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プロローグ ~死闘の果てに~
―宵の闇よりも暗きもの
星の瞬きさえも届かぬ深淵に住まいし破滅の王
我が声を聞き届けよ
我が望みを聞き届けよ
我が魔力を贄としその力を現し世へと誘わん
目覚めよ
刻は満ちた
境界の歪みより我が世界へと汝の力を呼び覚まさん
時の流れより真の名を失った哀れな魔王よ
我はここに誓わん
闇より出ずりしその力
我が望むは混沌の夜明け
いざ、我が元へ参れ!
龍殺の咆哮ドラゴニック・ブレス―
手には熱い躍動。全身の魔力が体から抜けるような感覚。
一瞬目の前に映る世界がグニャっと渦を巻くような錯覚に襲われる。
これはいつものこと。魔力を大量に消費すると周囲の魔素が濃くなり、人間にはあまりいい影響がでない。
魔力に耐性がない人間、動物はモンスター化する場合もあるようだ。
目の前に鎮座する巨大なドラゴンをめがけて、竜殺しの魔法が俺の手から放たれる。
世界でも使用できる人間は限られると言われる程の高度な魔法だ。
俺は、その瞬間にこの世に災厄をもたらすと恐れられていたドラゴンを葬ったはずだった。
これで、世界は救われる。
俺はそれを信じて疑らなかった。