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転生査問委員会の日常  作者: タイロン
3/4

転生、三つほどいかがですか?

今日はLINKED HORIZONと2本立て(笑)

 「だー!よっしゃー!明日から土日じゃー!」

 書類を整理し終え、ペルセポネは大きく伸びをしながら叫んだ。閻魔がうるせーと叫び返すが知ったことではない。

 「あ、お疲れっすペルセポネさん。今日も盛り上がってますねぇ」

 「んぁ?あ、白虎クンじゃん!ねーねーこれから飲みに行こーよー」

 まだ仕事が終わっただけなのに、想像だけでベロンベロンに酔っているみたいな見た目美人中身残念な先輩を呆れた目で眺める白虎だった。

 「あー、いえオレこれから他の連中と行くんでまた今度で・・・」

 「あー待ってよー!・・・ちっツレネー若者めー」

 「まあまあ、ペルセポネ先輩、約束あったんなら仕方ないですって。それに今日は女子会じゃないですか」

 それもそうだ。いくら社内随一のイケメンでも女子会には加えられない。

 「そうだねー。んじゃ行こっかー」

 ちなみに彼女が仕切っているが、他の参加メンバーはみんな仕事を終わらせていてペルセポネが終わるのを今か今かと待っていた状態だった。



 「・・・・・・ん、ぐぇ。頭痛い」

 外の神光(おひさまのひかり)がチカッとカーテンから漏れてペルセポネは目が覚めた。

 「あっれ、家じゃん?なんで?」

 さわり慣れた畳の感覚すら感じる薄い敷き布団に倒れ込むようにして寝ている自分に気がつく。それから、酔っ払って帰ってきてそのまま寝たんだな、と自分で納得する。

 「うぅ鼻が痛い。というか体の前半分血が止まっちゃってたじゃん」

 ともかく超熟睡だったようだ。が、二日酔いで頭がガンガンするのでもうちょっと寝ることにした。

 「・・・気持ち悪い。吐き気で寝てもいられないとか、さすがに・・・・・・」

 それにしても全く昨日の記憶がない。とにかくグイグイやっていた気はしたのだがイザナミ後輩やその他もろもろと何を喋ったのかとかサッパリである。これはいかん。

 「水飲まないとー・・・っとと」

 ふらつきながら台所に向かいグラスに水道水を汲んで飲んで・・・

 「ゴクゴク・・・ウッ!?」

 あ、やらかした。一気に飲みすぎた。こ、これは!?

 トイレに駆け込んで難を逃れる。キラキラエフェクトはもちろん忘れない。

 「んぁー、寝よ寝よ。明日は日曜日。土曜日をつぶしてもなんとかなるのよー」

 そう言い訳しながらペルセポネは布団に横になった。少し落ち着いたので次第に眠気が襲ってきて、意識が落ちた。



 外でフェニックスがチュンチュンと鳴いている。さえずりに目を覚ましたペルセポネは1回伸びをしてからスタスタと台所に向かい、適当な朝食を済ませる。

 「よし、遊びに行くぞー!レッツサンデー!」

 散らかった床からレジャー雑誌を掘り出してぱらぱらとめくると、丁度良さげな観光地が見つかったので細かく見る。

 「ふむふむ、黄泉の国かぁ。たしかあの子(イザナミ)の田舎だったっけ?この感じ冥界と似てて一度行きたいと思ってたのよねー」

 さっそく適当に荷物を済ませてバッグを背負ってから指ぱっちんをする。

「てれぽーと!」

 

さっきまで聞こえていたフェニックスの鳴き声が聞こえなくなる。大きく息を吸って、それから目を開ける。

 「うわー、いい眺めー・・・でもないな。飛んでくる場所間違ったんじゃね?」

期待に胸を膨らませて開いたペルセポネの目に映ったのは彼女が期待していたような観光スポットではなくなんか普通にも程があるだろうっていうくらい普通な場所だった。足下を見ると茅葺きの屋根だ。

 「イマドキこんなとこに住んでるやつもいるのねー。さて、ここはどこなんでしょーか?」

 屋根から降りてきた(見てくれだけなら)金髪の超美人に地上を闊歩していた黄泉国の人々がぎょっとした顔をしていたが彼女は気にしない。というか周りのことは気にしないという考え方が染みつきすぎて気にすることがなくなっていた。

 「め、女神様じゃぁ」

 「お、お美しい方じゃぁ」

 「どこからいらっしゃったんじゃぁ」

 「さすがは女神様じゃぁ」

 しかし、さすがにこうも周りで騒がれてそれでも気が付かないわけではなく、ペルセポネはにこやか(業務用)スマイルで騒ぐおじいさん方に手を振った。

 「そうです私が美しい女神です♪(じゃぁじゃぁうっさいんだよ、もー。こちとら今から観光しようってんだから邪魔しないでよね?ほらほら、女神スマイルで満足したら帰りなさい、しっし)」

 手に持った端末のGPSで現在位置を特定して、ペルセポネは固まった。

 「ここ、どこ?」

 いや、別に現在位置が分からなかったとかではなく。普通にツッコむようにそう言いたかった。

 「目的地との距離がめちゃ離れてんですけど。た、助けてー!テレポートとか1日2回が限界なんですけど!今やったら帰れなくなるんですけど!?」

 「わ、儂に言われても困るですじゃぁ!?」

 今さっき早く帰ればいいとさえ思っていた老人にすがりついてペルセポネは喚いていた。まったくもっていい迷惑である。

 「ここ!ここに行きたいんです!なんか交通手段ないんですか!?」

 「うぁぁ。ここは田舎ですじゃぁ」

 「見たら分か・・・じゃなくて、そうなんですか。それで、なんかないんですか?」

 「ないですじゃぁ」

 「じゃぁぁぁぁ!もう、いやぁぁ!」

 老人を放り出してペルセポネは走り出した。


 老人の仲間のじいさんばあさんが彼の下に駆け寄ってきた。

 「大丈夫ですかいな」

 しかし投げられた老人はかえって幸せそうな顔をしていた。

 「心どころか体もぴょんぴょんするんじゃぁ・・・・・・。ガクッ」

 『じいさーん!?』

 投げられておかしくなったのかもしれない。大丈夫、ここは黄泉の国なので死にません。



 神の力を振りしぼって走っていたペルセポネはなにか気になるものを見つけた。

 「これは・・・バス停ねっ!?時刻表は・・・」

 持っている時計と照らし合わせながら時刻表を見る。

 「ふむふむ今は10時、次のバスは・・・10時14分!やったわ!ざまぁ見なさいご老獪(ろうかい)、バスがあるじゃないの!」

 美しい心などとうに冥界に置いてきたペルセポネは両手を挙げて万歳三唱しながら叫んでいた。

 が。

 時刻は10時15分。

 「ちょっ、え?来ないんですけど。い、いやまだね?あと数分もすれば来るわよね。遅れてるだけなのよね?」

 3分後。

 「わ、私は分かっているわ。遅れているのね!?」

 さらに2分。

 「なんで来ないのよぉ!おっかしーよこれー!」

 してもって5分後。

 「まだだ、まだ終わらんよ・・・!」

 もういい加減に3分後。

 「ぎゃーす!ど、どうしてバスがこんなにも来ないの!?事故、まさか事故なの?」

 あまりにも来ないバスにしびれを切らしてペルセポネは端末でバス会社に電話をかけた。

 「ちょっ、バス全然来ないんですけどっ!」

 小さな機械のスピーカーの向こうからは明らかに困惑した気の弱そうな男の声が聞こえてくる。

 「え、えーとお客様のいらっしゃるバス停の名前をお教えくださいますでしょうか・・・?」

 「名前?えーっと黄泉の4丁目バス停、ですけど?」

 「はい。少々お待ちください」

 そう言って男は電話を待機モードにした。なんかいつも聴いているバス会社のCMソングが流れ出す。ちょっとして歌が止んだ。

 「あ、どうでしたかっ!?」

 「あのー申し上げにくいんですが・・・」

 ペルセポネは早くしろよと心のなかで舌打ちした。のだが男が小さく息をのんだ声が聞こえた。

 「(やば、普通に舌打ちしてた!?)お、おほほ。今のは小鳥が近くを飛んでいたので戯れていただけですから、気になさらないでくださいねー?」

 「は、はぁ」

 それで、どうだったのだ?とペルセポネが質問し直すと、また男が申し訳なさそうな声になった。

 「そのー、黄泉の4丁目バス停は3年ほど前に過疎化で廃止されてまして・・・」

 「なんですってぇ!?そ、そんな・・・」

 「ひぃっ!す、すみません本当に!でも廃止されてるんです!」


 電話を切ってペルセポネはトボトボと歩き出した。

 「トホホ。もうテレポートとかいう正確性ゼロの移動は絶対やんないわ」

 そう言って帰るためにとりあえず家の近くをイメージして指ぱっちんをしようとしていたところ、電話が鳴った。

 「(もしかしてさっきのバス会社?バス実はありましたドッキリ大成功!?)はい、もしもし?」

 内心ワクワクしながらペルセポネは端末を耳に当てた。すると。


 「ゴルァァァっ!!」

 「みぎゃぁぁー!?」

 

 怒号が飛んできた。

 「か、課長?どうなさったんですか?」

 「どうもこうもあるか!ついに会社サボろうってか!?確かにな、お前が居なくても対して変わらんがそれでも人出は多い方が良いんだよ!起きてるんならさっさと支度してこい!!」

 ・・・・・・はて?なにを言っているんだこのオッサンは。今日は日曜日じゃないの。

 「えーと、今日って何曜日、でしたっけ?日曜日ですよね・・・?」

 「月曜日だ」

 「・・・・・・もう一度お願いします」

 「月曜日だ」

 「大事なことなのでもう一度お願いします」

 「月曜日だ」

 やばい。ターンペイル。汗がやばい。

 通りすがりのおじいさんの肩を掴んで引き留める。

 「すみません、今日って何曜日ですか?」

 「ふむむ、月曜日じゃぁ」

 「なんでじゃぁ!?」

 最後に、いや最期にもう一度閻魔係長に聞きなおす。

 「あのーもう一回・・・」

 「しつこい!さっさと来い!」

 「ひゃいぃっ!?」

 ペルセポネは大慌てで指ぱっちんをしてテレポートした。

ことの顛末(てんまつ)としては、実はペルセポネが二日酔いだと思っていたのが本当は三日酔いだった、といったところである。彼女は土曜日を布団に俯せになったまま24時間目も覚ますこともなく過ごしていたのだった。



 「係長、ペルセポネ先輩起きてました?」

 イザナミが閻魔に質問する。

 「起きてたよ。むしろ寝ていれば良かったものを。・・・永遠に」

 ぼそっととんでもないことを言う閻魔。完全にプッツンしていた。



 「あれ、ここどこ?」

 ちなみにペルセポネは焦ってテレポートした結果、家とも会社とは全く違うところ(ついでに端末の電波圏外)にいた。今日は無断欠勤ということで。




たまに思い出して書いてるだけなのにこの文字数。誤字脱字のチェックが面倒臭い。

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