゴメンゴメン。ここって分かりにくい……というか、全く目立たないところにあるでしょ?だから人も滅多に来ないからさー。んで、どうしてここを見つけたの?」

「さっき、お姉さん?から、教えて、もらった」

「あぁ……姉ちゃんか、納得。んじゃ、気に入るかどうかは分かんないけど、見ていってよ」

「えぇ、そうさせてもらうわ」

「それで、全員ぶんの服を見繕えばいいのかな?」

「いえ、見繕ってもらいたいのは一人だけ……って、ベイシア?」

「あれ……?一体どこに……」

「……あそこ」



 メリアが、店の一角を指差す。

 ナヴィ達が、指し示した場所に目を向けると、ある一点に目を向けたまま、硬直しているベイシアを見つけた。



「……えっと、ベイシア?」

「……のじゃ」

「えっと……?」

「見つけたのじゃぁぁぁぁ!!」

「ちょっ、いきなりどうしたんですの!?」

「これじゃ!妾が求めていたものは!美しく、趣もあり、そして何よりも美しい!」

「……美しいって二回も言いましたわよ?」

「店主よ!これはいくらじゃ!?」

「ふぇっ!?え、えっと……き、金貨五枚、だけど……」

「買うのじゃ!」

「即決!?で、でもお金は……」

「これで、いい……?」

「こっちも即決!?」

「……とりあえず、一度着てみたら?サイズが合わないかもしれないし」

「あ、その心配は無いよ。今選んだ和服には、サイズ調整の魔術回路が組み込まれているから、着る人に合わせて自動的にサイズが調整されるようになってるんだ。……まぁ、そのせいで金貨五枚、なんて高額になってるんだけどね」

「では、着てくるのじゃ!」

「「早っ!?」」



 *



「……というわけで」

「どうじゃ?ご主人よ?」



 店から出てくるや否や、新たな装いを見せつけてくるベイシア。

 ベイシアが選んだのは、黒を主体とし、そこに白や赤の刺繍が施されているもの。

 店主曰く、袴と呼ばれているその服は、胴まわりから足元まで延びているスカートらしきものが印象的である。また、袖は膝辺りまで長く作られており、そこにはクモの巣のような刺繍が施されていた。


 ……あと、どうでもいいことだが、ベイシアは着痩せするタイプらしい。

 先程までこれでもかと主張していた膨らみが、なにもないかのように平らになっていたから。



「……一言、いいか?」

「うむ」

「すっごい似合ってる」

「っ!……ふふっ、嬉しいのぅ」



 口元を押さえながら、ベイシアが笑う。

 中々の出費だったが、これくらいならいいか、なんて思ってしまう。



「……さて、用も済んだし、出発するぞ」

「次は、どこに、行くの……?」

「さっき商人から聞いたんだが、ここから三日ほど進んだ場所に、フォアリスっていう町があるらしい。そこに向かう」

「ん、わかった」



 俺達はトゥラスクを発ち、次の町へと向かう。

 次は、どんな町なのだろうか。



 *



「はいはーい、順番にねー」

「ありがとうございます。病気だったシアの容態を見てくれただけでなく、子供たちの面倒まで見てもらって」

「いいのいいの。シアちゃんが治るまでは、ボクもここにいるからさ」

「シアを見てくれてありがとー!ナーゼお姉ちゃん!」

「ふふっ、お礼を言われるようなことを、ボクはまだしてないよ。でも、ありがとね」

蜘蛛+和服は正義(個人的な意見です)



おまけのキャラ詳細①


ケイン・アズワード

種族:人族

性別:男

年齢:19

所持スキル:剣術、波斬、火炎波斬、魔力眼、不屈、反撃、地図[地図作成、目印]、暗黒波斬


メリア

種族:メドゥーサ

性別:女

年齢:不明(見た目は17)

所持スキル:回復、防壁、安息


ナヴィ

種族:吸血鬼

性別:女

年齢:20

所持スキル:収納、空気弾、砂塵弾、闇、影の槍


レイラ/レーゼ

種族:ゴースト

性別:女

年齢:13

所持スキル:念力、隠密、念力格闘 (レーゼ)


ウィル

種族:人魚

性別:女

年齢:17

所持スキル:水、飛水、水刃、人化、反射

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