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あと一歩、踏み出したなら。  作者: 姫ちゃん
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久しぶりの投稿二話目。

そして文化祭2日目。昨日に違わず開始時間から多くの客が柚葉のたちのクラスを訪れ、男子のみならず女子も目の回るような忙しさだった。柚葉も買い出しに精を出した。来てくれるお客さんの笑顔を見ると頑張れる気がした。



『これをもちまして、第57回橘祭を終了します・・・』



午後4時、生徒会長のアナウンスが流れ、文化祭は終わりを告げた。ぎりぎりまで客を受け入れ最後の1人が店を出ると、全員が息を大きく吐いてへたりこんだ。とにかく疲れた。休む暇もなく、乾いた喉を潤わせることもできなかった彼らはお疲れを言い合う余裕すらなかった。


そこへ担任のたっちゃんが入ってくる。


「お前ら、お疲れ・・・ってうおっ、どうしたみんな!?」

床にへばった男子たちや机に突っ伏す女子を見てたっちゃんは驚いて身を引いた。クラスメイトはたっちゃんの言葉でやっと気付いたように、

「お疲れ!」

「お疲れ様!」

と声を交わしあった。

「疲れすぎて言うの忘れてた」

誰かがぽつりと呟き、クラスは笑いの渦に包まれる。

2日間やり遂げた達成感と身体的疲労がちょうど良く混ざりあって心地よい空間を作り上げていた。

「まだへばってる余裕はないぞー」

とたっちゃんが活を入れる。

「この後の予定はとりあえず1時間半片付け、5時半から後夜祭が始まるからそれまでには校庭に集合するように」

その言葉をきっかけに生徒がのろのろと立ち上がり後片付けをし始めた。柚葉もなんとか疲れた身体を引きずるようにしてごみ出しなどをした。部屋の装飾を外し、椅子と机を元通りに直す。黒板の文字やイラストも綺麗に消され、部屋の掃除を残して後夜祭の時間になった。

特に後夜祭の参加に関してはクラス毎に固まれなどという身動きが取りづらい規則はないので勝手に見たい人と好きな場所から校庭に設置された後夜祭特別ステージを眺められる。

柚葉は最初から由理が九条と一緒にいるつもりだろうと思っていたが由理はあくまでその気はなく花火だけと決めていた。

「いいの?」

柚葉は遠慮がちに言った。

「全然。柚葉も寂しいでしょ」

そんなことないよと否定しようとも思ったが、そんな気持ちがないわけではないため黙っていた。きっと花火が打ち上がる時に九条は由理に告白し、彼女はそれを受け入れるだろう。それを友人として見送るのも、少し寂しかった。

由理は全部分かっているように柚葉の頭を優しく一撫でし、校舎の階段を降りだした。





「これより、第57回橘祭後夜祭を開始します」


生徒会のアナウンスに校庭がわあーっとざわめき立つ。

あたりは暗くなりだし、夕日が沈んだ名残が空に漂っている様は産まれたての夜空に赤みのある黄金のインクを流し込んだようだった。校庭の中央では火が焚かれている。パチパチと爆ぜた火の粉が空に舞い上がり彩りを添えた。柚葉がそれに見とれているとステージから音楽が聞こえてきた。

主に後夜祭の出し物は有志によるもので、部活から個人まで幅広く演奏したり歌ったり出し物をやる。年によって内容の濃さがころころと変わるので、単調にはならない。一番盛り上がるのはプログラムの最後に行われる生徒会主催のミス及びミスターコンテストである。学校中から名乗りを上げたり推薦されたりした何人もの候補者が名を連ねる。

橘西高校のコンテストにおいて他校と異なるのは顔だけで勝敗を分けないところである。才能、見た目、性格などが等しく評価されるため、ただ顔が良いというだけでは優勝はできない。顔はいまいちだが持っている性格や才能で優勝した生徒はいくらでもいるのだ。毎年カラーの違う優勝者が生まれるのがこの高校の特徴である。


有志団体の発表ののち、ミス及びミスターコンテストが始まった。今年も様々な特色を持つ候補者たちがアピールし、喝采を浴びては舞台を降りるのを繰り返す。お祭りムードは今にもはじけそうなほど生徒達の熱気を吸って膨張していた。すっかり日が暮れた中で炎が生徒達の顔を赤く染め上げる。



『それでは候補者たちのアピールは以上となります!事前に配布した用紙に記入して投票をお願いします!花火が終わりかける頃に回収して集計するのでなるべく早く箱に入れることをおすすめします・・・』

アナウンスが響く。最後のプログラムも終わり、いよいよ締めの花火である。柚葉が由理とコンテストの投票についておしゃべりしていると、前方から九条が現れた。炎を背にしているため表情が読み取りにくい。由理は彼を見て目元を和ませた。

「じゃあ、行ってくるね」

「うん、行ってらっしゃい」

由理の背後から柚葉は頑張っての意を込めて親指を立てた。

九条も由理と共に歩き出した後、柚葉の方をちょびっと振り返り同じサインを返した。柚葉は一抹の寂しさを感じながら2人を見送った。





なんというか続きが気になるところで申し訳ないです・・・。

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