#45 後始末
え、嘘でしょ?マジで?Zer0さんが?
百華に聞き返すよりも先に体が勝手に動いていた。
急いでMouTubeを開いて、チャンネルに飛ぶ。
俺がこんなに驚いてるのには理由がある。
この前、ショート動画の方でも確かにバズっていた。だがしかし、それでZer0さんのチャンネル登録者が増えていたかと聞かれれば、そこまで無く微々たるものだった。
というのも、ショート動画は世界中の動画が長尺のものよりも多く流れてくるので、どんな人の動画でも面白ければ比較的話題になりやすい。
なので、ショート動画という観点からすれば、Zer0さんのそのバズりは特段珍しいというわけではない。
まあもちろん、ショート動画でバズるのもとてつもなくすごいことなんだけどな。
なんせ今回は長尺動画のバズりだ。
さあさあ果たしてどんぐらいなのかなーっと。
薄目で動画欄を開いた後、テストの結果を見るかのように一気に再生回数を見る。
「.........えぇっ!?」
それは俺の想定である1万超えるどころか次の桁まで突破しておりぶっちぎりで過去最高の再生回数、13万を叩き出していた。
「え、ちょ、まじか!」
すげえすげえすげえ!いつもっつーか、今までの長尺動画の再生回数は1万も行ってなかったのに!
やっべえなこれ!!コラボパワーってやつなのか!?
「.....めっちゃはしゃいでんじゃん」
目を向ければ、冷静な声で百華が俺の狂喜乱舞を見守っていた........あ、見放されてんのか。
「いやだってさ、ずっと応援してきた配信者がバズってんだぜ!?そりゃあこうなるよ!」
「.....ふーん、よかったね」
「おう!ほんとによかったわ!!」
テキストを広げて、勉強の続きをしようと無言で促す百華の前に座る。
「じゃ、続きすっか!」
「うん」
「あーつかれたー」
現在、百華に勉強を教えるのが終わってベッドでぼーっとしている。早く勉強しろって話だけど、こういう時やる気出ねえんだよなー。
「....あ、そういや」
おもむろにメッセージを開く。そういやさっきは母さんに連絡入れただけだったもんな。
[大丈夫なのか?]
[さっきのやつガチなの?]
[あれ煌生だよな?]
多少会話する程度のクラスメートから何名から先ほどの件についての連絡が来ている。わざわざ連絡先を追加までして連絡してきた奴もいるな。
[大丈夫、詳しい事は月曜日に話すから]
そいつらには当たり障りのない返信を同じようにしておく。ま、こう送っときゃ詮索はしねえだろ。
「......ん?」
通知を消化していく中、一際多いメッセージを送ってきた人が目につく。その送り主は
[二之前くん大丈夫!?]
[怪我とかしてない??]
などなど俺の身を案じてくれている内容ばかりを送ってきてくれて、その返信は2時間前の
[気がついたら返信してくれると嬉しいな]
というもので途切れていた。
「うわ、申し訳ないな......」
急いで返信する。
[ごめん、今気づいた]
[わざわざありがとう]
そう送ると、すぐに既読がつく。あまりの速さに、そこまで気を遣わせてしまったのかと申し訳なくなる。
[全然大丈夫だよ!体とか大丈夫?]
[うん、俺は怪我とか全くしてない]
[本当に?木場君もそう言ってたけどやっぱり不安]
うーん......煌生はともかく、俺は本当になんともないけどな。てかあいつは絶対大丈夫じゃないだろ。
......まあ、あいつは人に心配とかかけたくないタイプだし鈴島以外にもそう答えんだろうな。
[俺は本当に大丈夫。部室行ってすぐに先生来たし]
[そう?それならよかったけど......あれって何があったの?]
[それについてなんだけど、月曜日あたりに詳しく話すからさ。それでもいいかな?]
既読がついて一旦返信が途絶える。ちょうどそのタイミングで、コンコンと後方から聞こえてくる。
「ん......」
ドアを開けると、立っていたのは百華だった。
「...わかんないとこあったんだけど」
「おけ、ちょっと待っててくれるか?すぐ行くから」
「...うん」
そのやりとり最中、返信が来ていたようだ。
とりあえず返し終わってから部屋行くか。
[わかった!それじゃあテストも頑張ろう!]
そのメッセージにスタンプを送って、部屋を出る。
「......てかあれでよかったのか」
真っ暗になった窓を眺めながら今日の行動を振り返っているうちに口からこぼれ出た。誰かからその言葉への返事をもらえるわけがなく、時計が刻む音に被さるだけだった。
冷静になった今、正直言って自分の取った行動は新たな火種になるのではないのかという不安がひしひしと足元から迫ってきたような気がしてくる。
「......あれが拡散とかされて......」
学校中に広まるにとどまらず学外にまで...いや、それは考えすぎか。
一応、煌生に連絡入れとくか。
[なあ、今日のことなんだけど]
[どした?]
[俺通話しながら煌生んとこ行ったじゃん?
もしもあれ拡散されたらさ]
[あーそれね]
やけに手早い返信だな。なんかあるのか?
[一応俺連絡入れといたけど]
[どこに?]
[クラス全員のグループだよ]
え、そうなのか?すぐさまグループを開こうとするが見当たらない。......あれ、どこ行った?
まあいいや、ひとまず煌生とだな。
[なんて送った?ちょっと俺見れなくて]
[なんだよそれ。
まあ普通に、むやみに拡散しないでくれって言った]
「それなら......」
被害者本人である煌生がそう言うならば、そうそうクラスのみんなも広めたりはしないだろう。
なんせクラスカーストトップの男だしな。
[そっか、それなら助かる]
[おう、まあ最悪なんかあったらその時俺が言うわ]
じゃ、一旦は安心かな。てかあの桑島とかいう上級生含めその他は仮に何かあってもって話だ。自業自得。
「あーれほんとにどこ行ったー?」
思わず大きな声が出てしまう。トーク一覧をスクロールしながらクラス全員のグループを探すが、どこにも見当たらない。......消しちまったか?
いやいや!いくら俺でもそんな事はしねえよ......な?
「あ、ここかよ」
なんとまあ......ポンコツというか、おっちょこちょいというか...。
うっかりグループを非表示にしてしまっていた。大方、通知を切るタイミングで間違えて非表示にもしちゃったんだろうな。何回か試しちゃったし。
「うわ結構きてんだな〜.........ん?」
煌生がグループのみんなに先ほどのメッセージ通りの文言を送っているのを確認しているうちに、新たな通知がつく。
[ごめん勝手に追加した。大丈夫?]
「あぁ、松井か」
[美咲ちゃんすごい心配してたし、もちろん私もね]
[そっか、わざわざありがとう。大丈夫]
[怪我とかしてないならいいけど]
[うん、全くの無傷]
やっぱ申し訳ねえな。わざわざ連絡してもらってさ。
月曜日にちゃんと一言入れとくか。
その後、ちょくちょくクラスメートから連絡が来ることはあったが、「月曜日に話す」と伝えたことで深く詮索してくるやつは1人もいなかった。
昨日はあまり勉強出来なかったと大焦りで勉強机に向かった日曜日は、ほぼ1日中机に齧り付いて射たのでそれにはかなり助かったな。
そして月曜。
「はよっすー零斗ー」
「おう、おはよ」
教室内に入るといつにも増して周りの奴らからの目線をすごく感じる。多少は覚悟していたけど、まさかここまでとは。煌成は......こいつはいつも通りだな。
「......」
「ん?」
目の前に迫った煌成に手招きをすると、不思議そうに耳を近づけてきた。
「なぁ、いつ話す?」
出来る限り周りに漏れないように小さな声で話す。主語が抜けていても俺の意図をくみ取ってくれたのか煌成は小声で返してくれる。
「ま、今でもいいんじゃね?もう全員いんだろ」
その言葉を聞いて、教室全体をぐるっと見回すと確かにみんな揃っている。
「.....」
ふいに、鈴島と目が合う。彼女はいつも通り松井と共にいたが、なぜか俺たちの方を見ていたようで不安そうな目を向けている。
「...そ......うか?まあ確かにそうだな」
「だろ?んじゃあ、俺言っていいか?」
「.....おう、頼むわ」
「みんなーちょっといいー?」
煌成の言葉に、クラスみんなが注目する。不思議がる者もからかう者もいないのは、それが重大な事案であるからという事を物語っている。
「あのさ、俺土曜日の事なんだけどさ」
返事をするものは誰もいない。しかし、皆が真剣なまなざしで話に聞き入っているのが伝わる。煌成は続けた。
「まあ、そもそも秀一......あ、蔭山の事ね、があいつらに虐められててさ。多分皆なんとなくは知ってるかもだけど。んで、最近秀一は学校側にそれを報告してようやく学校に来れるようになってきたのよ」
「......」
俺は無言で煌成を見守る。......すごいなこいつ。
「で、土曜日に話は戻るんだけど、俺があいつらに呼び出されたのよ。俺が虐めの事を報告したんじゃないのかってことでね」
......あと5分ほどでホームルームの時間がやって来る。担任が来る前に話し終わってもらわなきゃな。
「まあ俺は報告とかしてないからさ否定したんだけどなかなか信じなくて。あいつらは憂さ晴らしに俺を殴らせろとか言いやがって。拒否したらまた秀一に手を出すっつって付け加えてな。」
改めて聞くと、最低な話だよ。自分たちがやった事を咎められたら反省するんじゃなく、逆上して暴力に走るんだもんな。
「俺は秀一と昔っから仲良いし、あいつが虐められてるとき何もできないでいたから殴られることを選んだのよ。そしたらさ」
トーンが一段上がった気がした。
「秀一が駆けつけてくれてさ。まあ、あいつも捕まっちゃって殴られそうになっちゃったのよ.......そんな時にさ!」
俺の肩に手を置く煌成。その手は、微かに震えていた。
「零斗が先生呼んできてくれただけじゃなく、みんなに知らせてくれてさ!おかげであいつらは生徒指導に連れてかれてさ!.....ってのが今回の大まかな流れなわけ、OK?」
「.....なんで蔭山と二之前は煌成のところに?」
1人の質問が沈黙を破る。あいつは...野球部の前田か。
「あぁそれはな、どうやら秀一は俺が部室に行くところ見てたらしくって。んでこいつは、秀一から電話貰ってきてくれたんだ」
俺の肩を軽く叩く。その手を優しく掴んで、席を立った。
「それで......お願いなんだけど、出来れば拡散とかはあんまりしないでほしいんだけど。あと画面録画してた人も他ラストとかに拡散はせず、先生に訊かれたとき見せてもらえれば.......いいですかね」
それを拒否してしまうと、どんな最悪のパターンが生まれてしまうのかを分かってくれたのか、皆が頷いてくれた。
「ありがとうございます」
「俺たちの話はこれで以上!みんなごめんな時間とらせちゃって!ありがとう!」
その言葉の後、教室内はがやがやと元の騒がしさを取り戻した。
俺と煌成は顔を合わせて笑い合った。
そして、残りのテストが始まった。
とりあえず、蔭山関連は一段落かなー!
ここまで読んでいただきありがとうございました!また次回!




