第7話 王都到着
「坊主!見てみろ!!」
ガタガタと揺れる馬車の中、
なんとか掴まりながら窓から顔を出した。
「……っつ」
でかい。
王都の城壁は、どこまでも続いていた。
「でかいだろ、王都」
御者が笑っていた。
それ以上、言葉が出なかった。
銀貨五枚を払って、城門をくぐった。
◇◇◇
俺は第七騎士団と書いてある建物の前に立っていた。
「長かった」
家を追放されてから、
日雇いの仕事を続け、
天命を磨き続け、
雪が解け、緑が現れ、枯れ、
やがてまた雪が降るころ、
俺はようやく王都にたどり着いた。
「ようやくだ……」
手に力がこもる。
ぎゅっとペンダントを握りしめ、
門をノックする。
門がゆっくりと開かれ、
ニヤニヤと笑みを浮かべた男が立っていた。
「久しぶりだね。来ると思ってたよ」
「お久しぶりです」
相変わらず、
何を考えているかわからない。
全てわかってるよというような笑みを浮かべ、
俺のことを手招きした。
「おいで」
◇◇◇
稽古場は熱気に包まれていた。
俺たちが足を踏み入れると、
皆がピタリと手を止め一斉に頭を下げた。
「はいはい。皆、手は止めないでね」
皆の視線が自分に集中するのがわかる。
身体がチクチクするのを感じた。
(また始まる)
俺は思わず身構えた。
「副団長、その子は?」
「新入り」
「天命は?」
ガルドがちらりと俺を見た。
「穴掘り師です」
沈黙。
それから遠慮のない笑いが広場に広がった。
「穴掘り師!?」
「副団長、本気ですか」
「どこで拾ってきたんですか」
ガルドは立ち止まって、
笑っている団員たちをぐるりと眺めた。
「うん、まあ、笑っといて」
広場が少し静まった。
ガルドの声のトーンは変わっていない。
それが逆に妙な空気を作った。
ガルドは皆を見て、首を傾げた。
「どうしたの?
そのうち笑えなくなるんだから、
今のうちに笑っておいたほうが得だよ」
それから俺の方を向いて、
「ね」
「……はい」
(勘弁してくれ)
背中に浴びる物凄い視線の数に、
早速、ここにきたことを後悔していた。
ガルドはスキップするような足取りで、
また歩き始めた。
廊下を歩きながら、
ガルドが前を向いたまま言った。
「これまで何してたの?」
「追い出されてからは日雇いをして、天命を磨いていました」
「穴掘り師で日雇い」
「はい」
「どんな仕事」
「農地の整備、排水路の掘削、あとは森の際で魔物を処理する仕事も少し」
ガルドは黙っていた。
しばらく歩いてから、また口を開いた。
「強くなった?」
温度を感じさせない表情に呆気にとられた。
先ほど背中に感じた百倍の圧を、対面から感じた。
我に返り、すぐ答えた。
「はい」
「どのくらい」
「自分ではわかりません」
「ふうん」
「あの、聞いてもいいですか」
「うん」
「なんで俺なんですか?」
「面白いから」
「面白い?」
「夜中にボコボコ穴掘って、気絶してるやつなんて面白いじゃん」
「あ」
(見られてたのか)
恥ずかしさと共に込み上げてくるものがあった。
見てくれている人がいた。
その事実は、俺のことを何より肯定した。
泣きそうになるのを必死に堪えた。
ニヤニヤしている副団長を見て、何とか耐えられた。
それ以上は何も聞かなかった。
「荷物置いたら、さっきの稽古場に降りてきて」
◇◇◇
与えられた部屋は広かった。
貴族の時に住んでいた部屋の半分もない。
固いベッドにささくれが目立つ木の机。
軽く撫でただけで怪我をしそうだった。
それがとても嬉しかった。
窓から中庭が見えた。
さっき笑っていた団員たちがまた稽古を始めている。
剣の音が聞こえてくる。
鏡に映る自分を見て驚いた。
「笑ってる?」
さっきのニヤニヤが映ったのか。
いや、違う。
楽しみなんだ。
荷物を置いた。
窓の外を見た。
中庭の端に、土があった。
(まず、ここから)
しゃがんで地面に手を当てた。
ぽつ、と音がした。
五センチの穴が空いた。
始まりは、いつもこれだ。
ここから先は、
誰も知らない場所へ行く。
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ここまで読んでくださりありがとうございます!
ようやく王都につきました!




