表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
187/414

183 Surprise Birthday その2

「あ、いた……」

「んもぅ、勝手に動かれたら困りますわ」

「あー……悪かった」

「ところで、ガラルはどうしたんですの?」

「あいつなら、今あそこにいる」



 俺を探していたらしいメリア達と合流し、全員である一点を見つめる。先ほどガラルが駆け込んでいった試着室である。

 駆け込んでからそれなりに時間は経っているのだが、一向に出てくる気配がなかった。

 ただ、それはどうやら二人を待っていた為だったようで、二人が来て少しした時、閉めていた試着室のカーテンが捲られた。



「待たせたな!」

「ガラル……お前……」

「うん、カッコいい……かも?」

「なんで疑問系なんですの……?まぁでも、似合ってますわよ」



 羽織る上着は白を主体とし、膝まで長く、所々に黒と金のラインが施されている。

 上着自体、前が止まらない仕様になっており、そこから見えるのは、健康的なガラルの腹筋。胸元は黒いバンドのような、胸元だけを隠すデザインのものを着用。

 下に履いているズボンは白く、腰回りと足首辺りを除けば少しブカブカで、黒と金のベルトによって固定されている。

 白、黒、金のみで構成されたその装いは、シンプルでありながら、ガラルらしい荒々しさを強く表していた。



「で?ご主人サマはどうなんだ?」

「あぁ、似合ってる」

「だろ!?だよな!これがいいよな!」

「……ガラル、分かったから落ち着け。あんまり騒ぐと、それ買う前に追い出されるぞ」

「あー、わりぃ」

「とりあえず、ガラルはそれでいいとして、二人の方はどうなんだ?」

「こっちも、いいの、あった」

「自慢の出来ですわ!」

「そうか。なら、楽しみにしておく。……ところで、ガラル」

「なんだ?」

「……下着はちゃんと着けてるよな?」

「安心しろって、ちゃんと履いてるよ。ったく、こまけぇなぁ」



 恥を忍んで聞いたが、ちゃんと着けているようで安心した。

 というのも、鬼人であるガラルには、服を着る以前に、下着を着ける習慣すらなかった。

 結局、ガラルの気に入る服が見つかるまでの間、胸元はサラシで隠し、下はショートパンツを履いて貰っていた。

 下着に関しては、メリア達に任せた。男が加わって良い内容ではない。


 ただ、どうしても心配だったので聞いておきたかっただけである。それ以外に意味はない。



「……まぁ、とりあえず目的は果たしたし、それを買ったら宿に戻……」

「そういや、そろそろメシの時間じゃねえか?どっかで食って行かねぇか?」

「それは良いですわね」

「……賛、成」

「……えっと?勝手に決められても困……」

「賛、成、多数」

「たまには、少人数も良いではないですの?」

「そういうこった、諦めてメシに行こうぜ?ご主人サマ」

「……はぁ、分かったよ」



 このまま何を言ったとしても、三人を動かせないと判断した俺は、素直に従うことにした。

 ……にしても、三人が口を合わせているような気もしたが……いや、気のせいか。



「……危なかったですわ」

「油断するなよ?ギリギリまで宿から引き剥がさねぇと、お粗末なもんになっちまうからな」

「……がんばろー」



 *



「イブ、そっちはどう?」

「ばっちりだよ!」

「なら、そっちの方もお願いするわ。レイラ、これをあそこに取り付けてくれるかしら?」

「ほい、任されたー!」

「ふぅ……こっちはなんとか終わりそうね。後は、三人がどれだけ時間を稼げるかだけど……」

「心配しなくても良いんじゃないかな?」

「うんうん、だいじょうぶだよ!」

「……だと良いんだけど」



 *



「……なぁ、一つ聞いても良いか?」

「なんだ?ご主人サマ?」

「……買い物だけの予定だったよな?どうして、こんな次々と予定が出来るんだ?」

「そりゃあ、休日?ってやつなんだから、楽しまなきゃ損ってやつだろ?」

「だとしても、俺を含めて四人だけでってのはおかしいだろ」



 あの後、食事を終えた俺達は、町を歩き回っては店に入り、店を出ては町を歩き回るを繰り返していた。

 ここまで露骨だと、流石に怪しさを感じ得ない。

 理由は分からないが、三人とも俺を宿から遠ざけているような感じがするのだ。



「……そもそも、服屋自体、宿からそこそこ距離がある場所にある建物だ。それ自体は別に怪しくは無いが、その後は露骨に宿から遠い店に出入りを繰り返していた。それはどうしてだ?」

「それは……」

「……三人とも、俺に何を隠してる?」

「……はぁ」

「……流石、に、限界」

「ですわね……」



 三人が口を揃える。やはり、何か隠し事があったようだ。



「それで、何を隠そうとしていたんだ?」

「それぁ、オレらの口からは言えねぇな」

「ですわね、黙秘しますわ」

「宿、に、戻、れば、分かる……ちょうど、迎え、も、来た、し」

「迎え?」

「私のことです。主様(マスター)

「うぉっ!?……って、ユアか……ん?なんでユアがここに?」

「今は黙秘させていただきます」

「お前もか……ちゃんと説明してくれるんだろうな?」

「はい。……メリア様、ウィル様、ガラル様。時間稼ぎ、お疲れ様でした」

「……ん」

「どういたしまして、ですわ」

「おぅ」

「……時間稼ぎって……」



 なにがなんだかさっぱり分からない。

 ただ、その答えは宿にあるようだ。

 ……正直、少しだけ怖くて……同じくらい、ワクワクしている。

ガラルの服装は「特効服」ってやつです。

あのデザイン、良いですよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ