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新しい魔王  作者: ユキアン
序章
2/3

協力者

はい、使い捨てキャラ登場。もしかしたら復活はするかも?

メネレアを目指してから十日が過ぎた。移動する最中にフェルザーは自分の新しい身体に慣れていった。そして、九日目にメネレアの近くの山に到着すると、次の日の夜を待ち王城に忍び込んだ。目的は勇者時代に知り合った変わり者の貴族に会う為。その貴族は魔物と仲良くなることが出来ないかを研究していた。その研究もある程度の成果を見せていた。そのためか、魔王とも話し合いでどうにか出来ないかと勇者であった自分に相談に来るぐらいだった。あの時は無理だと答えたが、自分が魔王となった現在、一番協力してくれそうな相手がその貴族だ。そして、その貴族はよく王城の書物庫によくいると言っていたのでシアと共に書物庫を目指す。

「止まれ、巡回の兵だ」

目的の書物庫の前に巡回中の二人組みの兵士を見つける。隠れようとしたが運が悪く回りに隠れる場所がなかった。

「ちっ、仕方ない」

素早くシアを抱きかかえ、翼を広げ飛び上がる。

「うん?今何かいたような」

「気のせいだろ。魔王はもう滅んだんだから魔物なんかこねーよ」

「それもそうか」

巡回の兵が通り過ぎ、姿が見えなくなってから降り立つ。

「ここにフェルザーを手伝ってくれる人がいるのですか」

「たぶんな」

書物庫の扉を開け中に入る。扉を開けた音に中にいた人が気づく。

「誰ですか、この時間は私以外は入らないようにと言ってあるはずでしょう」

奥のほうで羽ペンを走らせている女性がいる。

「キャロリア・ジルサンダーか」

「呼び捨てを認めた覚えはありませんよ」

「それは失礼」

「それで、誰ですか?」

羽ペンを置き顔をあげる。

「なっ、魔も、違う魔人、でもない」

フェルザーを見てキャロリアは一瞬驚いたようだが、取り乱したりはしなかった。そのことに疑問を持つが思考から取り除く。

「この姿では初めてになるな。まずはあいさつをしよう」

フェルザーは片膝をつき頭を垂れる。

「私はフェルザー、新しい魔王だ。キャロリア・ジルサンダー」

隣にいたシアも同じように頭を垂れて名乗る。

「私はシア。フェルザーの側近」

キャロリアはまた驚いた。悟られないように深呼吸をして冷静に考えを始める。

 前の魔王が勇者と相打ちになったのは十日ほど前だと勇者の仲間が世界中に知らしめたばかり、つまり目の前にいるこの魔王はただ、そう名乗っているだけという可能性もありますわね。けど情報が少なすぎますわ。

「それで、その新しい魔王様が私に何の御用かしら」

仕方なく素直に一番の疑問を訊ねる。

「私に協力してもらいたい」

「私に人間を売れと仰られるのですか」

「そうではない、君の研究を使わせてもらいたい」

その言葉にキャロリアは息をのむ。が、冷静さは保つ。

「どこでそれを。いえ、私の研究を知っているのは」

「ご想像通りだ。俺は元勇者アレン。今は魔王をやっているがな」

キャロリアも今度は冷静さを保てなかった。

「そんな、一体何が。どうして」

「呪いらしい。魔王を殺したやつが新しい魔王になるそうだ」

「なぜ、そんなに落ち着いていられるのですか」

「なんとなくだな」

分厚い本がフェルザーの顔面に当たる。

「はっ、速い。見えなかった」

「もう一度だけ聞きます。なぜ、そんなに落ち着いていられるのですか」

「なんとな、待った最後まで聞いてくれ」

キャロリアがさっきの本より分厚い本を持ち上げたので止めに入る。「早く言いなさい。今度はこれを投げますわよ」




キャロリアは一番分厚い本を手に取りそれを構える。

「わかった」

キャロリアが本を置いてから話し出す。

「勇者としてこの国を離れた後からかな、魔王を倒しても本当に人々が幸せになるのか疑問になりだしたんだ。確かに魔王を倒せば安心して暮らすことが出来るかもしれない。だが、この国を見ればわかるが不幸な人はいるし、自分勝手な奴もいる。逆に言えば誰かが不幸にならなければ他の誰かが幸せになれないことが身に染みてわかった」

そこで一度切り、勇者として認められたときに大神官様に頂いた聖剣に手を添える。

「旅の途中、勇者の肩書きがなかったら俺はこいつを人に向けて抜いていたかもしれない。けど、それをこらえて、悔しい思いをして町や国を出ていった」

聖剣から手を離す。

「今は魔王という肩書きがあるが、勇者よりは自由に行動できる。人々には嫌われるがな。でも、なんとなく魔王でも違ったやり方で人々を救えそうに思えるんだ」

そして最後に『なんとなくな』と付け足して笑う。

「そうでしたか、それで私に何をさせるのですか」

「協力してくれるのか」

「私から見てもこの国が腐っていることぐらいわかっていますわ。ただ、私の研究をする上では都合が良かったので手を出しませんでしたが手伝ってくださるのでしょう」

「もちろんだ、よろしく頼む」

「こちらこそ。それで、私は何をすれば良いのかしら」

「今は特にない。強いて言うなら研究を進めておいてほしい」

「国の運営をどうするつもり」

「この国を乗っ取った後、少しの間猶予を与えて逃げ出さなかった奴らの中から有能な奴を選定してそいつらを国の重鎮に仕えさせて国を運営するつもりだ」

「そんなので国を運営できるの」

「運営のノウハウは俺が持っているから問題は無い。」

「なんでそんなことを知っていますの」

「学校で習ったからな」

「私も知っています」

今まで黙っていたシアが口を開く。

「ほう、誰に習ったんだ」

「生まれたときに知識を植え付けられましたので」

予想通り魔術的な施術を請けていたか。恐らくシャグルスが植え付けたのか、元から知識を受け継いで生まれてきているのだろうな。

「まあいい、補佐が一人いるなら教育する傍らで十分運営は可能だ」

「わかりました。けど一人だけ、貴方が直接会ってほしい人がいるのだけれど構わないかしら」

「俺が会うということは正体を明かす必要があるということだ。そいつは正体を明かしてまで会う必要があるのだな」

「ありますわ。少なくともその方が協力していただければ事がすんなりと通りますわ」

協力してくれれば事がすんなりと通るそんな奴がいるはずが無い。俺自身がやるよりは、というのが正しいのだろう。誰だ、そんな事ができる奴。この状況下でそんな事ができる奴。

 そしてフェルザーは一つだけあり得る地位を思いつく。しかし、それはあり得ない事だった。

「居るのか、この国に王子か王女が」

この国の王は結婚をしていなかった。そして、誰かを養子として迎える事も無かった為に後継者が居なかった。だが、本当に王子か王女が居て協力してくれるのならば確かにすんなりと事が進む。魔王の進行という形ではなく内部の革命、その後に同盟、あるいは俺を客将扱いという形に持って来ればある程度は受け入れられるだろう。

「王子が居ます。その方を信じるかどうかはあなたに任せますが、会って話をしてみてください」

しかし、協力してくれないとなると消すしかなくなるだろう。ある一定階級しか知らないとしても知っている者が必ず神輿として祭り上げて反抗してくるのは目に見えている。だが、それを知っている上で会ってほしいというなら。

「会おう、その王子に」

会う価値は十分にあると判断できた。それに個人的に興味があった。

知り合いの中に王族の者も居たがそいつは正直者で意地っ張りで頑固で我が侭だった。けど、泣き虫で甘えたがりでそして。

「どうかしましたか」

キャロリアに声をかけられ現実に引き戻される。

「いや、なんでもない」

「そうですか」

キャロリアが少し心配そうに様子をうかがう。

「それより、その王子にはいつ会えるんだ」

「明日アポイントメントをとりますので数日中には」

「わかった。なら俺たちは閉鎖されている鉱山に居るから近くに居る魔物の頭をなでてやれば俺たちの所に案内するように躾けておく」

「俺たちという事は彼女も、という事ですか」

「そうだよ。じゃあな」

書庫から出ようと扉の方を向くと同時に後頭部に辞書を投げつけられた。無論、正面から投げられても躱せないのだから見事に直撃し、フェルザーは倒れ伏せる。

「辞書はやめろ。下手な剣より殺傷力が高いんだから」

「魔王なんですから大丈夫でしょうが。それよりも貴方は女性にそのような仕打ちをして何とも思わないのですか」

「そんなわけがあるか。俺のパーティーを思い出してみろ、八人中五人が女だぞ。しかも気位が高い奴ばっか。魔王と戦うよりも旅の間のあいつらの面倒を見る方が大変だったんだぞ」

「なら、なぜ彼女にも同じようにしないのですか」

「やろうとはしたさ。けどな俺はこんな姿だ、村になんか入れるはずがないだろうが。しかもシアは」

「私は絶対にフェルザーの傍を離れません」

淡々と告げるシアの横でフェルザーはため息をつく。

「丸一日使って説得してみたがこんな感じでこっちだって苦労はしたんだよ」

またため息をつくフェルザーにキャロリアは同情した。

「わかりました。なら、私の屋敷に二人とも招待します」

「かまわないのか」

「かまいません、私の屋敷に居る者は信用に足る者ばかりですので正体を明かしても害はありません。むしろ歓迎されるでしょう」

「なら、お言葉に甘えよう。シアもそれで良いな」

「フェルザーの傍から離れなくていいのならかまいません」

「では行きましょう」




とりあえずここまで。

次回、もう一人の主人公である王子が登場。

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