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転生査問委員会の日常  作者: タイロン
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転生、お二ついかがですか?

なんかブックマークしてくれていた方が一人減ってしまっていたので焦って投稿。ペルセポネちゃん、頑張れ!

 「ペルセポネ先輩ー、次お願いしまーす!」

 イザナミ後輩の声が聞こえた。

 「ちょっ、今1人終わったところなんだけど!?報告してからでいい!?」

 「そんなことしてたら先輩が面談室はいる前にお客さん来ちゃいますよ!」

 現在、転生査問委員会(株)はてんやわんやだ。なぜかっていうと、簡単な話で、

 「ったく、なにが魔王よ!普段ふんぞり返ってるだけでお仕事完了なのにたまの催しみたいに世界の人口半分くらい殺しよるからに!!」

 そう、とある剣と魔法の世界で魔王の定期世界征服があった。魔王として生まれた者はその仕事としてとりあえず10年に1回くらいは世界征服をしなければならない。そうなると大概その世界の命ががっつり減るので魂もふわふわとこちらへやってくる。しからばすなわち、転生査問委員会のお仕事も増えるわけである。

 「はいはい、じゃあ入りまーす」

 3番と書かれた転生面談室にドアをガチャリと開けて入るペルセポネ。

 「はぁ。まったく、せめて魔王のいる世界そのものが減っちゃえば世界征服レッツパーリーも減るのになぁ・・・」

 真っ白な部屋の中に1つだけある椅子に腰掛けてペルセポネは溜息をついた。魔王と勇者が戦っている世界はたしか100個近くあった気がする。1カ所だけでこのてんてこ舞いなのだ、ホントやめて欲しい。こうなったら送り出す勇者にこっそりチートでもつけてみようかな、なんて考えていると、部屋の中央にぼうっと白い光が現れて、その中から・・・その中、あれ?

 「・・・お客さん?」

 いつもならこの光の中からお客さんの魂が肉体を持って出てくるはずなのだが、なにもいないようにしか見えない。慌ててペルセポネは持ち込んだ手帳を見る。この手帳は部屋にやってきた人物のプロフィールや経歴が自動表示される、俗に言う『チョウジセダイガタテチョウ』なのだ!ということで、見てみると確かに情報は出ていた。

 「ふむふむ?えーっと名前は『イッスンボウシ』さん?イッスンボウシ、イッスンボウシ・・・あ、一寸法師!」

 名前に心当たりがあってなんとなくこの事態の理由も分かった。光が発生したところの床をまじまじと見つめる。すると・・・。見えん。仕方ない、とペルセポネは拡大眼鏡みたいなものをポケットから出して2倍、3倍、と倍率を上げていく。

 「59倍・・・あ、いた。てかちっちゃ!ちっちゃいんですけど!」

 なるほどこれは肉眼では見えないわけである。とにかく、やっと見つけた彼(?)を間違ってもつぶさないようにペルセポネは近づいていく。というか眼鏡の倍率が高すぎて距離感がよく分からない。ソローリと慎重に近寄ってやっと声をかけた。

 「一寸法師さん、目が覚めましたか?」

 お仕事ヴォイスを出すとあまりにいい声なので自分で自分に陶酔しそうになる。頭の中でもう一人の自分がおっとイカンイカンとか言っている。

 「・・・!・・・?」

 一寸法師がなにか言っている。が

 「(声ちっちゃ!声も超ちっさいんですけど!)え、えーっと少し待っていてくださいね?」

 「・・・」

 またなにか言っているがやっぱり聞こえない。ペルセポネはおもむろにポケットからでっかい補聴器のような物を取り出す。よく仕事仲間からは「それもしかして4次元ポケットなんじゃないの?」とか言われるほどの便利ポケットなのだが、別にそう言われようともこれはれっきとした3次元ポケットである。仕事の成果如何(いかん)はともかくとして備えの方は超一流なのだ。耳にそのでっかい補聴器を取り付けてから、もう一度話を仕切り直す。

 「申し訳ありませんでした、もう一度お願いしますね?」

 『は、はい!あの、私はなぜこのようなところにいるのでしょうか?先ほどまで鬼の頭領と決戦をしていて体内に入って止めを刺そうとしていたところだったはずなのですが?』

 うん、聞こえる聞こえる。

 「はい、確かにそのようですね。しかし、あなたはそこで命を落としました。あなたはもうお亡くなりになったのです」

 手帳で死因を確認しながら答える。

 「あなたは鬼の口から体内に入ろうとしたところ、鬼のゲップによって吹き飛ばされそのまま息絶えたのです・・・」

 よく今までやってこれたなこいつ。普通旅立つより前に育ててくれたおじいさんとかおばあさんに踏まれて死ぬレベルだろこれ。なにが回り回って最終決戦みたいのまでこぎ着けたのか、ペルセポネには彼の経歴をどれだけ読み返してもさっぱり分からなかった。

 『そうか、私は死んだのですか。はは、情けない話です』

 悲しそうな顔をする一寸法師。しかしそのすぐ後には顔を上げて、質問をしてきた。

 『は!?そういえば姫は、姫はどうなったのですか!無事ですか!?』

 ふむ、経歴書には国の研究所で研究熱心なリケジョのお姫様が顕微鏡を覗いていたところに彼が迷い込んでそこから交流があったという旨のことが書いてある。

 「ええ、少し待っていてください。・・・(えっと、○○世界の△△姫の安否・・・)」

 手帳で一寸法師の視界を遮りながら手に持ったデバイスで検索をかける。

 「・・・ぁ」

 『ど、どうなされたのですか!?』

 「えーっと、その・・・」

 『はやく、はやく教えてください!』

 「お亡くなりになられたようです・・・・・・」

 『Oh Noooooooooo!!』

 突然英語調で叫んで一寸法師は泡を吹いて倒れた。ちなみに△△姫は隣の面談室でお取り込み中のようである。

 「あの、お気を確かに!?彼女もまた新しい生を謳歌しようと懸命に考えているはずです!さぁ、あなたも次の人生を考えてみましょう!」

 このままだと次のお客様がどんどんつかえるだけなので無理矢理にでも仕事を進めなければならない。転生する世界のカタログを見せて彼女は話を続けた。

 「さぁ、あなたの望む世界へ生まれ変わりましょう!今度こそ諸悪の根源を倒し、大切な女性を守りたいのであれば、この××世界がおすすめです!」

 『すみません、私には文字が大きすぎて読めないのです』

 あ、すみません。ペルセポネはまた何かの機械を取り出して急いで縮小をかける。なんのためにミクロレベルまで縮小可能なのかと思っていたが意外と役に立つときが来た。

 「これでいかがですか?」

 さぁ、転生してください、するんだ、早く!

 『あ、そういうことではなく、私はこれまで一度も文字を読めなかったので読み方を知らないのです。済みませんがその××世界とやらについて教えてはくれませんか?』

 なるほど。確かにこいつに合わせたサイズの文字が書ける輩などいるはずもない。仕方なくペルセポネはその世界のカタログに書いてある内容をすべて読み上げようとして、あることを思いついた。

 「(あれ?これいいとこばっか挙げて士気高めてあげたら行ってくれるんじゃね?)」

 『ど、どうなされたのですか!?急ににやつき始めて』

 「いえなんでも。この世界があまりに良い世界なので想像を馳せていたところでした。ほほほ」

 『は、はぁ・・・?』

 一寸法師が怪訝そうな顔をしたがまだ信用はしてくれているようだ。仕掛けるなら今しかない。ここから3分ほどかけて(次のお客さんもいるから長々とは言えないので)ペルセポネは全力マシンガントークで××世界のいいところだけを羅列した。

 『な、なるほど!それは素晴らしいですね!よーし、姫様見ていてください、次の人生こそは必ず大義を果たして見せます!!』

 そういって彼の体がぼうっと光り出したのでペルセポネは転生の魔法を唱え始めた。彼はうまく乗せられたとはつゆ知らずこちらへの感謝と来世への期待だけを顔に表して健やかな顔になっている。

 「それでは、あなたの新たなる命に祝福のあらんことを!!」

 そういって彼女は満面の笑みで手を振りながら光となって立ち上っていく一寸法師を見送った。



 「おい!ペルセポネ!!なんだこりゃぁ!ちょっとこっち来い!」

 閻魔係長の大声が聞こえる。仕事も終わって最後まで小出しに見せることのできなかった仕事の成果を結局全部ためてから一気に提出してしまったが、そんなことは気にせず飲みに行こうと思っていた矢先のことだった。

 「えー、なんですか」

 「先輩、早く行った方がいいですよぅ」

 「ちぇ、もう・・・。はーい、今行きます!」

 不機嫌そうな声を出してから、対上司用ヴォイスで返事をした。

 「おい、ペルセポネ。これはいったいどういうことだ?」

 「と、いいますと?」

 ふむ、心当たりがない。今日はそこそこいい成果が出ていたはずなのだが。

 「今日お前、あの××世界に一人送ったらしいじゃないか!」

 怒られるのかと思ったら急に閻魔が二カッとしてペルセポネの背中を叩き始めた。

 「すごいじゃないか!あの一番魂不足のひどい地獄みたいな世界に転生者を出すなんて!どうしちゃったんだよ今日は!」

 褒めるのはいいんですけど早く飲みに行きたいんです、もういいですか?といらだつペルセポネ。集中力が散漫になりながら上司の言葉を流し続ける。

 「で、どうやって説得したんだ!ぜひ参考にしたいのだが」

 なんだそんなことか。それなら・・・ 

 「文字が読めないやつにいいところだけ列挙してやって行かせちゃいま・・・・・・あ」

 ついついその場の離れたさに口が軽くなっていた。慌てて口を押さえたがもう遅かった。

 「おい」

 さっきまでの自分を賞賛する声色はどこにもなかった。

 「ひゃいっ!?」

 「今のどういうことだ?」

 「そ、そそそそそそれはですですね?」

 言い訳に走ろうと思ったのだが。直後、閻魔の爆弾のような怒声が広い事務所中に響き渡った。

 「ぶわっかむぉおおおおん!!」









きっとこの後彼女は同僚のみんなと飲み会に行くことも叶わず反省文を書かされるのでしょう。転生査問委員会はフェアがモットーです。

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