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#26 証拠提示

「....................え?」

蔭山から不意に出たその言葉の後、部屋全体の温度がサーっと下がっていくような気がした。まだ春先なのに寒気を感じるこの部屋から、俺は一刻も早く逃げ出したい。でもそんなことは出来ない、しちゃいけない。どうなろうと目を逸らしちゃいけないんだ。俺がこうさせたんだから。

「なんで....?僕じゃな―」

「はぁ......いいよもう誤魔化さなくて。俺も零斗も分かってる」

蔭山が言い切るのを待たずして、煌成はテーブルの上で手を組んだ。今までとのあまりの変わりように口を挟むことが出来ない。.....これが煌成の覚悟なのかもしれない。

「....てか、そもそも今日ここに来た理由もこれみたいなもんだし。....あ、ちなみに、零斗が秀一と話をしたいってのはほんとだからな。まあ、それはお前が人影じゃないのか話がしたいっつーことなんだけど」

「..........!」

驚いたようにこちらに顔を向ける蔭山と同時に、俺は顔を明後日の方向に向ける。顔を合わせたくない、その行動が俺の後ろめたさを自覚させた。........蔭山は今どんな顔で俺を見ているんだろう。憤慨か、悲壮か、はたまた諦観か。

「.....どこに僕がやったって証拠があるの......」

恐らく俺の方から再び正面を見据えた蔭山は絞り出すかのように弱弱しく問うた。何とか俺も2人の方を向くと、煌成が右手を床につけて立ち上がる動きを見せる。....何するつもりだ?まさか、さっきの証拠でも見せんのか?という俺の予想と煌成の行動は異なった。

「.......まっ、いまから零斗が話すからそれ聞け。.......じゃあ頼むわ零斗」

「..................ぇ?」

......え、ここで俺?一瞬フリーズした頭でなんとか理解して、無理だできない、と口を開こうとした。でも、託すように俺の肩をポンと叩いて託した煌成を見て何も言えなくなった。.......俺も覚悟決めるしかねえな。俺は、煌成と入れ替わるようにして、蔭山の正面に座る」


ふう、一息ついて蔭山の顔を見ると、真剣というか本気というか、まあよく分からんが、とにかく腹を決めたような顔をしていた。

「.......えーっと.....何から話せばいいかわかんねぇんだけど、まあ昨日から学校ではさ、朝から人影の噂で持ちきりだったんだ。........あ、それは人影と鉢合わせた生徒の父親が朝から校長室に怒鳴り込んだかららしくって。そんで、その人影の正体は誰なんだって話にまあもちろんなるんだけどよ。その正体が、その、」

「僕だって事なんだ」

ゆっくり頷く俺を見て下を向く蔭山。心が痛んだが、それでも続けなければならない。

「....あ、そう。....で、まあそういうのがあって、その後に煌成から幼馴染ってのを知ったから今日ここに来た」

「....それだけで僕が犯人って?」

「......いや、そういうわけじゃねえ。ここに来てからもいくつか怪しいところがあったんだよ。....まずは、まぁこれは引っ掛かったとこなんだけど。俺さっきさ、一歩も家から出ないのかって聞いたろ?で、お前は日中は基本って答えた。...その時にさ、なんでわざわざ日中って言い方したんだってさ、思ったわけよ」

「.......それだけ?」

喋りすぎた体を一旦ほぐすために、体を伸ばす。そのタイミングで煌成と目が合ったが、すぐに逸らした。テスト中に時計見ようとしたら教師と目が合ったときみたいに。.........なんとなく気まずくなったんだ。煌成(友達)の幼馴染を詰める自分を客観的に見て。でも、それでも俺は続けないといけない。


「....んや、いくつかあるってさっき言ったろ。.....で、次にさ、パソコン見せてもらったじゃん?俺。その時見つけて、お前にこれはゲーム制作ソフトで普段からゲーム作ってるって言われてさ。」

「.....それと何の関係が」

「まあまあちゃんと聞けって。そんでさ..........」

俺はスマホを取り出してMouTubeを開いた。そして煌成に見せた時みたいにZer0のチャンネルを開いて、あのアーカイブの最初のタイトル画面を見せる。

「.........これがなんなの」

「これ、お前が作ったゲームだろ?」

「........っ!」

画面を見せた途端、目が泳いで落ち着きがなくなったように見えたが、素知らぬふりをする蔭山だったが、バレバレだ。それを見落とすほど俺の目は衰えてねえ。それでも、蔭山は気丈に言い返す。

「....知らないけど?そんなゲーム初めて見た」

俺は画面を入ってすぐの1階を探索するところまでスキップして、もう一度見せる。

「へー?この教室の並びとかうちの学校と一緒なんだけどなー?.......そんで2階も[1-5][1-6]配置同じだしさー?しかもその隣が化学教室ってさ、もううちの学校じゃんこれ。..........で、しかもさ」

「...........」

極めつけにエンドロールのところまで飛ばす。これがこのゲームと蔭山の関係を示す一番のシーンだ。

「.........製作者カゲって書いてあんだけど。これお前だよな?.......なんで不登校のお前がうちの学校の配置を知ってんだか。......まさか夜な夜な学校に忍び込んでるとか.......なんてな」

「.......そんなの偶々だろ!たまたま高校と配置が一緒だっただけ!....そうじゃないにしても、僕じゃなくて学校の他の奴が作ったに決まって――」

「.......。じゃあ今すぐそのソフト確認してみるか?何かしらのデータは残ってんだろ」

「......嫌だね!そんなのプライバシーの侵害だ!見せるわけがない!」

「じゃ、学校の中でカゲに関係するやつに聞いて回るか?....いや、1人1人に聞いて回ってもいいんだぜ」

「.....そ、そんなことできるわけがっ.....!」

「できるさ」

舐めるな。妹を想う兄を。


段々ヒートアップしてきたのを頭では理解していたが口は止まらなかった。途中で俺と蔭山を仲裁するように煌成が手で制してくれなければもっとひどかっただろう。これで蔭山が人影なのはほぼほぼ確定したと思うが、本人の口から言わせなければいけないと思った。自分の罪を自覚してもらうために。

「.......ま、ひとまずこれは置いといて。ついさっきお前がトイレで部屋から出て行った時なんだけどさ」

「......?...............ぁ」

立ち上がって本棚に向かう俺の後ろから、小さく蔭山の声が聞こえてくる。その声に反応せず、俺は棚からプリントを1枚、持ってきてテーブルに置く。

「これが部屋に落ちてて。まあたぶん俺がパソコン見てる間に本棚の整理してたお前が捨て忘れたものなんだけどよ......」

「こ、これが何?ただの学校からのプリントじゃないか!うちの家にあってもおかしくない!」

「.........確かにこのプリントがお前の家にあんのはおかしくねぇよ?問題はここにあることだよ。なんでお前がこれ持ってるんだ?」

「....そ、それは届けてもらったときに受け取って...!」

「へぇ、さっきお前のお母さんがお前が部屋から一歩も出てこないって言ってたけど?」

「......っ!い、いや、お母さんがいないときに受け取ったものだから!渡しそびれてそのままここに置いてただけだし!」

......なるほど、その可能性はありえるな。.....うーん。どうしたもんか。次取るべき行動に迷いが生じる。それと同時に煌成が立ち上がった。トイレか?疑問に思う俺をよそに煌成が向かったのは、ごみ箱だった。

「.....あっ!煌成そこは!」

蔭山の声など聞こえていないという風にガサゴソとゴミ箱を漁っている煌成は、やがて大量のプリントをい掴んでこっちに持ってきた。その内容は[臨時時間割のお知らせ][学校ホームページURL変更について][生徒指導からの通達]などと学校関連の物ばかりだ。煌成ナイス。思いがけないアシストを得て、俺はますますまくしたてる。

「へえ~~。このプリントぜーんぶ、母親がいないときに受け取ったんだー。すごい確率だなあ?」

「........」

「..........じゃあなんで全部お前の部屋にあるのかねえ。....もしかして全部お母さんに渡し忘れてたのか?あーそうか、そうだよな!すまんすまん!」

「...............別に僕の部屋にあってもいいだろ」

「......なんでお前の部屋にこれがあんだよ。お前不登校だろ?学校の事関係ねえじゃん」

「...........」

ひねり出した言い訳もぴしゃりと否定すると蔭山は無言になるが、それでも続ける。

「.....だからさ、お前学校に行ってんだろ?行ってるからこれ全部お前の部屋にあるんだろ?違うか?」

....ちょっと言いすぎてる感はあるが、こんぐらい言わないと本人は認めないはずだ。自分の罪を。



「....とまあこんなところが今日怪しいなって思ったとこなんだがな。.....お前じゃないのか?蔭山」

「............」

「...............秀一」

ふと、煌成が口を開いた。その言葉で俺も蔭山も一斉に煌成の方を見る。あいつの顔は今にも泣きだしそうなくしゃくしゃの顔で蔭山に縋るような目をしていた。

「.......本当にお前じゃないのか?..........正直に答えてくれ。俺も煌成も、ただ責めるためにここにきたわけじゃねえんだ。.........頼む、答えてくれ」

俺は口を挟もうなんて思わず、ただ黙って蔭山の答えを待った。蔭山は下を向いて何も答えない。誰も言葉を発さないこの部屋で、時計が秒針を刻む音だけが耳に届いた。でも、俺と煌成はこの静寂を破るつもりなんてない。どんだけ時間がかかるとしても待ち続けてやる。..........やがて、実際は数十秒しか経っていないだろうが何分にも何時間にも感じられた沈黙を蔭山が破る。


「.............そうだよ。......僕がやったんだよ。僕が...............犯人だよ」

やっと人影の正体判明しましたね!イヤー長かった!


ここまで読んでいただきありがとうございました!また次回!

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