表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/413

105 因縁からの招待状

「…ギルド長が俺を?」

「はい。なんでも、頼みたい事がある、と」

「頼み…指名依頼か?」

「内容は知らされていませんが、恐らくは」



 俺達が都市に来てから四日がたった。

 俺達は溜まっていた高ランクの依頼を次々とこなしていた。そのせいあって、十分どころか過剰なくらいの路銀を稼ぐことができた。ギルド側も、危険な依頼が減った事に安堵している。


 今日もCランクの依頼を二つ達成し、ギルドへ帰還したのだが、どうやらギルド長が俺達を呼んでいるらしい。

 このタイミングで呼ぶ、ということは、ほぼ間違いなく俺を指名したいという事だろう。

 メリア達は、俺に任せる、という感じだ。



「分かった。話を聞こう」

「では連絡を通しておきますので。それとも、案内が必要ですか?」

「いや、何度も呼ばれてるからな。必要ない」

「分かりました」



 流石に何度も足を運べば、どこにあるかは記憶する。それが分かっているのか、今回は案内無しで向かってくれと言われた。

 俺達は階段を登り、ギルド長室へ向かう。

 ギルド長の頼みとは、一体何なのだろうか。

 そんな考えの中、俺達は部屋の前にやって来た。

 扉をノックすると、中から声が帰ってくる。



「ケインか?入ってきてくれ」

「あぁ、お邪魔する」



 中にはすでに席についていたギルド長―ユリスティナが居た。その目が、俺を心配している見えたのは気のせいだろうか。

 俺は対面に座る。メリア達は邪魔にならないよう、今回は座らないようだ。



「さて、ケイン。君なら察しがついているとは思うが、君に頼みたい依頼がある」

「それは?」

「まぁ、見てもらった方が早い」



 ユリスティナが一枚の紙を差し出す。俺はそれを受け取り、内容を読んでいく。


 だが、全てを読む事はしなかった。


 書いてある文字が汚かった訳ではない。内容が意味不明だった訳でもない。

 最後に書かれていた、この依頼を出した人物。

 その名前を、見てしまったからである。


 俺は思わずその依頼用紙をテーブルに叩きつけ、ユリスティナを睨み付ける。その行動に、メリア達が驚きを露にする。

 一方ユリスティナは、そうなることが分かっていたかのように平然としている。



「…おい、分かってるのか?」

「あぁ、分かっている。分かっているからこそ、君に頼みたい」

「…どうしてだ?この程度の依頼なら、他の奴らでも問題ないハズだ」

「それは私も理解している」

「ならどうしてっ!」

「ケ、ケイン!落ち着きなさい!」

「いつもの貴方らしく無いですわよ!?」



 前に乗り出そうとする俺を、真後ろに居たナヴィとウィルが押さえてくる。

 立つことが叶わず、俺は再びユリスティナを睨み付け、無意識に歯ぎしりをしていた。

 それすらもユリスティナは分かっていたようで、落ち着いた口調で話しかけてくる。



「…ケイン、君には感謝しているんだ。ユアの過去を受け入れてくれたこと。仲間として、ユアを迎え入れてくれたこと」

「師匠…」

「他の子達の事も聞いたよ。忘れられない過去がある子も、複雑な事情を持った子も居る。けれど、そんな彼女達を救ったのは、紛れもなく君だ」

「………」

「…本当は、もう気がついて居るんだろう?私が、この依頼を君に頼みたい理由が」



 実のところ、最初に見せられた時から薄々気がついていた。

 この依頼は…いや、この()()()()の依頼は、俺が意図して受けてこなかった依頼だからだ。

 その事とその理由は、一部のギルド職員しか知らない。その内の一人は勿論、ギルド長(ユリスティナ)だ。



「ケイン、過去と向き合うんだ。今の君は一人じゃない。君が救って、君を信頼している仲間がいる」

「………」



 その言葉を聞いて、俺の体から力が抜けていくのを感じる。

 …本当なら、この依頼は受けたくない。受けようとも思わない。


 だが、今の俺にはメリア達がいる。

 メリア達がいるから、俺は安心できる。メリア達がいたから、今の俺がある。

 今この一瞬、忘れていたその事を改めて実感させられた俺は、断る気など失せていた。



「…一つだけ、条件がある。これが飲めないなら、俺はこの依頼を受けない」

「条件?内容にもよるけど、一体何を要求するんだい?」

「それは――――」




「…なるほど……良いだろう。その条件、飲もうじゃないか」

「……あぁ、頼む」



 俺は、テーブルに叩き付けたままの依頼を改めて見た。

 くしゃくしゃになったその依頼書には、こう書かれていた。



―――――



 森の調査及びモンスターの討伐


 先日から、近くの森で領民がモンスターに襲われる被害があった。

 生還者によれば、Cランク相当のモンスターが何体もいたらしい。

 そこで、森に入って調査する、またはモンスターを討伐してくれる冒険者を募集する。

 迅速な協力を頼む。


 エジルタ連合国 イルベスターク領次期領主


 グレン・イルベスターク

これにて十章完結


次回十一章、ケインの過去とは…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ