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#28 重なるその姿は

こういう話だと会話文が多すぎて全然地の文を挟めない...。塩梅が難しい。

語られた真実を俺も煌成も黙って聞く。煌成はもう殴ってやろうなんて思っていないのか、蔭山を見下ろすように立ったままだ。

「..........それで?」

「.....それで.....あいつらの部活道具とか、勉強道具とかを.........ぼろぼろにしてやった」

「あいつらってのは?」

「.......虐めてきた前のクラスの奴と......それと」

「部活の奴、だろ?」

蔭山の逡巡を取り払うかのような煌成の言葉にゆっくり頷く。.......そりゃあバレねえもんな。監視カメラとか、教室に仕掛けられてるわけねえし。

「........」

「....途中でやめようとか思わなかったのか」

「...やめる?なんで?」

「.......い、いやそりゃお前、やってる事犯罪みたいなもんだろ」

思わぬ切り返しに戸惑いながらも返答する煌成は、俺の横に座った。俺も次いで質問しようかと思ったけど、話の方向性が拗れそうだ。大丈夫か?


「.....なんで僕はやめなきゃいけないの?」

「は?」

「あいつらはやめてくれなかったのにさ。なんで僕はやめてあげなきゃいけないの?」

「いやでもさ...秀一のやってること、犯罪――」

「犯罪だからダメなの?じゃあ犯罪じゃなかったら何をしてもいいし、やめなくていいんだ?」

「いやそういうわけじゃ.....」

「だってそういう事でしょ?あいつらが僕を虐めてきた時は煌成、やめろなんて言ってなかったし」

「..........」

まずい、煌成が何も言えなくなっちまった。.......今度は俺の番だな。項垂(うなだ)れる煌成の肩に手を置きながら、俺はたまらず口を挟む。

「あのさっ!」

「......なに」

「その....お前があいつらに何をされたのか、教えてほしい」

「......何のために」

大丈夫だ、取り繕わずにありのまま伝えればいい。もっともらしい理由も考えず口を開いてしまったので大慌てする脳内を、そう言い聞かせて落ち着かせる。いくらかマシになった俺は心配そうな目をする煌成に軽く、でもそれでいて強く頷いた。

「...うまく言えないけど、知らなきゃいけないって思ったから」

「.....?」

「.....妹をあんな目に遭わせたお前の事をさ、最初はすっげえ恨んでたけどよ?....でもさ、お前がどんな事をされたのかも知らずにただ一方的に責めるのは違うと思ってさ」

「...知ったところで何になるの」

「そ、そりゃあよくわかんねえけどさ.......でも、お前を追いつめたものも知らずに、俺はこのままお前の事を恨めないし、許せない」

蔭山は可愛い可愛い俺の妹をひどい目に遭わせた人影。つまり『加害者』だ。でも、それ以前にこいつは虐めを受けて不登校になってしまった『被害者』なんだ。同じ人間だけど、同じ人間じゃない。今度は『被害者』の蔭山の事を俺は知りたい。心のどこかでうっすら感じていた義務感が意思へと変わるのを感じた。

「..........」

「お前もこのまま虐められてきた事実が、誰にも知られず闇に葬られてもいいのかよ。.....なあ、頼む」

本日何度目かの沈黙の帳が下りるこの部屋を破ったのは、小さくか細い蔭山の声だった。


「......1年生のころ、入学してすぐに僕は学級委員になった。......別に押し付けられたとかじゃなくて、自分から立候補して。....中学生の頃からそうだったから、今までみたいにクラスのために頑張ろうっていろんなことをした。毎朝誰よりも早く教室に来て、黒板の掃除や花瓶の水の交換。それに放課後も部活前には日誌を渡しに行ってた」

「うん」

「.......初めのころはクラスのみんなは、優しいって褒めてくれて楽しく過ごせてた。...........でも、」

その言葉を機に、より一層、蔭山の声は弱々しく、脆くなっていった。


「いつの日か、皆の態度がよそよそしくなってた。向こうから話しかけてくることはめったになくって、僕が話しかけても適当に返事してそれで終わり。......最初は偶々かなって思ってた。....でも、部活前に忘れ物を取りに教室に行ったときに聞こえたんだ。僕はキモいって」

「........」

「.....その時、大人しく聞こえないふりでもしてればよかったのになぜか僕は教室に入ってその会話をしている人たちに聞いたんだ。僕が何かしたのかって。.....今思えば、その対象が僕であろうと他人であろうと、自分が委員をしてるクラスで虐めだったり陰口が横行するのが許せなかったのかな」

「....それで?」


『.......ちょっと、今の話で言ってたのって僕だよね、僕何かした?』

『うおっ。.....はは、噂をすればご本人登場じゃん』

へらへらしているそいつらは急に、立ち上がって僕を囲んだ。....そいつら4人は、いつも授業の妨害をするし、校則違反の物を持ってくるしで教師を困らせるクラスの問題児だったから、僕もたびたび注意してた。

『.....なに?』

『いやさ.......』

1人がそう言いかけて、突然僕のお腹を殴ったんだ。

ドスッ

『うっ.........ゴホッ.......何するのいきなり.......』

倒れこんでお腹を押さえている僕に、他の3人も殴ったり蹴ったりし始めた。.....何も言わずに僕を痛めつけるあいつらは、怖かった。そのあと、満足したのか急に静かになって僕を見下ろした。

『.......うっ、ゲホッ.......ゴホッ.......これ...虐めだよ....?分かってるの.......?』

『あはははは!虐めだよ?だってよ!!』

『さっすが委員長!』

『お堅いねぇ!』

その後、笑ってるそいつらの中の1人が僕の顔を殴った。そいつは他の3人よりも一際体が大きいから、リーダーみたいな奴。

『お前さあ、いい子ちゃんぶって教師のご機嫌取りでもしてんの?内心稼ぎ?キモいんだけど。死ねよ』

『..........』

『何黙ってんの?』

それからまたあいつらは僕を虐め始はじめて。....終わったのは10分後とかだったかな。

『あーもういいわ、うぜえから早くどっか行けや』

僕はその言葉を聞いて急いで教室から出ようと立ち上がった。その時に言われたんだ。

『.........!』

『あーお前さぁ』

『.............な、なに......』

『今の事、担任にも他の教師にも、親にも伝えんな。つーか誰にも言うなよ?』

『..............』


「言ったらどうするって言われたんだ?」

あの頃の恐怖を止めるように、膝を抱え込みながら語る蔭山の顔はだんだんと曇っていった。


『もし言ったら普通にあれだから、お前殺すから』

『..........』

『それかあれかな、今度はクラスの別の奴も一緒に虐めてやろっかなー』

『.........そ、それはやめて』

『あっはっは!お前いい子ちゃんすぎんだろ、もうクラスで浮いてんのに』

その言葉を聞いてないように、逃げるように僕は教室を出た。


「..........教室から出た後、どうしたんだ」

......ここまでとは。こんな事が俺の学校であったなんて、にわかには信じ難い。信じたくない。

「....部活行く気にもなれなくて、そのまま家に帰った」

煌成の方を見ると思い出すように眉をひそめていた。が、すぐに思い出したようだ。

「....そういやその日って顧問が出張でいなくて、自主練みたいな感じの日だったような」

「...よく覚えてるね」

「......あの日、やけにお前が帰ってこないから探しに行こうとしてたんだよ」

「.....行こうとしてた()()ね」

強調するような言い方に違和感を覚える。でも、今はそれより聞くことがある。

「...親は気付かなかったのか。家に帰ってきたお前を見て」

「そりゃあ驚いてさ。....でも、あいつらも上手いよね。殴ったり蹴ったりするのは決まって顔から下の、制服で隠れてるところばっかだったから、見た目はほとんどなんともない感じだったよ。.....目立ったのはあいつに殴られて赤く腫れた頬だけ」

「.....それで、親はなんて」

「大丈夫か、何かあったのかって大慌てで聞いてきたよ。...........まあ、何も言わなかったけど」

「......それからクラスではどうだったんだ」

最悪だったに決まっていると知っていながらも、俺はそう聞くほかなかった。


「....次の日からはもうあからさまだったよ。僕本人にあんなことしたから、もう隠す必要もないと思ったんだろね。教科書やプリントは破られたし、上靴や筆箱は隠された。教室内で歩いてると足をかけられたりもした。クラスのみんなはもちろん見て見ぬふりだったし、無視ばかりだったよ」

散々痛めつけられる挙句、周りからはまるで自分がいない存在かのように扱われるのは、どんな気持ちだったのだろう。俺には想像出来ない。でも、その出来ない想像すらも矮小に越えてくるほど絶するものだったのは間違いない。

「........段々あいつらもヒートアップして、教室内で暴力を振るってくるようになった。.....それまでは放課後に、教室や誰も通らないような階段に呼ばれて殴られたりしてたんだけどね」

「.....そこまでいったんなら担任に言うべきだろ。あいつらの言う事聞いてる場合じゃねえって。......てか、担任も他の教師も気づくだろ」

「僕もそう思ったさ。でも、」


でも、現実はそう僕に対して甘いものではなかった。他の教師は教室内でじゃれるなと言った。多数で一方的に殴る蹴るの暴行が、大人にとっては幼子の戯れに思えたらしい。軽く絶望した後、とうとう僕は担任に相談することにした。

『....で、どうしたんだ?蔭山』

『...その、実は僕、クラスで虐められてるんです』

ようやく言えた。これで担任がなんとかしてくれる。辛かったこの虐めも、もう終わるんだ。そう思った僕の心はやすやすと打ち砕かれた。

『.....あーその、虐めってあの教室でのやつか?』

『そうです、その事です!』


『あれって.....遊んでるだけじゃないのか?』

『.......え?』

思考停止した僕に追い打ちをかける教師の言葉は刺さって抜けない、まるで楔の様だった。

『ほら、高校生の男子ってああやって遊ぶもんだろ?その、ノリ?っていうか』

『............』

........遊んでるだけ?僕の暗雲かがかった重く苦しい日常は学生特有のノリとみなされたし、(こいねが)う僕の気持ちは踏みにじられた。僕は担任の正気を疑ったけど、そうではないのかもしれない。もしかしたら担任は気付いていた。でも、自分が受け持つクラスで、どこか他人事のように思っていた虐めという事態にまだまだ青い自分が対処するのは骨が折れる、大事にしたくないとでも思った。だからあんな言い方をして言いくるめた。..........あの担任に限らず、ほかの教師もそうだったんだろうな。


軽々しく言い切った担任の顔を、僕はもう覚えていない。

楽しいクラスにしたかったから、そんなクラスの委員になりたかったから。それだけだったのに、


「なんでこんなことになったんだろうな........」

その独白は形容しがたい負の感情を含み持っていた。しかし、その言葉を捕まえることも出来なかった俺はその代わりの言葉を口にする。

「なあ今までの話ってさ。その....あのゲームの」

「.......ああそうだよ、よく分かったね。......()()()はあのゲームの設定にちょっと使ったよ。」

「.........こっち?」

ところどころ重なる言葉はあった。でもあのゲームよりも、蔭山が経験したこの事はずっとおぞましい。自分が対処しようとしている問題は、思っていたものよりずっと暴悪で闇を孕んでおり話を聞くことさえ間違っているとさえ思わされた。そんな中引っ掛かった言葉に、ここでは質問を入れる。でも、蔭山はそれに返答する訳でもなく、俺の少し右に顔を向けた。


「ねえ煌成」

「.....な、なんだよ」

「さっき煌成さ、僕が教室行ったっきり帰ってこないから探しに行こうとしたって言ったよね」

「......ああ」

突然の質問。その意図が理解できない煌成は、何を言うつもりなのか全くわからない蔭山に小さく答えた。.......俺も全く分からない。

「それってさ、部活の奴に止められたでしょ?」

「..........え?」

言い当てるようなその言葉に俺は声が漏れてしまう。驚愕する俺とは対照的に表情を変えない煌成は

「ああ」

と短く答えた。


「まあしょうがないか。僕部活でも嫌われてたし虐められてたし。ね、煌成?」

「..........」

..........そうだ。すっかり失念していた。今までのこれはまだ、クラスで起こった出来事。部活の話はこれっぽっちもしていない。つまりこれから話すのは部活での出来事という事か。


「高校入学してすぐ、僕はバスケ部に入った」

その前口上から、今度は部活について語られる。


教室でもクラスでも虐めって....ちょっと重すぎるなこれ。いや自分で書いたんだけどさ。


ここ数日PV伸びてめっちゃうれしいです!この調子で頑張ります!ここまで読んでいただきありがとうございました!また次回!

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