表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/413

128 恋する少女

「どうしたんだ?こんな夜中に」

「あはは…なんだか寝付けなくて。…それに、もう少しだけ話がしたくて。…だめ、かな?」

「別にいいぞ。さ、入ってくれ」

「ありがと、ケイン」



俺は、アリスを部屋に招いた。どうやら、俺のせいで眠れなくなったようだからな。

アリスが部屋に入ると、そこにはベットに座ってぼぅっとしているメリアがいた。



「…アリス?」

「あれ、メリア?どうしてここに?」

「どうしてって、俺と同じ部屋だからだが?」

「えぇ!?」

「…そん、なに、驚、く、こと?」

「そりゃそうよ!だって、男子と女子が一緒の部屋にいるのよ!?そしたら、あんなことやこんなことを…」

「待て待て待て!?どこでそんな知識を…って違う!なにも無い!なにもしてないから!」

「あん、なこと…こんな、こと…?」

「メリアは気にしなくていいから!」



どこで覚えたのか、アリスが変なことを言い出した。

いや、分かっている。これが普通の反応であることくらいは。俺が慣れすぎただけなのだ。

だって仕方ないじゃないか。いくら野外での活動が主とはいえ、人数分のテントを張るのは苦である。

だから、俺は一人用のテントを使い、メリア達は共同で使える大きいテントを…と思っていたのに、その案はメリアによって無かったことにされた。なぜなら、毎回のように俺のテントに潜り込んでくるからである。


メドゥーサであるメリアは、殆ど寝なくても生活するには問題ない。ただし、それはあくまでもメドゥーサとしてのもの。メリアという存在には、その理屈は当てはまらない。

どうにもメリアは、俺と一緒にいるのが一番安心できるようで、眠る際も必ずといって良いほど俺の側にいたがる。

それが何度も続くとなれば、流石に諦めがつく。多少変な目で見られるのは覚悟で、俺とメリアは一緒の部屋を取ることにしているのだ。

まぁ、そんな事情をアリスが知っている訳ないのだが。



「まぁ、ケインも男の子だもんね。しょうがないよね。うんうん」

「…なんかそれで納得されても、良い気分にはならないぞ…?」

「ふふっ。とりあえず、メリアも一緒にお話しましょう。その方が楽しそうだし」



それから、俺達はたわいもない会話をした。どんな人と出会って、どんな依頼をこなして、どんな生活をしてきたか。

ただの会話なのに、物凄く濃密で、楽しい時間だった。



「そういえば、メリアってどこから来たのかもわかっていないの?」

「あぁ。本人もどうしてそこにいたのか、わかっていなかったしな」

「ふぅーん…メリアは?住んでた場所に帰りたいとは思わないの?」

「思わ、ない。…だって、もう、ない、し」

「え?」

「滅んだんだよ。メリアの住んでた村は」

「あっ…ごめん…」

「気に、しない、で、いい」



これは、俺も知らないことだ。そもそも、メリアはどこから来たのか。どうやってあの洞窟までたどり着いたのか。それが一切分からない。

分かっているのは、メリアがその村を滅ぼしたという事実だけ。

俺としては、メリアのことをきちんと理解したい。どんな過去を持っていようと、俺の大切な仲間なのだから。



「いつっ…」

「ん?メリア、どうした?」

「…なん、か、あた、まが、クラクラ、する…」

「大丈夫か?横になった方が…」

「…まって…アリ、ス、()()、なに…?」



メリアが指差した先。そこにあったのは、お香のようなものだった。それは、先ほどまで無かったものだ。



「これ?どこの部屋にも置いてあるものだよ。眠れない人用に置いてあるやつだよ?」

「…嘘。部屋、見たけ、ど、そん、なの、無かっ、た…!」

「どういうこ…と…!?」



メリアの発言に違和感を覚え、アリスを問いただそうとした瞬間、頭が揺れるように傷んだ。それと同時に、立ち眩みを起こし、その場に片膝をついてしまう。


それを見たアリスの顔が、にたりと歪む。



「やっと効いたみたいだね」

「アリス、なにを…!?」

「これ、強力な睡眠薬なの。わたしは魔導具使ってるから平気だけど、普通の人なら数分でコロッといっちゃうくらいのね。でも、それじゃあすぐにバレちゃうから、なるべく弱めてたんだけど…バレちゃったし、もういいよね?」

「っ、させな…!」

「遅い」

「「なっ…!?」」



メリアがアリスに飛びかかろうとするより早く、アリスが謎の液体をお香にぶちまける。

その瞬間、お香から大量の煙が一瞬で発生し、部屋を飲み込んだ。



「うぐっ、こ…れは…!」

「なに、これ…!」

「ふふふ…」



一瞬の出来事で、俺とメリアは思わず大量に煙を吸ってしまった。煙を吸った瞬間、体の力が一気に抜け落ち、掻き立てるような眠気が襲ってきた。

指すらまともに動かせず、意識もどんどん奪われていく。



「ふふふ、ケインがいけないんだよ?わたしがいるというのに…」

「アリ、ス…」



そこで、俺の意識は途絶えた。



「やっと…やっと出会えたわたしのケイン。もう絶対に、離さないから…!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ