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あと一歩、踏み出したなら。  作者: 姫ちゃん
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その頃、由理と九条は高校近くのスーパーを歩き回っていた。


「次は?」


「ホットケーキミックスかな」


「おっけ。行くわよ」

メモを読み上げる九条の隣にはカートを押し進める由理。昼間から一方は制服、他方は白シャツにジーンズという高校生男女がスーパーで買い物。それも決してもたもたすることはなく、あくまでさくさくと買い物リストを捌いていくこの二人は周囲の視線を集めていた。



「量は?」


「1800グラム。これ3袋で丁度いいかな」


由理は袋を掴んでかごへ入れる。


「次は?」



「ジュースの類。具体的にはりんご・オレンジジュース、紅茶、コーヒー、サイダー、グレープサイダー」


「意外と多いわね…」


「二人で持って帰れるといいけどな」

上下のかごにつめられた食料品を見て由理はげんなりとした表情を見せた。


「やっぱ無茶じゃない?もっと人数増やした方が良かったんじゃ…」


「それじゃ意味ないだろ」


「何の」


「葛城と二人で買い出し。カップルみたいじゃん?」


「………っ」


由理は足を止めた。怒ったかな、と九条が顔を覗こうとすると、由理は顔を思いっきり背けて見られないようにした。


「怒った?」

戸惑った九条が声をかける。


「お、怒ってないっ!」


「カップルとか言って調子乗ったわ、ごめん。許して?」


「だから怒ってないってば!」


きっ、とこちらを振り返った由理を見て、九条は目を見開いた。

由理の顔が赤い。こちらも反応しそびれて、


「わ、分かった…。買い物、続けようか」


となるべく彼女の顔を見ないように前を歩いた。

顔が赤いことを指摘したら本当に怒られそうな気がしたからだ。

自分の気持ちは確かに彼女に届いている。

そう感じられて九条は頬がゆるむのを覚えた。







そして、橘祭当日。

「白シャツ&ジーンズ男子喫茶へようこそ!」


男子の外見を最大限活用したこの喫茶は、初日からものすごい人気を見せた。

教室内の女性はみんな、幸せそうな表情を浮かべて通り過ぎる男子を見つめている。もちろん、撮影も許可されているので、気に入った男子と写真を撮る人も多い。


おかげで買い出しに行くことも多く、主にそれは裏方である女子が担当し、それは柚葉たちも例外ではなかった。あまりにも行列が消えてなくならないので、急遽整理券を作って渡す事態にまでなってしまった。

予想以上の人気にみんな驚いているようだ。

ひとまず昼休憩を迎えて、クラスで一息つく。


「まさか、ここまで人気とは」


「事前にもっと買い出し行っておけば良かったねー」


「でも男子は輝いてみえる」


「そりゃ、輝くでしょうよ。かっこいいですねって誉められるんだもの」


「女子はこんなに汗だくなのにさー」


あはは、と女子一同で笑う。


「言い出したのはお前らだから、後悔すんなよ」


と男子の一人が言えば、


「売り上げ上々で誰が後悔するか!」


と女子は言い返して、再びクラスは笑いの渦に包まれた。



「さてっ!昼ご飯も食べたし、午後も気合い入れるぞ!」


午後担当の女子が立ち上がる。


「あぁ、その前に午後担の男子!服装チェック!」

男子衣装担当の代表芦田ほのかが男子に細かい指示を出す。


「この服でチェックも何もねーだろー」


「ほらそこ!袖はめくる!ボタンは最低2つ開けて!深沢、あんたは開けすぎ!」


深沢と呼ばれた男子は心外そうにええ、と反応する。


「これ開けすぎかあ?」


「それはただの変態!勘弁して!」


「あとは髪型!崩れてると思ったらワックスで素早く直して!」


「女子怖い…」


「恐ろしい執念…」


「可愛い女の子との画像に写るんだから、これくらい当然よ」


ほのかの言葉に女子は何度も頷く。


「そして遊馬あすま!」


「ん?」


「あんたは一番忙しくなるであろうことを覚悟しといて。給仕に回る余裕はないかもしれないわ」


「えっ?」


「どちらかというと撮影メインで働いてもらった方がいいかもしれないな」


「お前イケメンだからなーーー」


「何人かは俺に譲れよな」


「あっ、俺の彼女とは撮るなよ?」


「お前の彼女は見たって分かんないよ!」

他の男子から浴びせられる半分本気のからかいに遊馬は憤慨しながらも楽しそうだ。


「その分他の男子がフォローに回ってね。てことでよろしく!!」


女子は午後のメニューを作り始めたりと忙しくなってきたので、午後は自由な柚葉と由理は教室を出た。







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