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真・桃太郎物語  作者: にゃー
12/14

#11

 今からおよそ五〇〇年近く前、酒呑童子という最悪の鬼が都の周りを跋扈していた。

 その目にあまる横暴さに、朝廷の命で源頼光率いる頼光四天王が立ち上がり、酒呑童子とその一派をだまし討ちにすることで無事に鬼退治に成功した。

 だが、酒呑童子は自らに勝機がないことに気がついたとき自らの伴侶であり、最も優秀な部下でもあった女鬼、茨木童子を逃がし、頼光に復讐をすることを頼むのであった……。




### 11







「ふっ……カッコつけるのはいいけれどそもそも私と戦うことなど出来るのかい?桃太郎」

 茨木童子の言葉の真意は考えるまもなくすぐに判明する。先ほど、桃太郎のみぞを一発で仕留めたじい様が茨木童子と桃太郎の間に割り込んできたからだ。

「まずはわしが相手になろう……、といってもこの活力あふれるわしに手こずってるようじゃこの鬼になど到底叶うはずもないが……」

 不敵な笑いを見せるじい様。確かにあの一撃はまるで腹の奥に響くかのようでいまだにさすると痛む。あまりに近くにいた強敵、どう対処するかと桃太郎が考えていると……。

「戦いとは時の運、強きものが勝負を制するものではあらじ……、とも言うでござろう?じい殿」

 太刀を握り、悠然と桃太郎の前に出てくるのは、犬であった。どうでもいいがやはり犬の立ち振る舞いというのは余裕というか気持ちの平静さが滲み出るかのようである。船の上とではつくづく別人だ。

「私も、協力します!みんなで力を合わせれば絶対勝てますよ、ね!」

 横から雉も口を挟んでくる。相変わらず距離が近いのはこの女の癖であろうか。

「みな……俺が鬼の子だと知ってもまだ助けてくれるというのか?」

 桃太郎は頼もしげに自分の前に立つ仲間を前にしばし言葉を失ったが、なんとかそれだけ尋ねることができた。

「あったりまえだろう!?別にあんたが鬼か仏か知らねぇが……俺たちはもうともに戦った戦友だろが!」

「ふふ、海猿と同意見というのはどうにも認めたくはないのだがな、されどそれがしにとってももう鬼だとかそういうことにこだわってはいない」

「そうですよ!飢えて死にそうだった私に食べ物をくれた桃さんはいい人です!大好きです!」

「……かたじけない。みんなありがとう」

 しかしあまり長々と話しているわけにも行かない。たったの二人とは言え、あのふたりはこれまでの鬼とは明らかに違う。

「猿と犬はジジ様を頼む!俺と雉はあの女鬼を……」

「おうよ!」

「御意」

「分かりました!」

 素早く指示を出すと、三人もこれまでどおり桃太郎の指示通りに迅速に二手に分かれる。まるで風の如し、だ。

「まずは戦場にやってきたことを親として褒めてあげないとねぇ……」

 桃太郎と雉の目の前に立ちはだかるのは伝説の鬼、茨木童子本人である。正直少し足が震えるというものだ。

「だけれど、ここに来たというのはわざわざ死にに来たのと同義だということを思い知らせてるのも親の務めかもしれないねぇ」

「へ、へっん!あなたの務めはせいぜいここで倒れて日の本の平和に寄与することだけですよ!」

 なんとか強がって鎖鎌の分銅をびゅんびゅん振り回して見せる雉。射程に入ればおそらくいつでも茨木童子の頭にこの分銅をぶつけることができるに違いない。いかに鬼でも急所を捉えさえすれば勝てるのは先ほどの巨人鬼が証明している。

 そう頭ではわかっているのだが、茨木童子にはまるで周りにあるものすべてを畏怖させるような威圧感をまとっているようで、こちらからはとても近づけやしないのだ。

「ずいぶん大きく出るのねぇ。じゃ、少し小手調べと行こうかぁ?ん?」

 そう言うと、あっという暇もない。茨木童子は意外にも一直線に雉に向かってきた、特筆すべきはその速度だ。

 投げようと構えていた分銅すら間に合わず、茨木童子は手の中で光る短刀を素早く雉に突き出したのだ。

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