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俺のせいで戦闘狂になってしまった悪役令嬢の話

作者: 仲仁へび
掲載日:2026/07/19



 俺はなぜか乙女ゲームの世界に転生してしまった、転生者だ。


 神様の世界では今、人間をぽっくり死なせるのがはやっているらしく、俺みたいなモブの運命を操作して天に召して、他の世界に転生させるというお遊びをしているらしい。


 その中でブームになっている世界の一つが、乙女ゲーム世界への転生。


 いま、神様の世界ではラブい創作ものでお喋りしたりするのが楽しくて、大層盛り上がっているとか。


 女子かよ。


 普通なら憤慨ものだけど、まあ、俺には関係ないな。


 前世には特に未練がなかったし、悲しませるような友達や両親とかもいなかったから。


 病院からあんまり外に出られなかったしね。


 神様ゆるせん、みたいな感情わいてこないんだよ。


 じゃあ、なんでその話をしたかというと、今目の前で俺の話を聞いた悪役令嬢が荒ぶっているからだ。







「なんて、連中なの! 許せない! こうなったらその神様の世界とやらにのりこんで、ゲンコツをおとしてやるんだから!」


 といいながら、釘バットをふりまわしてる。


 鼻息ふんふんさせて、牛みたいになっちゃってるよ。


 女の子としてしちゃいけない言動しちゃってるよ。


 この子だれかとめて。








 乙女ゲームの世界に転生した俺は、ひょんな事から悪役令嬢に関わる事になった。


 俺、貴族に生まれたから、社交界で普通に顔を合わせたら、いたんだよね。


 すごくおいしいお菓子一緒に食べただけで、仲良くなったよ。


 子供だもんね、単純だ。


 そんで、仲良くなった悪役令嬢に、前世と神様の話をしたらこうなった。


 悪役令嬢は将来悪役になる予定だけど、子供のころはまだ可愛くてまっすぐな女の子だったらしい。


 そのため、俺の話を聞いた彼女は、純粋に信じ込み、正義の心を燃やして暴走し始めたというわけだ。


 発端である俺もそれなりに止めて、彼女の両親も止めて、周囲の友人達も止めたんだが、暴走は留まるところを知らなかった。







 時の流れと共に、悪役令嬢は駆け抜ける。


 戦闘力を高めながら。


 釘バットを使いこなして、地元の不良を倒したり。


 護身用の剣をふりまわして周囲の村を荒らしてる夜盗を倒したり。


 身の丈以上の大剣をあやつって、国の要人を狙って騒動を起こそうとしていたテロリストを倒したりするようになった。


 とんでもない事になっちゃったたな。


 初めて前世の話をうちあけてからここまでに数年がさらっと経過。


 悪役令嬢は、荒ぶる戦闘狂いに進化してしまった。


 最初は正義の心に燃えて、ぶつけどころのない感情を、適当な悪党をサンドバックにすることで消化していたみたいなんだが、それじゃ足りなかったらしい。


 彼女はみるみるうちに、強敵を求めて、強さも求めて、なんかやばい感じのレベルアップを果たしてしまった。


 強敵と戦うのがなんか癖になっちゃったっぽい。


 たまに起こる、人を虐める系のイベントとかには、まったく関わらなかったから、そこはいいことなんだけどね。







 今じゃ国中の人が知ってる、立派な戦闘狂だ。


「悪人を倒すのって気持ちいいわ!」


 笑顔でこんな事言う鮮血のレディになっちゃった。


 顔に返り血をつけながらね。


 俺はなんとも言えない気持ちでハンカチを取り出して、ゴシゴシするよ。


 女の子でしょ。もうちょっと顔に気をつかいなさいね。


 原作でも一応、悪役の名にふさわしい強さは身に付けていたんだよね。


 ヒロインの邪魔をして、攻略対象の邪魔をして、いろいろな場面でシナリオをひっかきまわしていたし。


 でも、目の前の女の子はそれ以上だ。


 原作の悪役令嬢をレベル90くらいの強さとすると、目の前のコはレベル100以上かな。


 俺のせいでこんな戦闘狂が生まれてしまったとしたら、さすがに罪悪感でいっぱいだよ。


 もっと立派な転生者だったら、まともなご令嬢に更生させられたかもしれないのにね。


 こんな俺が生まれてきちゃってごめんよ。


 ほら、俺前世が前世だから、人付き合いの経験あんまなくってさ。







 そういうわけだから、一応俺も彼女と同じ道を歩む事にしたよ。


 新しい人生を生きてるといっても、別に他にやりたい事なんてなかったしね。


 人の人生ゆがめておいて、自分だけ穏やかに過ごすってのは、人付き合いのなんたるかを知らない俺でも、さすがにできなかったよ。


「今回は思ったより歯ごたえがなかったから、こんど、一緒に邪神をたのしにいきましょ! 噂では隣国を荒らしまわってるって話みたいだし! 準備資金が足りなかったら実家が出してくれるわ。だってうち、お金持ちだもの」

「そうだね隊長。でも髪の毛が真っ赤になっちゃってるから、討伐計画たてる前にお風呂入ろっか」







「なあ、隊長と副隊長ってつきあってるのかな?」

「え? どうだろ。ぜんぜん甘い雰囲気とか漂わないし、違うんじゃない?」

「でもほら、あの別の隊の美男美女ばかりのところは、砂糖吐くような甘ったるい雰囲気じゃん。隊長と副隊長もあいつらと同じような事してるじゃん。ボディタッチ多いし、弁当つくりあってるし、探せばいつも同じ場所にいるし」

「よそはよそ、うちはうちでしょ。どっちかっていうとあれは、家族とか兄弟みたいなものじゃない?」




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