表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真・桃太郎物語  作者: にゃー
4/14

#03

 ### 03



 鬼退治の旅に出て二日目のこと。

「す、すみません。な、何か食べるものを……」

 沿岸部へ出る一本道を歩いていたところ、突然道のど真ん中に倒れ込んでいる娘を発見。どうやら、立ち上がることができないほどの空腹に襲われているようだ。

「だ、大丈夫か!?」

 当然ほうってはおけない桃太郎。道を急いではいたが、目の前で飢え死にしそうなものを見過ごしてはいられない。

「そうだ!」

 おばあさんからもらったきびだんごがあったのを思い出す、急いで一個取り出すと、倒れ込んでいる娘に渡してやる。

「おぉ、しんふぇつなおふぁた!かたじふぇない!」

 行儀など気にしてもいられぬようで、食べながらお礼を言う娘。

「水筒の水は……」

「おぉ、それも頂きます!」

 そう言うと、娘は桃太郎の手から水筒をもぎ取り行儀悪く一気飲みする。

「ぷはー!おかげで生き返りました、ありがたやありがたや!」

 急に元気になった娘は、額を地に擦りつけんばかりに何度もお礼を言う。

「お礼は良いのだ、しかしお主はなぜこのようなところに倒れていたのだ?」

「えぇ。話せば長くなるのですが……」


 聞けばこの娘は、先日鬼に襲われた沿岸部の住人の一人で名前を「雉」というらしい。彼女は伊賀の忍びの里の抜け忍で、追っ手から逃れこの島に逃げ込んできた。沿岸の住民たちは彼女に優しくしてくれ、いっときは平穏な時を過ごしていたが、鬼は突然襲ってきたという。

「あいつらは夜更けにやってきました。抵抗するものはころされ、他のものは連れて行かれ、村の物資も奪われました」

「主も戦ったのか?」

「もちろんです!だけど多勢に無勢で……」

 雉はそこまで話すと、目に涙を浮かべながら悔しそうに唇を噛み締める。

「追い詰められた私は、連れて行かれる村のものたちを置いてここまで逃げてきたんです。卑怯者です……」

「それは、さぞ無念だったことだろうな」

 桃太郎は、無念さを噛み締めるかのように顔を俯ける雉を前に、次の言葉を言うか言うまいか迷ったが、やはりいうことにした。

「その無念、晴らしては見ないか?」

「……?」

「申し遅れた。俺は新右衛門が師範を務める道場の門下生で、名を桃太郎という。今鬼を退治しに向かう途中だ」

「鬼を退治に……!」

 その言葉を聞いた途端に雉の目が輝く。

「ぜひ連れて行ってください!今度はあの時のような不覚は取りません!村のものたちの敵を討ちたいです!」

「付いてきてくだされるか!俺も、鬼と戦ったことのあるものがいると心強い、頼むぞ!雉!」

「はい!」


 心強い味方ができた。抜け忍の雉、仲間になる。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ