#27 実は被害に遭ったのは
「.....」
「.....」
蔭山の告白に、俺たち2人は何を言うわけでもなく、ただただ蔭山を見つめた。
「.....僕が夜の学校に忍び込んだんだ」
「..........何回も?」
「.....ああそうだよ!何回も何回も忍び込んださ!」
半ば自暴自棄になりながら煌成の質問に答える蔭山は、テーブルの上のプリントをびりびり破り始めた。が、やがて大人しくなり俯く。俺と煌成は目を合わせて合図をする。.......頼むぜ、煌成。
「.......なんでこんなことしたんだ。秀一」
「..........言いたくない」
「.....言ってくれ」
「......嫌だ」
「..........頼む。秀ちゃん」
「............」
昔の呼び方であろうその呼び名に、蔭山の肩がピクリと動いた。そしてそのまま顔がゆっくりと上がる。その顔は神妙なものだが、煌成の願いに心が動かされたように見えた。
「.......さ、最初はゲームを作るために忍び込んだんだ。...さっきのあのホラーゲームだよ...」
「....なんで俺たちの学校をモデルに?」
「......別に深い意味はないよ。....ただ細部まで見れるモデルがあの学校しかなかったし、ちょうどよかっただけ」
「......いつから?」
ところどころ詰まりながらもぽつぽつと語り始める蔭山とそれに対して随時質問を投げる煌成。頭上でおこなわれるやりとりを追いかけながら、百華の事を考えていた。.....百華は今何してんのかな。.....つーかこれで人影の正体は分かったけど、明日から学校行けるようなんのか?.....正直、蔭山のことを言ったとて信じないだろうし、信じたとしてもトラウマ自体は癒えない気がする。......いや、でも.....うーん....。
「不登校になってからすぐだよ。.....もしかしたら普通に通ってた時にも行ってたかもだけど、もう覚えてない。とにかく、かなり前から
「...そんなにか」
俺も驚いた。いやまあそりゃそうか。個人でゲーム作るって言ってもあのクオリティは数週間程度で完成する訳ないもんな。......てか誰も気づかなかったのかよ。...お母さんとかもさ。
「.....じゃあお母さんとか、学校の奴らにはバレなかったのか?一昨日より前に」
「.....別に毎回わざわざドアから出てってるわけじゃないし。....窓から屋根伝って下りていけばいいだけ。....学校の奴らは知らないよ。噂になってないんならバレてないんじゃない。.........それに、毎日行ってるわけでもないし」
「......そうか。そういう理由だったんだな。....で、最初はってどういう意味だ?」
そこは俺も気になってた。なんでそんな言い方をしたのか。.......じゃあ今から話す理由は本来の目的ではないってことか?...いや、わかんねえや。無い知恵絞って考えるもんじゃねえ。とりあえず蔭山本人が話すのを聞こう。だが、それからのやりとりは今までのようにスムーズとはいかず
「.........言いたくない」
「........は?」
「............嫌だ」
「........お前っ....いい加減にしろよ........!」
「あっ、おい!」
蔭山の顔が再び俯き、これ以上の会話を拒否する。それを見て掴みかかろうとする煌成を、俺は一瞬遅れて止めに入る。向かい合っていたが、煌成が足を崩してだらっと座っていたのが功を奏して、あと少し手が届くというところで何とか止めることができた。危ねえ危ねえ。
「何すんだ零斗っ!離せっ!!」
「よせバカッ!ここでそんなことして何になんだよ!」
「うるせえ!1回ぶん殴らねえと気が済まねえ!.....こいつっ!自分が何したのか分かってねえんだよ!!」
「おい落ち着けって!」
首元キツくしちまってるけどしゃーねえ、今止めなきゃやばい!今にも掴みかかろうとする煌成を後ろから無理やり止める。そんな俺たちの押し問答が続く中、何を思ったのか顔を上げた蔭山は口を開いた。
「......僕が何したの」
「「.........は?」」
................こいつは何を言ってるんだ?ワンテンポ遅れて俺と煌成の声が重なる。俺は、部屋がより一層険悪な雰囲気になっていくのを肌で感じながらも煌成を止める力を緩めないまま問う。
「.....それどういうことだ」
「......だって、考えてみたら僕何も悪いことはしてないじゃん。.......犯罪したとかでもあるまいし」
「......っ!」
確かにそうだ。こいつがやったことはただ、学校に行っただけ。ただ、部活終了後の学校に行って見て回っただけ。何も言えない俺に変わって、止められたままの煌成が口を開く。
「.......お前を見て怖がってる生徒もいんだよ!犯罪とか、そういう話じゃねえんだって!」
「..........!...........そっ、そんなの、ただ僕を見た生徒が勝手にビビっただけじゃん!そんなん知らないよっ!」
「......は?」
その言葉が引き金になったかのように、一昨日、学校に探しに行った時の百華を思い出す。弱々しい声に震えた体で百華は縋るように俺に飛び込んだ。それでも、付き纏う孤独や不安、恐怖は考えられないほどだったに違いない。それでも百華は、俺に悟られないよう、それを隠すように普段通りを振舞っていた。...........そんな俺の大事な妹が、勝手にビビっただけ?怒りと同時に決心、理解する。.........ダメだ。俺はこいつと話さなきゃ。
「おいてめっ.......!」
「....いや、いい煌成」
「..........でも......!」
「良いよ。俺が今から話すから」
「...............分かったよ」
まだ怒りが収まらないといった様子だがある程度落ち着いたであろう煌成を離して代わりに俺が座り、語り始める。
「.......なあ蔭山」
「................なに」
「......実はな、さっき煌成が言った生徒、俺の妹なんだよ」
「................え」
重大なことを知ってしまったかのように目を丸くした蔭山はやけに子供っぽく見えた。愕然としたその顔のまま、言葉が漏れる。
「.....う、嘘だ」
「嘘じゃねえよ。二之前百華。俺の可愛い妹だ」
「...........」
「一昨日、部活が終わった後、忘れ物を取りに教室に向かった百華はお前と出くわしたんだよ。...........あいつはな、今、家にいる。昨日からずっと部屋にこもりっぱなしだ」
「.......!......なんで」
「....考えてみろよ。女子が1人で暗い教室にいるとき、得体の知れない何かと出くわすんだぞ?どれだけ怖えことか。.........俺たちにゃ分からねえだろうよ」
百華の今、そして心情を伝えることができた俺は、今日来た意味が少しはあったのかもなと思えた。でも、それだけじゃだめなんだ。ただこっちが話して満足するなんて、和解を生まない。和解とは、理解を経て初めて得られるものだ。.......そのためにはまず、蔭山の理由を聞かなければ。
「....百華、もう学校行きたくないって言ってさ。.....このままずっと部屋に閉じこもったままかもしれねえ」
「.....」
「.....お前もさ、自分のせいでそんな人が生まれるなんて嫌だろ?....でも、お前にも事情ってのがあったと思う。まあもちろん、それがあったから許されるわけでもねえけど。....俺はそれを知ってやりたいし、百華にも知ってもらいたい。......いや、こんな言い方良くねえな」
「............」
「.......蔭山、頼む。理由を話してくれ。本当に頼む」
普段の俺なら、同情を誘う言い方はいかがなものかと思うだろうが今はそんな事を言ってられない。百華のために、今もなお苦しむ妹のために、どんな手段も取ってやる。
「................最初は、さっきも言った通り、ゲームのためだった。でも、ある日思っちゃったんだ。今ここにいるのは自分だけ。なら、バレずにあいつらを苦しめられるって」
百華、大丈夫かな
なんとか土曜日中にあげられた.........。明日も頑張って書こう。ここまで読んでいただきありがとうございました!また次回!




