なぜ、ローファンタジーは異世界だらけなのか?
筆者はローファンタジー作品が好きです。
現代日本の日常に紛れ込む異形のもの。
高層ビルの狭間に咲き乱れる異能力バトル。
現実と地続きの世界だからこそ味わえる興奮があります。
けれども、なろうのローファンタジーの短編ランキングを覗くとタイトルに並ぶのは聖女聖女聖女、令嬢、婚約破棄に勇者にギルドマスター?
おおっと、どうやら間違えてハイファンタジーランキングを見てしまったようだ。あるあるですね。
ちなみにハイとローの違いが何かわかります?
すっごくファンタジーならハイファンタジー
ちょっとファンタジーならローファンタジー
なんて思ってませんか? まあたしかに世の中には
重厚で壮大でリアルな本格ファンタジーこそハイファンタジー
ゆるふわ設定のなろう系テンプレ異世界はローファンタジー
みたいな思想もあるかも知れませんが
そのへんは勝手にしていただいて
https://syosetu.com/helpcenter/helppage/helppageid/59
小説家になろうヘルプセンター/ジャンル
|ハイファンタジー:
|現実世界とは異なる世界を主な舞台とした作品。
|ローファンタジー:
|現実世界に近しい世界にファンタジー要素を取り入れた作品。
少なくとも「小説家になろう」においては十年前からずっと、こうです。
異世界を主舞台とした作品はハイファンタジー。
現実世界を主舞台とした作品はローファンタジー。
単純明解ですね。
もちろん異世界恋愛/現実世界恋愛もこれに準じます。
というわけでジャンルをローファンに切り替え……おや?
聖女婚約破棄聖女……さっきと変わらない?
おかしいな、ジャンル選択は間違えてないぞ。
はっ! そうか、ここに並んでるのは、異世界の聖女や勇者が現実世界にやってくるタイプのお話? うん、筆者それはそれで大好きです!
ところが驚いたことに、読んでみるとそこにはカタカナのキャラクターしか登場せず、舞台は明らかに異世界のまま、現実に切り替わることなく終わりました……。
作者さんがジャンル設定をうっかりミスったのかも知れない、と他の作品も読んでみました。
結果、ランキング上位の作品のほとんどが異世界舞台のハイファンか異世界恋愛的な作品でした。
まあ、そりゃあそうですよね。
異世界恋愛はなろうの覇権ですし、ハイファンもローファンよりずっと人気があるのだから、ローファンランキングにそれらが乱入したら無双できるに決まってます。
……おいおいおい。
つまりこいつらは産地偽装や学歴詐称ならぬ、ジャンル詐欺でランキング上位を不法占拠する邪悪な詐欺師どもということ!?
そんな輩、なろう運営が許しても我ら読者がゆるさんぞ! これは、きっと感想も荒れまくりだろうなあククク……(性格悪)
と覗いてみたのですが、意外とそんなこともなく。
まあ、それはそうなんですよ。
読者の皆さんの多くにとっては、楽しめればそれでいい。ジャンル違いなんてさして重要ではないのです。
(あとそもそも感想欄が閉じられていたり)
もちろん、なかにはジャンル違いを指摘するコメントもあります。そこに、ある作者さんはこんな感じに返信しておられました。
ローファンタジーは「現実に近しい世界」
これは現実の中世ヨーロッパに似た世界だからローファンタジー
なるほど! そういうことか!
実際、いくつかのジャンル偽装作品には「中世ヨーロッパ」タグが入っています。
(一部の作品は同時に異世界転移も入ってて横転したけど)
わざわざ本文で「中世ヨーロッパのような世界」と宣言する作品もありました。
たしかに、これならヘルプセンターの文言には反していない。
詐欺師あつかいしてごめんなさい、すべては筆者の勘違いでした。
つまり、こういうことですね。
現実の中世ヨーロッパのような世界に、聖女や勇者がいて、魔法があって、モンスターがいて、冒険者ギルドがあっても。
文化レベルにめんどうな歴史考証なんかしなくても。
あくまで現実の中世ヨーロッパに近しい世界にファンタジー要素を取り入れてるだけなのだからローファンタジーだと。
つまり、ハイとローには違いなんてなかったのです。
つまり、ナーロッパは現実世界と同義なのです。
であればですよ。
強豪ひしめくハイファンや異世界恋愛に馬鹿正直に異世界モノを投稿して埋もれるより、ローファンで無双した方がいいに決まってる。
そこでポイントを稼げれば、普段は埋もれるような作品でも総合ランキングに手が届くかも知れない。
うん、とっても冴えたやりかたです。
なぜ、ローファンタジーは異世界だらけなのか?
──以上が、その答えのようです。
(なお、舞台が異世界なこと以外ファンタジー要素がない悪役令嬢や婚約破棄系の作品は、さすがに作者さんの勘違いだと思います。優しい誰か、感想などでそれとなく教えてあげて……)
現状は、短編ランキングが異世界に占拠されているだけ、連載ランキングは現代ダンジョン人気もあってまだ無事です。
けれど我々はすでに目撃している。ヒューマンドラマジャンルが短編ランキングからじわじわと異世界に侵蝕され、やがて連載ふくめ現代ドラマの居場所がどこにもなくなってしまった悲劇を。
このままでは、いずれ現代日本が舞台の純粋なローファンも、ヒューマンドラマ同様に淘汰されてしまうかも知れません。
そうなったとして、悪いのは「現実世界に近しい世界」なんて曖昧で穴のあるガイドラインなのでしょう。そのへんカクヨムは「異世界ファンタジー」「現代ファンタジー」だから明快です。
ですが。筆者は迷わず、異世界舞台はハイファンに、ローファンには現代舞台の作品を書き続けます。
ジャンルって、作者の「書きたい」と読者の「読みたい」をつなぐ架け橋だと思うのです。
そういうものを歪めてまで評価を得たくはない。ランキングは実力で勝ち取ってこそだと思うから。
──それに、詐欺師なんて勘違いもされたくないですしね。
※本文章は執筆時点のランキング情報を元に、ロー/ハイファンタジー/異世界恋愛のジャンル選択に関する啓蒙を目的として作成されており、特定の作品やジャンル、作者様を糾弾しようという意図はございません。マジで。




