♯18 まあでも帰宅部ですし
「....幼馴染?」
予想していなかった答えに、思わず聞き返してしまう。
「....あぁ」
頷いた煌成の顔をじっと見る。落ち着かない様子でこちらに目を合わせようとしない。
「..なんで隠そうとしたんだ」
「.....は?」
俺の問いに目をぎょっと見開いて目線を合わせる。さっきからのこの落ち着きのなさの原因は幼馴染という事を隠そうとしたからなのではないかと、勝手な推理をしてこう聞いた。....間違ってたらなんて悲しいことは考えない。
「.......」
無言を貫く煌成にしびれを切らして、質問を変えてみる。
「.....じゃあ、なんでカゲヤマは不登校になっちまったんだ」
「....」
これまた沈黙に留まる煌成。いつもの陽キャはどこに行ったんだ。そろそろ時間的にまずいし、この話はここまでがと切り上げようとした矢先、ひとりごちるような言葉が耳に入ってきた。
「......いじめだよ」
あれから一言二言、会話を交わした後は教室に戻った。煌成の様子は.....よくわからなかった。怒っているのか、悲しんでいるのか、はたまた安心しているのか。.......ま、とりあえず授業受けるかな...。
「で~~ここで主人公は~~」
じっちゃん先生の睡眠導入ASMRを寝ないよう抗いながら聞き流しつつ、ふと考えるのはカゲヤマについて。いじめで不登校。ありがちな理由ではある。.......でも、なーんか
「ひっかかっちまうんだよなぁ....」
「....どうしたの、二之前君」
声に出てしまっていたのか、隣の席の人に聞き返される。焦りと恥ずかしさをこらえながら
「..いや、なんでもない、ごめん」
簡潔に謝る。変に声に出してしまわないように口元まで机に伏せながら再度考える。
いじめ.....人影......夜........学校......カゲ......。連想ゲームのように並び出てきた単語は...あのゲームとの共通点でもある。........いやいやまさかな?そんなわけ無いか。ありえねぇもんな。.......。.............。.................。
いつの間にか、俺は眠ってしまっていた。
....また寝ちまった。いやもうこれ俺悪くないんじゃね?もはや学校が悪いみたいなところあるだろ。
覚醒した意識の中、目を閉じたまま心の中でぼやいて、時計を見れば3時半。がやがやとした教室の状況とともに踏まえると、6限終わりといったところだろう。.............6限終わり?............6限終わり!?!?
がばっと上体を起こして、隣の人に聞く。
「え、今6限終わった?」
「え?..う、うん.....」
ようやく目覚めた隣人の、食い気味の質問に戸惑いつつもしっかり答えてくれる。それを聞いてやっちまったと机の上になだれこむ。
「うっわ~~まじかぁ」
「ふふ、二之前君ずっと寝てたよね。5限目終わっても寝たままだったし」
「......起こしてよ」
恨めしそうに言ってしまう。....6限まで貫通して寝過ごすなんて今まであったか?
「えぇ!?起こしたよ!でも、二之前君全く起きなかったじゃん!」
「.........マジすか」
そう言われたらこちらとしては負けを認めるしかない。いやぁ、ごめん。と言おうと口を開いたその時
[ピンポンパンポン]
スピーカーから放送の合図が聞こえてくる。...なんでだ?と2人で顔を合わせる。すると
[ただいまより、全校集会をおこないます。生徒の皆さんは速やかに体育館に移動してください]
誰かは分からないが、教師の声で集会の旨を伝える放送が聞こえてきた。
体育館に着くと、すでに多くのクラスが集合しており皆が座って待っていた。遅れてきてしまった申し訳なさを態度で示すように素早く列に並ぶ。クラス全員揃ったかの点呼が終わり、俺たちのクラスも床に座る。体育館特有のつるつるした床の感触と肌を伝う妙な冷たさを感じながら、集会の開始を待つ。
やがて校長が壇上に現れる。教師の合図で起立、礼をして再び座る。
「えー今日皆さんに集まってもらったのは.......」
そして校長が話を始める。
「はーつかれたー」
教室に戻り、慣れ親しんだ自身の席でリラックスする。みんなも同じようで、口々に「疲れた」だの「話が長い」だの文句を言っている。担任が来るのを待ちながら、校長の話を思い出す。
要約すると、集会の理由は百華の人影の件(もちろん百華の名前は出されていない)。そして現在、警察の方で調査を依頼しているとのこと。最後に、生徒の安全を考慮して今後、すべての部活動の活動を一時停止するそうだ。最初、これ言われたとき体育館全体にどよめきが走った。期間の方は大人たちが話し合って決めるらしいが、それにしたってこんな事態は初めてだ。教室に戻る最中も
「やっばラッキー!」「部活無いの萎えるわー」「警察沙汰ってすげえな」
興奮が冷めやらぬ様子で話題の大半を占めていた。まぁ俺は帰宅部だし、別に何の影響もないんだけどな。.......それにしても良かった。一時停止という事は、百華がもしも数日間、または数週間学校に来れなくても部活内で実力が突き放されることがない。.....数週間も学校に行かないなんて事はあってほしくないが。...それに、皆の会話の中で"カゲヤマ"の名前が出ていない。これが噂になってしまうとカゲヤマにとって良くないだろし、煌成にとっても良くないから助かる。煌成の方を見ると、近くの席のやつと数名で談笑していた。
「じゃ、皆気を付けて下校するように。.....お前ら遅くまで学校残んなよー。.....はい、号令」
担任の軽い注意の後、挨拶をして皆動き始めた。俺はカバンを持って煌成の席に向かう。
「うい」
まだ席に座っている彼の頭に優しくカバンを置いて呼び掛ける。
「いてっ...零斗かよ」
振り向いて、不満そうな口ぶりで下校の支度をする煌成。その様子は昼よりも明るいもののように見えた。
「へいへい零斗君ですよー。女子が良かったか?」
「当たり前だろ」
「じゃあ零斗ちゃんってことで」
「きも」
「うっせ、多様性だボケ」
いつもの軽いやり取りをしながら席を立った煌成と教室を出る。
「お前もう帰るだろ?」
「うん、部活ねえしな」
「俺も部活無いからなー」
「帰宅部だろお前」
「.....じゃ、俺帰れないじゃん」
2人で笑いながら階段を下りる。うん、煌成も大丈夫そうだ。
「...こっからどうするよ」
ふと、会話の最中に聞いてみる。カゲヤマの事についてという真意を交えて。
「あー?............普通に帰るんだろ」
少し間が開いて、煌成が答えた。ちらりと横を見ると、肩にかけたカバンをずり落ちないように押し上げ、その顔はしっかりと正面を見据えていた。視線は言葉よりも雄弁とはよく言ったものでどこか含みを感じたが、それについて詳しく問おうなんて思ったりはしなかった。
あの後は特に中身のない会話を続けて校舎を出た。多くの生徒でごった返す駐輪場からなんとか自転車を持ち出して、正門までやってこれた。煌成は先に校門で待っており、スマホで何かを打っていた。
「いやー人多すぎるわ、チャリ取るだけであんなに時間かかるとは」
「......」
俺の声が聞こえていないのか、スマホから顔を上げない煌成にさらに近づく。
「煌成くーん。おまたせ、待った?」
その声でようやく気が付いたのか、うぉわっと声を上げて振り向いた。
「ビビった....声でけえよお前」
「お前が気が付かねーからだろ。ずっとスマホいじりやがって、女子か?」
スマホをポケットに入れつつ呆れた顔でこちらを見てくる煌成。.......なんだその目は。
「んなわけねえだろ。....ちょっと連絡入れただけだよ」
「はいはい。おら、行くぞー」
2人で自転車を漕ぐ。同じように自転車で下校する生徒が多いのでスピードは出せないが。
数分漕いで分かれ道まで着いた。煌成と俺は別々の方向なのでいつもここで別れる。今日もそうだ。
「....んじゃ、おつかれさーん」
「あいよー、また明日な」
そう返事をして、家へと向かう。
仲睦まじくならんで歩くカップルやぎゃいぎゃい騒ぎながら自転車を漕ぐ男子3人組を見ながら考えるのは百華の事だ。百華は.....大丈夫だろうか。明日も学校に行かないなんてことは....。....いや、百華がどんな選択をしようとも受け入れてやらないとな。信号が赤に変わり、漕ぐ足を止める。
「.......ふぅ」
それと、俺は今日煌成に対して百華が昨日の被害者だという事を伝えなかった。まあむやみに他人に言いふらすような奴ではないと分かっているが、言う気にはならなかった。....カゲヤマの事もあるしな。人影とカゲヤマに関連があるのか考えている矢先、信号が青に変わる。
「...まぁ」
そんなのは一旦置いといて、まずは百華だ。早く帰って様子でも聞いてみるか。そう思うと、漕ぐ足が軽くなったように感じた。.....元気かな、百華。
最近寒すぎて朝起きるのが辛い....
ここまで読んでいただきありがとうございました!たまにはこんぐらい早い時間に投稿するかもです!!また次回!!




