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19 ナヴィ襲来

 ナヴィと別れ、誰にも見つからず、誰にも悟られずに宿に戻った俺達は、ナヴィについてどうするかを考えていた。

 といっても、討伐するとか物騒な事ではなく、この町の人々にどう説明をすれば、ナヴィには敵意が無いとわかってもらえるのか、である。



「って言っても、難しいよなぁ…」

「うん…流石にあの恐怖心は消えないと思うよ…」



 すでにいくつか案はあげているものの、どれもよそ者の俺達が言っても説得力に欠けるものばかりであった。

 どうせなら、俺達より信頼されている人から言われた方が信用されやす…


「あ、そっか」




「…と、いうわけでして」

「いや、どういうことなんだね…」



 翌日、俺達は市長ドガルのもとを訪れていた。

 昨日の夜に出歩いたことがバレて色々と言われるより、町の安心の方が重要だからだ。

 ちなみに、今日は出店をだしていなかったので直接屋敷に出向き、門番に「文化財であるお城に居座ってる吸血鬼さんのことでちょっとお話が。」と言ったらめちゃくちゃ慌ててたね。

 あまりの慌てようにメリアが少しこらえてたよ。



「別に夜に出歩くのは禁止しているわけではないからいいが…まさか自ら出会いに行くとは思わなかったぞ…」

「でも、彼女は貴方達が思ってる以上にフレンドリーでしたよ」

「うーむ…しかし、襲われたのも事実だし…」



 あ、ダメだ。完全に後ろ向きになってて向き合おうとしていない。

 どうしたものかと考えていると、横からちょんちょんとつつく者がいた。メリアだ。



「…ねぇ、ケイン」

「今少し考え事をしてるからちょっとま」

「なんか、飛んで、きてる。……こっちに」

「…え?」



 メリアに言われ、この部屋唯一の窓を覗いた。

 …確かに、だんだんと近づいてくる物体がある。というか、あれって…

 …って、まてまてまてまて!



「っ、伏せろ!」

「え?」



 俺の叫びで俺とメリアが伏せた瞬間、部屋の壁の一部がふっ飛んだ。

 咄嗟のことで反応が遅れたのか、市長は衝撃の余波で背後の壁に飛んでいった。幸い、怪我は無さそうだが。

 それよりも、この事態の犯人ってもしかしなくても…



「ケイン!メリア!昨日ぶりね!」

「やっぱりナヴィか…」



 噂をすればなんとやら。吸血鬼のナヴィが、俺達の目の前に現れた。

 服装は昨日とさほど変わらないものの、より可愛さを引き立たせるようなリボンやフリルが施されたものを着ているようだった。



「ふふっ、また会えて嬉しいわ」

「こっちも、また会えて嬉しいけど…どうしてここに?」

「元々は貴方達に会いに来たんだけど、ちょうど入れ違いになっちゃってね」

「会いに、来た…?」

「そうそう!でもちょうど良かったかもしれないわね……貴方達、いや、ケインに会えたらここにも来ようと思ってたし。と、いうわけで市長さん?」

「は、はひっ!?」



 ナヴィが突っ込んできてから「俺は空気」を貫いていたドガルさんが変な声をあげた。

 まぁ、襲われるかもしれないと毎日怯えてた相手に指名されたらそうなるよな…



「私、あの城出て、ケイン達についていくことにしたから」

「「…はい?」」


 …今なんて?


「あの城は貴方達の大切なものなんでしょ?だから返すわ。それと、私は誰も襲わないから、そんなに警戒しないで欲しいんだけども」

「は、はぁ…」

「ちょっと待って!?今俺達についてくるって言わなかった!?」

「言ったわ」

「どうして急に…?昨日は出ていかないって言ってたのに…」

「気が変わったのよ。それとも、私がついてくるのは嫌なの?それなら…」

「いや、あの…」



 なぜかグイグイと来るナヴィに引っ張られたかと思うと、俺の耳元でとんでもないことを言ってきた。



「それなら今ここで、メリアが吸血鬼(ヴァンパイア)である私よりも凶悪な怪物(メドゥーサ)だって言いふらしちゃうわよ?」

「なっ…!?」



 メリアもあまり表情には出ていないが、かなり驚いている。

 どうしてそれを…と言いかけたが、すぐに気付いた。

 ― 昨日の血か。

 昨日、ナヴィに頼まれて渡した俺とメリアの血。

 あれを調べれば、確かにメリアがメドゥーサであると分かるだろう。

 俺は、ナヴィに小声で問いかけた。



「…最初から、そのつもりで求めたのか?」

「いいえ、そんなことは無いわ。ただ、人間の血とは思えない程の魔力を、あの子の血から感じたのよ。だから調べたってだけ」

「なるほど…ね。じゃあついてくる、って話になったのは?」

「簡潔に言えば、興味がわいた、ね。それに、貴方達といた時間が楽しかった、ってのもあるわ」



 …お手上げだろう。

 メリアの秘密を知られたうえに、それを同行の許可の材料にされてしまわれては、どうしようもない。



「メリア、お前はいいか?」

「…うん、いいよ。大歓迎」

「…わかった。ナヴィ、これからよろしくな」

「えぇ、よろしくね」



 俺とナヴィは手を取り合い、握手をした。

 こうして半ば強引ながらも、新しい旅の仲間、ナヴィを迎えることになった。

 メリアも、少しばかり頬が緩んでいる。嬉しいんだろうな。

 本当に、行く先何が起こるか分かんないもんだな…




「…オレ、ここにいる意味あるのか…?」


 あ、市長の存在忘れてた。 

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