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♯47 じゃんけん

[ここ1人やったけど、結構削れちゃった。あと1人残ってるから一旦回復する。そんで突っ込もう]


[あいよー]

回復アイテムを使用するsumの周囲を警戒しつつ、彼の使用キャラを見つめる。


......やっぱこいつうめえな。今のエイムもほとんどブレてなかったろ。どんな腕してんだよ。



通常、チャット同士でのゲームプレイは困難だ。バトル中にチャットを打ち込む余裕など到底ないためコミュニケーションが取れないからだ。


戦いというものは常に予測不可能なタイミングで起こるだけでなくパターンの読めた単調なものでない。なので多くのプレイヤーはボイスチャットを使い、リアルタイムで喋りながら呼吸を合わせる。


しかし、sumとは今の今までボイスチャットなんて使ったことがなくチャットのみで会話をしている。

なら、戦う時はチャットを打ち込む手間がかかってしまうが、どうするんだって?



そんなの簡単だ。戦闘中にチャットをしなければいい。俺とsumはチャットなんてしなくてもお互いがどう動きたいのかがなんとなくわかる。


というよりも、sumが縦横無尽に敵を薙ぎ払うから俺はそのサポートをすればいいだけなんだけどな。


てか、こうやって敵を倒したタイミングだったりの動きを止める時以外はゲーム中ほとんど会話なんてしてない。まあ、別にいつでも話せるしそこまでお互い喋りたがりな性格じゃないもんな。



アイテムを漁りつつ、周囲を見回しているとチャットが流れる。そろそろ完了か。



[回復したわ]


[うし、突っ込むぞ]

彼のようなプレイングなんて到底できそうにないという感嘆と、追いつかない若干の歯痒さがマウスを持つ手を震わす。





「......あれ?んだこれ?」

ロビーに戻ってフレンド欄をぼんやり眺めているうちにふと気がつく。ちなみに、sumは離席中だ。


このゲームではフレンドになる際、ユーザーネームを入力して、そのプレイヤーにフレンドリクエストを送る。そしてそれが向こうから承諾されて初めてフレンド関係が成立する。


今俺の目に映っているのは、フレンドリクエストだ。そんなの、別に不思議じゃないって?そうだよな、別に俺も来ること自体をおかしく思ってんじゃないんだ。


どこかのタイミングで同じチームになった野良のプレイヤーから送られてきた可能性が十分にあるしな。


不思議に思ったのは送られてきたことにじゃない、その数だ。



「......400ってなんだよ」

マウスカーソルを合わせた先では[フレンドリクエスト 419件]という大量のリクエストがチカチカと光っている。


[おまたせー]

何度かフレンド欄を開き直して、バグなんじゃないのかと確認しているうちにsumが戻ってきた。


もしかしたらこんぐらい普通なのかもしれんし、ちょうどいいから訊いてみるか。


[なあ、ちょっといい?]


[急に何]


[フレンドリクエストってどんぐらい来てる?]

返信が来る間にもう何回か開き直してそれがバグがないことを再認識する。え、ほんとにどういうことだ?



「はぁ〜......」

椅子にもたれかかって深いため息を吐く。久しぶりのゲームで目が疲れていたようで、目を瞑ると心地良い感覚と共に暗闇が広がる。


リクエスト自体は別に嫌とかではないけどさ、なんか気になる。もしかしたらどこかで変に知られてたりして...あ、単に俺が上手すぎて味方を魅了しすぎた線があるな。


いやそれなら、俺よりも上手いsumなんてとんでもないんじゃないか?1000とか来てそう。

ま、それもこれもsumの返信でわかることだしな。


ギシッと椅子を軋ませてパソコンと向き合う。



[見たわ、結構溜ってたね]


[どんぐらいだった?]


[37件。多いのかは知んないけど]


「......えぇ?sumで40件ぐらいなのに?」

返信を見て勝手に口が動く。じゃあ俺はsumの10倍?んー、別にこのゲームやり始めたの俺の方が早かったとかでもないんだけどな。なんならsumの方が早かったろうし。


あーわっかんねえ。何があってこんなにリクエストが来てんだよ俺モテすぎだろ。


[なんで急にそんなのきいた?]

椅子をガタガタやらしていると、sumから当然のチャットが投げられる。そりゃ疑問だよな。こんなどうでもいいこと急に訊いてくるなんて。

ま、別に隠すことでもないし話しちゃっていいや。


[実はさ、俺めちゃくちゃフレリク来てて400ぐらい来てんのよ]


[へぇ、400も?そりゃ凄い。有名人じゃん]


「はぁ......」

こいつの適当な返信にため息が出る。


[普通に怖いだろ。急に400も来てんだし]


[別にいいんじゃない。そっちが承諾しなけりゃいい話だし]

いやまあそれはそうなんですけど......なんかさ、


[自分が変に知られてたりしたら怖えじゃん]


[でも何もしてないんでしょ?自分のクリップ動画とか投稿したとか]


[しねえよ]

そんなの、お前ぐらい上手くなきゃできてねえよ。俺なんてまだアリンコみたいなもんだ。


[気にしたってどうしようもないし、無視しとけばいいでしょ]

う〜〜〜ん、そんなもんなのかぁ?


「え〜〜〜」

椅子に乗ってぐるぐる回っていると思考がシェイクされる。あ〜ゲーミングチェア最高〜。



[ま、そっか]


[そ、別に配信者とかでもないんだし無視無視]





「あーテスト勉強むりー」

シャーペンを転がしてジュースを一啜りする。

やーっぱメロンソーダうっまぁ。

体勢を崩してだらける私に声をかけるのは2人。


「ふふ、海風(うみか)ちゃんさっきからそれしか言ってないじゃん」


「それ。あんた今回点取らんかったら単位やばいんやろ?もうちょい頑張りや」


「だって1週間あるし今頑張らんくてもええやろー?」

テストなんて一夜漬けで勉強してなんぼやん。1週間以上前から準備してけちょんけちょんに解き散らすなんてテストが可哀想や。


「それ言って去年何単位落とした?言うてみ」

う、真実(まみ)め痛いところ突いてきたな。


「ろ、6単位です」


「はぁ、1年生のうちに単位は取れる分だけ取っとけって言われてるのになんであんたは......」

そんな険しい顔せんでよ。ファミレスに似合わんわないの。ほらスマイルスマイル......とか言ったらもっと怒られるか。やめとこ。


「そもそも1週間あるとか言っときながら一夜漬けもほとんどしてへんやん。自分が興味ある授業だけテスト勉強してあとはうちらにレジュメと過去問見せてもらってるだけやないの」


「それに関してはほんまにありがと」

私の言葉で止まってくれるかと思いきや、真実はますます息を吸って机をカチカチと指で弾く。あ、まずいこれ。


「感謝してんやったらもっと自分で勉強しいや。このまま今年も来年も再来年もその怠惰癖直さんかったらほんまに痛い目見るで?そのあとはうちら社会人なんやから〜〜〜」


「さ、(さくら)〜助けてぇ」

マシンガン説教が全弾ヘッドショットで命中してもいまだに止まってくれない。縋る目で彼女の名を呼ぶが


「んー......海風ちゃんさ、やれば出来る子なんだから頑張ろ!ほら、私も真実ちゃんもずっと一緒のまま助けるなんていかないんだし!」

あぁ、私の天使が。離れてゆく......そんな寂しいこと言わんといてや〜。


「そんなこと言わんといてやぁ。寂しいやん」

わざと弱々しい声を出すと、真実からのマシンガンが止まる。ふふん、この子これに弱いんよな。


「.......はぁ。それやったらもっとあんた頑張り。うちらサポートぐらいはするから」


「はーい......あ、ドリンクバー行ってこよっ!ほな行ってきまーす!」

呆れた声の真実と、優しい声の桜の返事を聞いて私は席を足早に立つ。



「あ、そういえば」

空になったコップ片手にスマホを取り出す。通路を塞いで邪魔にならないように端っこの柱にもたれかかり、Quitterを開く。柱が後ろにあるから覗き見される心配ないし安心や。


えーと、流石にまだ来てないか.......!



「お!」

少し大きな声で反応してしまう。いくらファミレス内がガヤガヤしていると言えども至近距離でそんな声を出されたら驚くのか、すぐ近くの席に座る大学生が肩を震わしてこちらを見た。


「あ、すいません」

申し訳なさげに頭を下げて、DMを確認すれば待ちに待った人からの連絡が届いていた。


[2本目......あ、みう。さんと合わせて3本目の動画投稿しました。次よろしくお願いします]

MouTubeのURLと共に送られてきたその文言は、今のがどんな言葉よりも待ち望んでいたものだ。


[ありがとうございます!すぐに上げるんで楽しみに待っててください!]

そう送って動画を開こうとするが、


「あ」

そうや、ここファミレスや。DMを閉じると、さっきまでの喧騒が(よみがえ)って耳に入る。



「はぁ、勉強せんとな」

あーあ。まだ木曜やしよくない?再来週の月曜からテストなんやしさぁ。

今度はコーラを注ぎ、重い足取りで席に戻る。





「はい、それではテストを返却していきます。まずは模範解答を列ごとに配るので送っていってください」

ゆったりと喋る現代文の教師は、そのトーン同様にゆっくりと1番前の席の人へ模範解答の束を渡す。


まるで全てを諦めたかのように項垂れながら机の上で身を伏せる。


「あーこえー.......」

まぁ、正直ぶっちゃけ現代文は諦めてる。だってめちゃくちゃ難しかったし。ただでさえ苦手な記述が多かっただけじゃなくて、知識よりも国語力を試す問題ばっかだったからな。あんなん無理だ。


でももしかしたら、自分が想定したのとは違ってめちゃくちゃ合ってる可能性あるよな。国語の模範解答なんてあんまり当てになんない気がするし。


「はい、じゃあ次は鈴島さん」

隣の席からガタッと椅子が引かれる。不安そうな顔の彼女はそれでもしっかりとした足取りで答案用紙を受け取りに行った。



「はい、じゃ、二之前くん」

うげ、とうとう来やがったか。


聞こえるつもりがない返事をして席を立つ。周りの席では、答案が返ってきた者は頭を抱え、まだ返ってきてない者は祈っていた。


この光景はテスト返しの風物詩だな。ま、こんなこと言ってる俺も頭抱えたあの集団に加わるんだけど。


「はい」


「あざます」

答案を見ずに折りたたんで席に戻る。座る際、鈴島と目が合う。そのタイミングが、お互いの沈黙を破る。


「......点数見た?」


「あ、いやまだ見てない」


「そっか」

やけにしおらしい反応だな......あ、もしかして鈴島もあんまり良くなかったのか?ま、まあ、()って言ってるけど俺まだ点数見てないし!悪くない説あるし!


あの鈴島があんな反応のテストなのか......まだ見る準備出来てなかったけど見るかぁ。


答案から透ける自分の解答が見えないようになるべく意識せずに、解答用紙を開く。


..........えーい!どうにでもなれっ!!



「はーい、じゃあ30点以下の人は補修が来週の放課後からあるので来てくださいね。詳しいことはプリントを配布します」

そう言い残して、国語教師は教室を出た。皆が皆、各々友人の元へ向かい向かわれ、テスト結果を発表し合っている。


ま、別に煌生のとこ行かなくてもいいだろ。今日の放課後発表することは決まってんだし。


「....ん....ん〜〜」

手を伸ばして思いっきり体をほぐす。暖かな陽の光が伸ばした手のひらを覆う。あったけー。


ま、何はともあれ



これにて、全教科のテストが返却された。





放課後、足早に部活、または帰路へ向かうクラスメートたちの流れに逆らって俺は煌生の先は向かおうとカバンを持つ。


「あ、そっか!今から点数勝負か!結果教えてね!」

そんな時、先のクラスメートと同様に部活に向かうであろう鈴島に呼び止められる。

ま、元からそのつもりだったし。承諾以外何も無い。


「もちろん。部活頑張れー」


「......うん!ありがと!二之前君も頑張れ!」





「おい」

カバンを頭の上に乗せると、うげ。という弱っちい声をあげて煌生はこっちを見上げた。


その動きでずり落ちそうになるカバンを掴み直して、俺は、すでに出払っていた1つ前の人の席に座る。


「そんじゃ発表すっか」


「おう」

カバンの中から今までの8教科の答案をまとめたファイルを取り出して、机の上に置く。パサっという軽い音の反面、その内容および結果はどんな物よりも重く思えた。


「何から発表?」


「返された順でよくね?」

俺の質問にすぐさま答えたこいつの手には、既に1枚の答案用紙が握られていた。用意周到なこって。



直後、しばし2人の間で沈黙が続く。他のクラスメートとのコントラストがすげえな。前のあの時みたいに......いかんいかん。すぐ別のこと考えそうになる。


クラスメート全員が教室を出るのを待っているのか、周囲を見回す煌生に質問する。


「そういや、これってどういう感じで見せ合うんだ?いっせーのーでみたいな感じでやんの?それとも順番に点数見せてく?」

少し考えた後、煌生はにっこり笑って言った。


「じゃあじゃんけんで負けた方が先に点数言おうぜ!あ、毎回じゃんけんして決めた方がおもしれえな!

そうするか!」

一旦みんながいなくなるの待たねえとな〜と呑気にペットボトルに口をつける煌生はやっぱり余裕そうに見える。流石だなこいつ。



「うし。じゃあ始めっか!」

何人かは残るかと思いきや、見事に全員がいなくなった教室で煌生の声が響く。そりゃあ部活に行きたいか。テスト返却されて解放されたわけだし。


「んじゃ、じゃんけんだな」

じゃーんけーん......というタイミングが重なる。


「「ぽん」」



「じゃ、俺から見せてくぞー」

なんでこんなに楽しそうなんだよこいつ......まあ、この感じ見るにコミュ英良かったんだな。



そして解答用紙がこちらを向いた。






ここまで読んでいただきありがとうございました!また次回!

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