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ガイコツの会話文を地の分に組み込んでみたので、
ちょっと見づらいかもしれません。
B3Fにたどり着いた。
ん? B2F?
そんなもん問題なく通り過ぎたに決まってんだろ。
まあちょっとクソ冒険者どもの妨害にあったりしたがな。
あいつら俺が5分くらいで復活するのを知って、ご丁寧に骨を埋めやがるんだもんよ。
おかげで元に戻ってB3Fにくるまでまる1日も使っちまった。
ホントマジで、あいつら次会ったら絶対ぶっ崩してやるからな!
ちなみにウルフは人間を見かけた瞬間ピューッとどこかに逃げて行った。
ま、やつはそれでいいのさ。迷宮主が生き返らせてくれるとはいえ、死なないに越した事は無い。
人間がどっかに行くと戻ってきて、
「クゥーン? (ガイコツだいじょうぶ?)」
とか言ってきたので一瞬で許したしな。
でもそう考えると死なない俺って最強だよな?
パーティとか組んだら不壊の盾とか呼ばれんじゃね?
1回攻撃くらったら5分待たないとダメな盾だけど。不壊必崩のガイコツとか名乗っちゃおっかな。
しっかし、あの人間と言う生き物はとかく……いや、もうよそう。
B2Fの事は忘れよう。冒険者がウザいのはいつもの事だ。
ちょっと時間はくったが、B3Fにたどり着いた。それだけでいい。
ところで、このB3Fは普段の俺の活動圏内の中では1番深い階である。
ウチの迷宮主はその辺ゆるいのでモンスターたちに「どこどこに居ろ」とは言っていない。つまりフリーダムだ。
しかしもちろん住み分けはできていて、下の階ほど強いモンスターがいる。といっても自然にそうなったとかではなく、いけすかない戦闘狂のエリート様方が俺たちを追いだしたのだが。
俺は薄暗い迷宮を行く。
通路を歩きながら、ある男を探していた。
「カタカタ」
いたいた。
通路の角を曲がった先の小部屋の隅で、逆立ちをしている。
「おや、ガイコツさんではないですか」
爬虫類じみた凶悪な面相。紫の肌。上半身はムキムキの裸体で、下半身はヘビっぽいしっぽのみ。
こいつはナーガのハインリッヒ。頭が良くて筋トレ大好きなインテリ筋肉モンスターだ。
すげぇ久しぶりだな、相変わらず骨の俺でもうらやましいくらいの筋肉してやがるぜ。
「カタカタ、カタカタ」
「はは、ありがとうございます。ガイコツさんこそ、いつも通り美しい光沢の骨……ではありませんね。すこし煤けてますよ? 大丈夫ですか?」
「カタ! カタカタ!」
そうなんだ聞いてくれよー。冒険者のクソどもがさー。
数分掛けて、俺は身振り手振りを交えてここまでの道のりを話した。もちろんこの道行きの理由もだ。
「そうですか、冒険者が。そしてガイコツさんがここまで足を運んだ理由……。ついに行かれるのですね」
「カタタ、カタカタ」
そうだ。自由への飛翔ってやつだな。俺だって一度くらい、棺に横たわって胸の前に手を交差させて眠りたい。
お前はどうなんだ? 誰にも脅かされる事なく筋肉の深奥を目指したいと言ってただろ。
「カタカタ? カタカタカタ」
「ご一緒……してもよろしいのですか」
「ウォン! (わたしもいくよー!)」
「ははは、そうですか、あなたも」
え? そうなの? ワンコさんまじですか? ついてきてるだけだと思ってた。
「クゥーン? (だめ?)」
今まで興味深げにナーガのまわりをうろうろしていたワンコ(種族:アッシュウルフ、名前:ウルフだけどもうワンコでいいよな。ワンコだし)が、立ち止まって悲しげな眼を向けてくる。
わかったわかった、ご自由に。
「カタカタカタ」
「ワフゥ! (うん、わかった!)」
それで、お前はどうするんだ?
「私ですか」
ふーむ、と体の前で腕を組むようにして、右手をあごに当てて考えるハインリッヒ。
すげぇ……前腕筋が手の動きに合わせてムキムキ動いてやがる……。
「よし、決めました。ガイコツさん、ぜひご一緒させて下さい」
そう言ってハインリッヒが手を差し出した。
そのごっつい手を取り、握手を交わす。
新たな旅の仲間が加わったわけだな。
「よろしくお願いします!」
ハインリッヒが握った手を力強く振り、
カシャガシャーン!
その振動が伝わって、俺の体は振られた鞭のように吹っ飛んだ。
すっごい綺麗なはじけ飛び方をしたので、ワンコは大喜びだった。
ちくしょう、このインテリ筋肉が。
現在位置 B3F
迷宮主の居る最下層 B10F
ナーガのイメージはモン〇ターファームの、あのナーガです。