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161 ソーサラーの塔 その1

 〝難易度変化型ダンジョン〟


 侵入者の強さに合わせて難易度が変わるという、かなり変わったダンジョンである。また、難易度が変わる関係上、内部空間は分かれているとされている。

 一般的にはあまり浸透していないダンジョンではあるが、その存在はいくつも確認されている。


 さて、このソーサラーの塔は、そんな難易度変化型ダンジョン。階層としては、いずれの難易度も五階層のみ。ただし、難易度が高ければ高いほど、内部構造が複雑化、モンスターが強化されていく。

 昨日は遠目で見るに留まったが、今日は挑戦が目的である。



「あ、みてみて!なにかうつってるよ!」

「あれは……件の中継映像か?」

「みたいね。しかも、かなり質のいい魔導具を使っているようね」



 少し視線を上げた先には、地図(マップ)と同じような感じで、空中に映像が映し出されていた。そこには、冒険者が剣を振るい、モンスターを薙ぎ倒していく姿が映っていた。あれが、情報にあった状況配信というものだろう。



「ぐるっと見てきたよー」

「どうだった?」

「スゴいね!全部違う映像だったよ。たまに切り替わっていたけど」

「切り替わる…ということは、時間によって映す場面が変わるということか?」



 などと考察し、暫く画面を見てみるが、特に変わる気配はなかった。しかし、レイラの言うこともある。ここは大人しく管理者に聞くのが一番だろう。

 俺達は予定通り、塔へ入るための転移門へと向かうことにした。


 ソーサラーの塔の回りには、全部で十二ヵ所の転移門が設置されている。その内十ヶ所は塔への入り口、もう二ヶ所は出口となっている。

 転移門は、ソーサラーの塔の内部へと繋がっている。どの門であっても、繋がる場所は変わらないというから驚きである。

 さて、俺達が挑む難易度はどれほどのものなのだろうか。



「お待たせしました。次の方々、どうぞ」

「あぁ」

「それではギルドカードをお見せください。パーティーの場合は、リーダーさんのものだけでいいですよ」

「これでいいか?」

「拝見します……はい、大丈夫ですよ。彼方達ですと、難易度Bまでが挑戦対象になりますが、どういたしますか?」

「なら、難易度Bで頼む」

「承りました。それでは、どうぞこちらに」



 受付にいた女性の後を追う。その道中、気になっていたことを聞いておくことにした。



「なぁ、あの中継だが、もしや高位のダンジョンに潜っているものは切り替わらない、とかいうことはないか?」

「よくお分かりになりましたね。その通りです。難易度の高いダンジョンへ挑む様は、冒険者にとってとてもいい衝撃になりますから」

「それは、四六時中か?」

「いいえ、流石にプライバシーは守っていますし、夜は全ての中継を停止しています」

「まぁ、当然か。ちなみに、中継をしてほしくない場合はどうなるんだ?」

「その場合は、予め申請していただければ、こちらでそのように配慮させていただきます。どうされますか?」

「中継自体はしてもらって構わない。ただ、常に中継しないようにできるか?」

「わかりました。中継の優先度を一段階下げておきます。と、着きました」



 ついに、転移門の前へとやって来た。いよいよ、塔への挑戦が始まるのだ。



「この門をくぐれば、ソーサラーの塔内部へとワープ致します。挑戦中に脱出したい場合は、各エリアに存在する脱出用のワープポータルをお使いください」

「わかった。ふぅ……よし、行くぞ!」

『おー!』



 一斉に返事を返してくるメリア達と共に、転移門をくぐる。その瞬間、捻れ曲がるようにして空間が歪み、それまで見えていた景色が一瞬で変化した。



「これが、ソーサラーの塔……」

「なんというか、不気味ね」



 転移した先は、部屋らしき場所。部屋は人工的なものか、自然にできたのかよく分からない壁に囲まれている。

 俺は、全員が一人も欠けることなく揃っていることを確認すると、これからの方針を説明した。



「…よし、まず目標を伝える。この塔を、()()()制覇することだ」

「二日!?いくらなんでも無謀すぎるんじゃないかしら?」

「二日、というのはあくまで目標だ。無理そうなら三日、四日とかけて制覇する」

「ですが、難易度Bのダンジョンなのですよね?わたしたちがいくら強いとしても、迷っては意味がないのでは…」

「あぁ、貴様はまだ知らなかったな。我らに迷うなどと言う言葉は存在しない」

「と、言いますと…?」

「こういうことだ。〝地図作成(マッピング)〟」



 俺は地図作成(マッピング)を発動する。すると、この部屋の情報がすぐに地図として書き込まれていく。



「な、なるほど…確かに、迷うことは無さそうですね…」

「まぁ、過信しすぎるのも良くないからな。あるだけマシ、とでも考えておいてくれ」

「わかりました」

「イブ、暗がりは頼むぞ」

「まかせて!」

「よし、攻略開始だ!」



 俺の掛け声に合わせ、俺達のソーサラーの塔攻略が始まる。

 陣形はいつも通り、俺とアリスが前衛、ナヴィとリザイアが中衛、メリア達が後衛という陣形。ユアと新しく加わったイルミスは、メリア達の護衛として、後衛に付かせた。

 暗い塔内部はイブが灯り(ライト)で照らし、入り組んだ道筋は俺が地図作成(マッピング)していく。

 索敵は、五感の優れたメリアの出番。的確な索敵で、常に有利を保って行動できる。



「にしても、いきなりゴブリンリーダーか…流石は難易度B、中々にハードだな」

「でも、これくらいなら、まだ余裕」

「でも、まだ一階よ。油断していたら足元をすくわれるわ」



 突如飛び出してきた()()()()()()()()()()()を軽く倒し、さらに奥へと進んでいく。

 道は、あの迷路のようになっていたメアの洞穴よりも複雑に入り組んでおり、このフロアだけでも冒険者を殺しに来ていた。

 だが、俺達には意味を為さない。地図作成(マッピング)というスキルがあるせいで、本来であれば方角すら失わせるであろう迷宮も、次々と書き記されていく。


 ハッキリ言おう。地図(マップ)は冒険者にとって最強のスキルである。どうして使われていないのか分からない程に有能すぎる。


 そんな訳で、動き回ったお陰か、地図にようやく次の階層へと向かう階段が映し出された。

 早速その場所へと向かった俺達を待ち受けていたのは…



「…またコイツか」

「うげぇ…」

「あいっかわらず、気持ち悪い見た目してるわねコイツ」



 いつぞやの悪夢。その見た目だけで、メリア達が噎せ返る始末。

 Cランクモンスターメジュラナが、そこに居座っていた。

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