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#37 想定外の提案ばかり

今回滅茶苦茶長くなってしまった...申し訳ない

「...まじでやばいな」

帰りの支度をしながら意味もなく机の上をトントンと叩く。どちらとも完全に忘れていた事自分に呆れて何も言えない。ほんとにポンコツだな俺は。...こんな勝負負けるに決まってんだろ不公平だ!...いや俺も勉強すればいいだけなんだけどね。いやこれ何回言うんだ。

「大変そうだねー」

「聞いてた、今の?」

「うん。木場君頭良いから大変そうだなーって」

そう、今の通り煌成は頭が良い。ほぼ毎回、学年上位とまでは行かなくてもクラス上位には食い込んでるはずだ。てかあの手の陽キャって基本頭も良いのおかしいだろ!人当たりも良くて運動神経も良くておまけに成績も良いってか!?不公平だ!!...これも何回言うんだ俺。溜息をつきながらさてどうしたもんかと考えこんでいる中再度声を掛けられる。

「ねぇ」

「ん?どしたの」

「もしよかったらさ、私勉強手伝うよ?」

「え?」

突然の提案に動きが止まる。鈴島ももちろん頭が良いしたぶん煌成よりも点数高かった気が......手伝ってくれるんなら本当に助かるんだけどいいのか?

「あ、嫌だったら全然大丈夫なんだけどね!」

「いやいやいや全然そんなことないんだけどさ、むしろいいの?手伝ってもらっちゃって」

「うん。なんか面白そうだなーって思ったから!」

......そう言ってもらえるんならな。

「あー、じゃあそれならお願いしようかな」

「じゃ、連絡先交換しよ!まだしてなかったよね!」

いそいそとスマホを出して連絡先を表示する鈴島はなぜだか楽しそうで嬉しそうに見えた。それを見て俺もスマホを開き連絡先のQRコードを読み取る。

「おっけー!これでできたからまた詳しい話は私の方から送るね」

「おーい美咲ちゃーん」

「あ、夕夏ちゃん呼んでるし私行くね!ばいばい!」

手を振って松井の方へ走っていく鈴島を見送って俺も教室を出た。


「さーきにちょっと課題やっかー」

帰宅し部屋について早々ベッドにダイブ...としたいところだが流石にそうもいかない。なんせテスト前なのだから。それに鈴島に手伝ってもらうんだから課題ぐらいは終わらせとかねえと。できる男の俺はカバンからまだ終わっていないプリントを引っ張り出してシャーペンを握る。まずは数学っと。


「ふぃ~」

自分の中で目標としていたところまで終わらせられたので、課題をカバンにしまい椅子に掛ける。いつもよりも少し遅めにベッドへ倒れ込む。訳もなく複数のアプリを開いて打ったり来たりを繰り返す。

「あー疲れた」

目に映る多彩な画像を見送りながら己をねぎらう。今日もよく頑張ったぞ俺ー。...いやまあ寝たけど、寝たけどさ!俺は頑張ったよ!うん!課題もやったし!無理やり納得させながらスワイプしていくとメッセージアプリに行き当たる。

「まさか交換するとはなぁ...」

よもやこの俺が女子と連絡することになるとは思わなかったぜ!いやまあ協力してくれるって話名だけなんだけどさ、交換してくれることに意味があんのよ!

「....ん」

喜びのせいなのか、いつの間にか足がバタついていたようで少し恥ずかしくなる。持ってきたドリンクを一口飲んで首元に湧き上がる熱を冷ます。

「ふぅ」

なにか送ろうかなとは思ったがこちとら女子との会話方法など何もわからない陰キャなのだ。下手に送ってキモい奴だとか思われたくないのでここはノータッチで行こう。触らぬ神に祟りなしっていうしな。いやこれ使い方違うか。......まっ、詳しい話とかは送ってくれるってさっき言ってたし待っておきますか。

「配信やってっかな~......お、一昨日も配信やってたのか」

Zer0のチャンネルを開いて最新アーカイブの日付を確認すれば百華の事が思い出され、それと同時に蔭山の事も想起される。...あいつも大丈夫かな。なんかメッセージでも....あ、いや余分な気を遣わせたくないしな。

「はいはいFPSやってんのね。いいね~」

そこから画面に没入する。


『ちくしょーまた負けた!相手ももっと思いやりとか持てよ!』

[持たねえだろ][これFPSっていってね][ゲームに道徳持ち出すな]

「....今何時だー?」

ちょうどよくZer0がやられてくれたので時間を確認したところ6:00。まあ百華が部活から帰ってくるまで結構余裕あんな。....いや部活ねえんだそういや。え?なら百華は....あれ?

「...そういや百華は?」

階段を上がってくる音は見ている最中聞こえなかった。いや配信見てたから聞こえないと思うかもだけどさ、そこんところは任せろ。俺が百華の帰りに気づけないわけがない!....流石にキモいか。

「ん~?」

....まだ帰ってきてないのか?でも俺が帰ってきて30分は経ってるぞ?...あれこれ考えてもキリがないし

「下行くか」


「なー母さん......あ、帰ってたか百華!」

リビングに行くと一人掛けのソファーでスマホを見ていた百華が目に入りホッとする。なにか話でもしようかと、俺は別のソファーに座る。

「何」

「いやそのさ、百華と話したくて」

「...まぁいいけど」

おぉまじか、思ったより早い段階でOK貰っちゃったな。いつもなら「は?だるいんだけど無理」とか飛んでくるんだけどやけに優しいな。

「...何話すの」

「え?あのほら、学校の事とか!今日学校どうだった?」

「別に...普通だし。」

「そっか。そういやテスト近いよな、勉強大丈夫か?」

「赤点取ったら部活行けないんだし余裕。それよりお兄ちゃんのほうがやばいでしょ」

会話のキャッチボールはちゃんとしてくれるんだけど........あれ。

「あーまあそうだよな。俺はまあなんとかなるかなー!でも友達と勝負することになっちまってさ、相手頭良いからやばいんだよ!」

「ふーん」

「.......なあ百華」

「なに」

俺はこの会話中の違和感を問いかける。

「お兄ちゃんって...」

「嫌なの?」

「あ、いや別に嫌じゃないんだけど急になんでかなーって」

「別にそういう気分なだけ」

「そうならいいんだけど...あとさ」

「ん」

いやこれ別に普通の事か?まあでも訊いてみるか。

「なんでこっちのソファーに来たんだ?」

そう、さっきの会話が始まってから百華が急に俺の座ってる方のソファーに来たのだ。.......なんでわざわざ移動した?てか俺の隣とか嫌なはずだろ。いつもならそんなこと絶対しないのによ。俺の横で体勢を変えながらスマホを持ち替える百華は画面から目を離さずに答えた。

「別によくない?」

「え、ああまあうん。そうだな」

「てかさ、それ女子?」

「え?あぁいやいや全然男子だぞ」

「そ」

....え、何どういう事?ほんとになんでだ?俺変なことやっちゃったか?...いや変なことしたらむしろ態度悪くなるか。てかこれ鈴島の事言わない方が良いよな?ハテナマークが頭を埋め尽くす俺の事なんて構うことなく鼻歌交じりでスマホを眺める百華。....まあとにかく、こんなの今だけかもしれねえんだしいいか。


「~~♪~♪」

「..そういや最近その曲ハマってんのか?電話の呼び出し音もそれだったし」

「あーうんそう。まあ曲というか歌ってる人になんだけどね」

「へえ、流行りのアーティストとか?」

俺はテレビとかあんまり見ないから女性アーティストには全然詳しくない。...下手すりゃここ数年のアーティスト分かんねえかも。

「いや、アーティストとかじゃないんだけど...そのさ、」

「?」

「配信者?みたいな感じの人で」

「え、百華も配信とか見るのか!?それってどんな人だ?」

ずいっと俺の方から近寄って聞いてみると少し体を逸らしながらも百華は答えてくれる。

「...急になに。....まあゲームとかやってる人かな」

「おおいいな!...いやさ、俺もよくゲーム配信とか見るからさ!」

「.....それってあの蔭山さんが作ったゲームやってた人?」

「そうそう、あの人めっちゃ好きなんだよ~。まああんまり有名ってわけじゃないんだけどな」

「ふーん。私の推してる人もあんまり有名じゃないんだよね」

久々の会話らしい会話に思わず胸が躍る。そっか、百華も配信とか見るんだな!そういうの知れてよかった!...まあこういうのを知らないほど今まで会話できなかったもん、感動もでけえや。

「なんて名前の人?....ちなみに俺はこのZer0って人だ!」

チャンネルを見せながら訊いてみると百華は俺のスマホを覗き込んで今度は自分のスマホをスワイプし始めた。...ちゃんと布教してますぜ!Zer0!

「えーっと......この人」

そう言って見せてくれた画面にはヘッドホンを付けてコントローラーを持った女子のアイコンが表示されていた。えーと...?

「みう。さんね!後で見てみるわ!百華も今度Zer0見てみてくれ!」

「うん見るけど...兄貴勉強しなよ」

「うげ、忘れてた」

「あんたたちーご飯できたから準備してー」

いつの間に時間が経っていたのか、母親からの声で食卓に座る。


「~~~~!」

ガラにもないことやってしまった私は、夜ご飯を食べた後自室に戻って枕に顔をうずめる。ばたばたと布団を叩く足はどうにも落ち着けそうにもない。今はお兄ちゃんは風呂に入っているのでうるさいと思われることも無いので大丈夫なんだけど......あー!!!!

「....絶対変に思われちゃったじゃん.....」

昔みたいに呼び方を戻しただけじゃなくてわざわざ隣にまで移動しちゃってさ。こんなのおかしくないって思う方が変だよね.....でも、

「.....いっぱい話せてよかったんだけどなぁ...」

今まではどうしても素直になれずぶっきらぼうな態度ばかり取ってしまってたけど、元々おしゃべりはしたかった。だから事件が解決したこのタイミングで態度を変えれば、昔のように仲良くできるんじゃないのかって思ってあんな大胆な行動をとってしまった。めんどくさい女みたいな自分が嫌で枕から顔を上げられない。

「...でも優しかったなぁお兄ちゃん」

今も昔もずーっと私の事を守ってくれて優しいお兄ちゃんは尊敬だ。....あ、そういえば。

「Zer0、だったっけ.....」

顔を上げて紹介してもらった配信者のチャンネルを開けばずらっと配信アーカイブが並ぶ。...お兄ちゃんにはああ言ったけど課題も終わってるし今見ちゃおうかな。

「ん~これにしよ」

配信タイトルに惹かれたものを開いてみる。

「........この人ちょっとお兄ちゃんの声に似てて良いな...」


「いやーさっぱりした~.......ん?」

リビングで風呂上がりのお茶を一気飲みしながらスマホを確認すればメッセージが来てたことに気づく。

[こんばんはー!鈴島です!]

[学校ではああ言ったけど具体的には詳しいこととかまだ考えてなくてさ...]

.......なんて返すのが正解なんだ?まずは挨拶だよな。そんで次に......これでいいか。いや待てよ、この言い方だと別の意味に捉えられるかも....ならこれは?....うーん悪くないと思うけどイマイチしっくりこねえ。コップ片手に立ったまま文章を推敲していると

「...あんたなんでずーっと突っ立てるのよ」

母親に変な目で見られたのでソファーに座る。....よしこれでいいか。

[こんばんは]

[まあ手伝ってくれるだけありがたいし分からないところがあったら教えてほしいかな]

すぐに返信が来る。なんかわざわざ申し訳ないな。

[でも二之前君いつも寝てるからほとんどわかってないでしょ]

うっ、痛いところ突かれちまった。頭をふいていたタオルを首にかけて足を伸ばしながら、テーブルの縁を目でなぞりながら返しを考える。

[まあそれはそうだ]

[でもそうは言ったってさ、それしか思いつかなくて]

そう送ると既読が付いたまま返信が止まる。その間にトイレを済ませてこようかとスマホを置いてリビングを出る。


「ふーすっきりしたと.......」

トイレのドアを開けると、玄関には帰ってきたばかりの父が靴を脱いでいた。このタイミングに鉢合わせてしまう自分の間の悪さにため息をつきつつ声を掛ける。

「.......おかえりなさい」

「.......おぉ、零斗か。ただいま」

その父を待たずして俺はリビングに戻る。


「さーてとなんか来てるかな」

ロック画面を解除して開くとすでに何通か来ていたので急いで確認する。

[じゃあさ、時間がある日一緒に勉強しようよ!]

[自分、夕夏ちゃんとよく勉強してるからさ!]

[あ、嫌だったらもちろん大丈夫だよ!]

「...まじか」

おいおい女子から勉強のお誘いだって!?そんなのまるで俺がリア充みたいじゃねえかよ!.......え、ほんとにいいのこれ?いや向こうから提案してきてくれてんだけどさ。俺みたいなやつと勉強してくれるの?

「んー......」

すぐにOKしろよと思うかもしれんがこれには少し事情がある。まあいたってシンプルなのだが、簡潔に言うとモテるのだ。あ、俺じゃなくて向こうがな。同級生とかにしょっちゅう告白されるなんてのは流石に無いが、それでも告白されたというニュースは俺の耳に届いたことがあるぐらいには鈴島はモテる。顔が良いってのは言わずもがな、たなびくロングヘアーに透き通るような声。清楚でおしとやかを思わせるような見た目だが、話してみると気さくでよく笑う。そんな女子がモテないわけがない。それに、鈴島の言う夕夏こと松井夕夏もだ。彼女も人気が高いとは聞く話で、3年の先輩が告白して玉砕したなんて噂が流れてきたこともある。まあそんな2人と一緒に勉強なんて視線が痛いというかなんというか。...そもそも俺なんて手伝わせてるだけだし....。松井にも申し訳ないしな。そんな俺の考えをまるで見抜いてるかのように続けて来た。

[別に申し訳ないとか考えなくても大丈夫だよー?]

[一緒に勉強した方がさ、効率もいいじゃん!]

[あと夕夏ちゃんも一緒にしたいって言ってたからさ!]

少し悩んだが、決めた。ここまで行ってもらって断るなんて最早失礼だよな。この話は有難く受けさせてもらうとするか。

[ありがとう!]

[じゃあ一緒に勉強させてもらおうかな!]

[分かった!]

[じゃあ明後日とか空いてる?]

明後日か...いけるな。...まあ基本暇なんで毎日空いてるんですけども。

[空いてる!じゃあその時よろしくね!]

[こちらこそ!]

[そういえば二之前君って社会は...]


「そういやちょっとやっといたほうが良いよなー」

鈴島との会話もほどほどにし、せっかく教えてもらうんならこちらも教えてもらう側として態度があるということで自室の勉強机でテキストを開く。とりあえず古文だなー。

「.......これマジで授業でやったか?」

ほんとに頭に入ってこないしそもそも授業でやった記憶がない。......いや寝てたからなんだけどさ。

「あー......わっかんねえ」

こうも分からないと余計なことばかりが脳内を埋め尽くしてしまいますます集中できなくなる。......あ、そういやまだ何個か課題残ってた気が。

「え~っと......あ、やっぱ古典まだだよな」

思った通りまだ古典の課題は残っていたのでそれを机の上に広げる。理解できない教科書の内容に取り組むよりも終わりが見える課題を終わらせる方がずっといいな。......まあこっちも答え見ながらとにかく終わらせるだけなんだけど。


「ふぁ~あ。ねみー」

とりあえず答えの写経という名の課題を終わらせたあたりで眠くなってしまったので机の上にあるものすべてをカバンにしまう。あーねっむ。続きは明日やろーっと。

「おやすみー」

誰が聞いてるわけでもないがなんとなく挨拶だけして眠る。


深夜0:04、ゆっくりと目を覚ました零斗は無言のままいつものように配信の準備をする。シートを張り付けマイクをセットしパソコンを立ち上げる一連の流れは習慣化しているようで、止まることなく体を動かす。

「........ん?」

今日は何のゲームをしようかと適当なアプリを開いてポチポチ悩んでいたところ、配信用として使っているQuitterにDMが来ていることに気づく。もう1つの、というか恐らく主人格のようなものである法の僕がパソコンでQuitterを使っているのかはよく知らないが一応こっちのQuitterはうまい具合に隠してあるのでバレたりはしてないはずだ。そもそも僕が使ってるゲームやアプリは全部隠してるし。

「....リスナーとかからかな」

口に出してみたもののその可能性は低いと思われる。というのも、Quitterで何かを呟いてそれにリスナーが反応してくれた時僕は何の返信もしないからだ。なんせこんな体の僕なのだから全部に反応するなんて不可能だ。かといって返せる範囲だけ返すというのも不公平な気がするので、とにかくQuitterは反応したりできないとアカウント作った当初配信で言っておいたしプロフィールに書いている。...じゃあ誰が?...まあどうせスパムアカウントとかかな。


「......ん.....?」

開いて画面に表示されたのは長文のメッセージ。やけに暇なスパムだなと思いつつ読んでいくと、どうも違うようだ。そもそも文頭から丁寧に[お忙しい中失礼いたしますZer0様]から始まっている。...え、これもしかして。

「....コラボ...?」

その言葉の通り終わりの方にはには[コラボをしていただけないかと今回連絡を取らせていただきました。]と書いてある。ざっくりとした内容は、どうやらこれを送ったのはマネージャー?のような人のようで、この人がマネージメントしている配信者が俺を偶々見つけてコラボしたいという話を持ち掛けたらしい。

「........」

配信者という同業の人間から認められてこうして向こうからコラボを依頼されている事実に、その文章を1文字読むごとに体が震えて熱くなるのが分かる。...っとまずは向こうの配信者さんが何者なのかだな。

「えーと......これか」

メッセージに書かれていたIDを押すとすぐにあるアカウントへ飛ばされる。配信者であろうこの人のプロフィールは妙に既視感があるようなもので。


「....みう。さんねえ」

次回もZer0視点で始まると思います!!


そろそろ年末なんで投稿頻度が落ちるかもです....どれだけ文字数少なくてもとにかく更新は頑張ろうって気概で行きます!ここまで読んでいただきありがとうございました!また次回

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