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#25 その対で

「.........うっ......グスッ......」

まるで鬱屈とした自分を表しているかのような暗い部屋の中、響くのはすすり泣く声だった。カーテンの閉め切られたこの部屋は隙間から少し光が差し込む程度。何かをするには不便という他ならない。でも、今はこれでいい。なにもしたくない。ベッドの上で座り込む二之前百華は流れる涙を抑えるようにクッションを顔に押し付けた。さらに真っ暗となった視界は何の情報も映さない。


「..........」

幾分か落ち着いたがそれでもクッションは離さない。それどころかますます押し付ける力を強める。それは今の自分の不甲斐なさがそうさせるのか、両親への申し訳なさがそうさせるのか、はたまた兄への...。

ふと何を思ったか、窓の方を見る。もちろん何も見えないが、それは兄への思いを馳せさせた。........お兄ちゃん、私のために頑張ってくれてるのかな。....それとも、昨日は平気そうに喋ってたのに次の日はまた部屋に閉じこもってる私に呆れちゃってるかな。

「.........」

でも、私はもう学校(あんな場所)に行きたくない。.........人影を見たあの時のことが記憶の中に楔の様に打ち込まれている。他に誰もいないあの場所で何かされるのではないかという恐怖。それがご飯を食べたときも、お兄ちゃんと話していた時も脳裏をよぎっていた。誰かに相談しようなんて思わなかった。とうより、少しでもこのことを口に出してしまうと更に色濃く鮮明に思い出されるから言えなかった。それでも.....おとといも昨日もあんな夢見るなんて.....。

「.......つらいなぁ......」

夢は自分が体験したことも関係すると聞いたことがあるけど、その通りかもしれない。この2日で見た夢には両方とも人影が出てきた。忘れたいのに、こういう夢に限って忘れられない。それどころか、内容がオルゴールのように再生される。


私は教室で椅子に座っていた。動こうにも動けない。椅子と身体がくっつけられたみたいに。その後、気づけばあの人影がドアのあたりに立っていた。でも、何をするわけでもなく、顔や服装は依然として見えないままずっと立っている。言いようのない嫌悪感と恐怖が押し寄せて早く逃げないと、という事だけが頭を占める。でも、立とうとしてもやっぱり身体は動かない。何もしてこない人影と動かない自分の身体を交互に見ながら、荒い息でだんだんと視界が暗くなって、そのまま目が覚める。

「..................」

こんなのがずっと続くなんて考えたくない。....それに、おとといと昨日で人影の位置が変わってた気がする。.......なんかこっち側に近づいてきたような...?なら、次見た時はさらに私の方に近づいてくる...?じゃあ最後はどうなるの........?考えたくもないことだけがどんどん思い浮かぶ。それを止めるために頭を振ると、入れ替わるように今度は兄の事が浮かぶ。........今まで私の守ってくれたお兄ちゃんは、今回も私のために頑張ってくれている。それを考えると、いつもあんな反発的な態度をとってしまう自分が憎らしく、許せない。投げだすようにベッドに倒れこむと、スプリングが少し軋む音がした。


.....私だって昔みたいに仲良く話したい。でも、なんか素直に話すのは恥ずかしい。これが反抗期だっていうのは前から気づいてたけど、どうしようもなくて、ずっと冷たくしちゃってる。.........ほんとは、お兄ちゃんって呼びたいんだけどな。百華はゆっくり起き上がってベッドから降りた。

「............のどかわいた」

そう呟いてドアの方に向かい、ドアノブに手を伸ばしてひねる。




ガチャっという音が部屋中にやけに大きく聞こえた。


タイミングよろしく部屋に入ってきた蔭山は申し訳なさそうに元の場所に座った。

「......おう、大丈夫だ」

そう答えて俺も煌成の隣に座る。最初と同じように、正座で。

「...あ、煌成起きたんだね。さっきからずっと寝てたね」

「お、おう。まあな」

動揺が見え見えの歯切れ悪い返答。それに気付かないほど蔭山は愚鈍でなく、怪訝そうな表情を浮かべる。そして、沈黙。それを破ったのは


「......ねえ、急に2人ともどうしたの」

蔭山だった。俺はふっと息を吐いて正面を見据える。出来る限り精一杯の真剣な態度で。

「......その、変なこと訊くんだけど、蔭山さ、一昨日(おととい)何してた?........その、外出たりとかさ」

蔭山は、一昨日...?と小さく聞き返しながら思い出そうと目を瞑る。やがて思い出したのか目をパッと開

いたその顔は平然としていた。それが何を示しているのか、次の言葉を待った。


「......いや、出てないよ。いつもみたいにゲームしてた」

「そっか.......」

まあそう答えるよな。こんなこと訊くってことは、外に出ていようが出てなかろうが、NOと答えた方が良いに決まってる。もしもYESと答えたら面倒くさい問題に巻き込まれるかもしれないしな。蔭山もそれを勘づいたんだろ。俺は煌成の方を向いて目で合図する。

「いやー実はなんだけどさ」

立ち上がった俺はそう言いながらしれっとパソコンの方に向かう。蔭山の相槌を聞きながら、パソコンを背にして机に寄りかかる。

「一昨日の夜に、学校で人影?っつーか不審者っぽいのが現れたらしいのよ。んで、その影響で昨日から全部活活動停止でやばくってさ」

「...........それに俺が関係あるって言いたいの?知らないけど」

今までよりも低い声色の蔭山を見れば、不機嫌そうに俺を見上げてる。いかんいかん、ここでそこまで持って行っちまったら色々訊き出せねえ。急いで取り繕う。

「あ、えっと、そういうんじゃなくてさ、今皆に聞いて回ってんのよ!その.......数撃ちゃ当たる的な感じ!....それでさ、なんか知らね?ほんとにどんな情報でもいいんだけどよ」

それを言うと、蔭山は一応納得したのか二度三度頷きながら目線を下げる。あぶねぇあぶねぇ。....うし、じゃあ続けていかねーと。......ふと、視界の縁に何かが動いているのが見えたが、煌成の頭が下がっていったみたいだ。.........まるで肩をガックシ落としたみたいに。まあ今はそれに構う余裕はない。とりあえず遠回りでもいいから何か訊き出さないと。

「......いや、ほんとに知らない。そもそも僕、ゲームしかしてないし」

「まあそうだよなぁ.....」

うーん、やばいな......なんも情報が得られねえ。どうすりゃいいんだこっから。.......てか本当に蔭山が正体なのか分からなくなってきた。段々と思考が混雑して何も拾い上げられなくなる脳内に焦りが生じる。フィクション作品の主人公のように痛快で論理的な圧倒的最善手が思いつかない。俺はつくづく凡人だ。だが、悔しがる暇はない。今は動かないと。百華のために。

「あー.........じゃあどんな奴が人影の正体だと思う?蔭山的には」

「....別に僕学校行ってないしわかんないよ」

「いやいやそれでも出してくれるとすげー助かる!三人寄れば文殊の知恵って言うじゃん?」

蔭山が思う人影像。これは何かしら得られそうじゃないか?蔭山の考える人影の動機が蔭山自身の気持ち及び動機を映し出すかもしれない。.....いやまあ今人影と決めつけるのは早計かもだけど。三人寄ればって.....煌成黙ってるじゃん...とぼやきながらやがて蔭山が答えた。

「.....普通に学校とか生徒に対して恨み持ってる人とかじゃないの」

「おぉ!やっぱそういう奴がしてるかもだよな!ありがとな蔭山!」

もうこの話は終わりだといわんばかりに、何を返すでもなく無言でスマホを開いていじり始めた蔭山。やばいやばい、この話続けねえと......!

「あー....」

何も考えずに一旦言葉だけは出して、という感じで次の言葉を迷っていると、不意に煌成が口を開いた。


「もういいよ零斗。遠回しにあれこれ聞いても埒明かねえ。..........なあ秀一?」

いつものような陽気でへらへらした声とは違う、怒気を孕んだ厳粛な声に息を吞む。蔭山はどうなんだとみれば、さすがの剣幕に驚いたのかスマホをしまっていた。そして、煌成は言った。


「.....お前が人影なんだろ?」





ちょっと切り悪くなっちゃうんでここまで!次回から煌成のガン詰めタイム


実は体調崩しちゃって投稿ペースが遅くなっちゃってます。本当に申し訳ない。。。気合いで治します!!ここまで読んでいただきありがとうございました!また次回!

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