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幕間

 薄暗い明かりが照らす祠らしき場所に、一人の女の子と女子高校生の姿があった。一人は浴衣姿の女の子、もう一人は制服姿の女子高生だ。女子高生は、自分の身に何が起きたのか、それを確かめるように周囲を見渡していた。

 どうやら、その女の子が人間では無いということは分かる。しかし、悪意が感じられる訳でも無い。自分の直感が、こう告げる……敵ではないと。

 「ねぇ、お姉ちゃん、ずっとここで寝てたけど、良くその身体が消えなかったね。たいていの人は達は、みーんな身体を失うか、食べられちゃうのに。お姉ちゃんって凄いんだねっ!お姉ちゃんって、人間なの?何ていう名前なの?ねぇ、ねぇ、教えて」

 問いかけられた女子高生は、困惑しながら。

 ――この子は、一体何を言ってるのだろう……?

 と胸中で疑念を抱いた。

 無邪気に声を掛けてくる少女が何者なのかは分からないが、自分に何か危害を加える者では無さそうである。長い黒髪を後ろで結わいながら、女の子に話掛けてみた。

 「私は……桔梗、月影桔梗っていうの。あなたの名前は、なんていうの?ここはどこなの?私以外に、私と同じくらいの年の女の子はいなかった?」

 そう名乗った女子高生は、明守の幼馴染みの月影桔梗であった。

 友人に誘われ、肝試しに参加した結果、何かに引き込まれるかのように、この場所で倒れていたのだった。

 桔梗に名前を聞かれ、少女はにっこりと笑いながら、立て続けに飛んできた質問に、一つ一つ答えた。

 「わたし?”かよこ”っていうの。お姉ちゃんのお友達ね……みんな、いなくなっちゃったよ。私も良く分からないんだけど、ここって……死んだ人達とか、奇妙な生き物が来る場所みたいだよ。」

 その言葉に、桔梗は困惑した。

 死んだ人、と言われ、ここが死後の世界である可能性が出てきたのだから、無理もない。だが、桔梗からすれば、それはほんの些細な問題だ。

 ――まだ、大切な友人()に想いを告げていないのに……

 沈痛な面持ちでそう考えている桔梗を他所に、女の子は無邪気に話し続ける。 

 「でもね、死んだ人達だけが来る訳じゃないんだ、ココって。なんていうのか……うーん、どう言ったら良いのかな?生きてる人も死んでる人も行き来が出来る場所みたいな感じ、かな?時々ね、面白い生き物も通るんだよ。そうそう、わたしは死んじゃったんだけど、桔梗お姉ちゃんは生きてるよ。生きてるから、逆に凄いなって」

 生きている、その言葉に、桔梗はどことなく安堵した。生きているのなら、どうにかしてここを脱出して、元の場所に戻ることができる。

 ――もう一度、彼に……明守くんに会うことができる

 そんな希望を抱いた桔梗に、少女は先ほどのやんちゃな声ではなく、落ち着いた声で問いかけた。

 「……ねえ、お姉ちゃん……一つお願いごとをしても良い?」

 「お願い事?」

 「うん。助けて欲しいの……私のお母さんを。お姉ちゃんみたいに、この場所で生きている魂の持ち主なら、きっとお母さんを生き返らせられると思うんだ」

 「……もう少し、詳しく話しをしてくれる?もしかしたら、助けられるかもしれないし……」

 人助けはウィザードの本懐、というのがモットーな桔梗は、かよこ、と名乗った霊的な存在の言葉を疑うことなく、詳しい事情を聞きだそうとした。

 かよこはぱっと顔を輝かせ、お母さんのところに案内するね、と歩みだした。

 かよこと桔梗は、現実の世界とは異なる世界を、暗い古道を進んでいく。

 その先にあるものは……。

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