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♯17 どんな関わりが?

教室に戻り自分の席の方へ目を向けると、前の席に座ったままの煌成がペンを回しながら教卓付近の女子数名となにやら駄弁っていた。へん、陽キャめ。

朝特有のクラス内の喧騒を感じつつ席に座る。椅子を引く音で俺が帰ってきたと気づいたのか、女子との会話を切り上げてこちらを振り向く煌成。

「おかえりー」

「あいよー。.....なんでまだお前ここにいんだよ」

「え~?俺まだ零斗君と話したいの~」

「....」

よくわからないキャラでくねくね動きながらペンを俺の筆箱にしまう煌成。

つーかそれ俺のかよ。

はぁ...と軽い溜息を吐いて、俺は先ほど聞いた話の内容、主に"カゲヤマ"という生徒のことについて話すことにした。

「さっき聞こえたんだけどよ」

「え~どうしたの~?」

「お前それやめろ」

へいへいとしょうがなさそうに、しぶしぶ動きをやめて改めて話を聞く体制に入る煌成。ここら辺のふざける線引きがしっかりしてるから憎めねぇやつだよな。

「そんでー?」

「その、今朝の人影の件についてなんだけど」

「ほうほう」

「カゲヤマ?っていう生徒の呪いだーみたいなの言っててさ」

「.....!」


その名前を出した途端、煌成の眉がピクッと動いた。だがそれを疑問に思うでもなく質問する。

「煌成さ、なんか知ってる?そのカゲヤマって人の事」

若干、煌成の顔が暗くなったように感じた。少しの間、沈黙が流れる。がやがやとざわめく教室の雰囲気とのコントラストで俺たち2人の静けさがやけに際立つ。何かまずいことを言ってしまったのか、と不安になりながらもアンサーを待つ。

やがて

「.......えっとな」

煌成が口を開いた。その顔は先ほどの陽気さがまるで感じられない。

「そのカゲヤマって奴は――」

[キーンコーンカーンコーン]

そう言いかけた途端、この教室含め校舎全体にチャイムが流れてくる。

「あ、チャイム」

「.....後で話すわ」

「...おう?」

あれだけ喋っていた他の生徒はみな席に戻る。煌成も席を立ってその動きに混じり自分の席へと向かう。煌成の態度に疑問を持ちながらも、俺は1限の準備のため教科書とノートを机の中から取り出す。

あー今日も寝ちまいそう....


[キーンコーンカーンコーン]

いやぁよく寝たな。うん、良い睡眠時間だった。

机に突っ伏している俺はチャイムで授業が終わったと判断して顔を上げる。

まあ序盤はちゃんと受けてたしな。その証である、謎の古代文字で板書が書かれている残骸(ノート)及び授業道具を机にしまう。そして続きを聞きに煌成の席に向かう。

「なー煌成?さっきの話の続きだけど...」

先ほどの話から1時間は経っているのに、一向に暗い顔のままの彼は俺の方を向いてぎこちなく笑う。

「......わり、その話は昼休みでもいいか?」

「ん?まあ別にいいけどよ。....てかさ、今日の体育でさー」

あの微妙な気まずい間はこりごりなので、その断りに突っかからず話を変える。


「やっ......ば....」

1限のみならず2限も寝て、なんとか起きて授業を受けた3限の後の現在4限。俺たちは体育でバスケをしている。ちなみに絶賛大ピンチ。俺の目の前には相手2人がボールを奪おうと手を伸ばしに来ている。

そんな中、ボールを取られないようにパスコースを探している俺に救いが。

「おーい二之前ー!こっちパス!!フリーフリー!」

「...お、おう.....!....あ」

クラスメートのその声に応じてパスをする。が、残りHP1である俺の力無いパスは軽々と防がれて、相手チームにボールが渡る。一斉にゴールに向かう相手全員の波に揉まれながらもディフェンスに切り替える。

「なーにやってんだ二之前ー!」

「わ、わりーわりー!」

ゼエゼエ息を切らしながらもボールを奪おうと奔走している最中(さなか)ピーっと笛が鳴る。

「はい、じゃあ5分休憩取るぞー!」

体育教師の声に従い、皆コートから出る。俺は少ししゃがみ込んで足りない酸素を脳に送り込もうと何度も呼吸する。

「.........はぁ、はぁ....」

くっそ、考古学者(笑)のこの俺が....無念。

体操服に付く汚れなんて気にせず大の字に寝転がる。すまん、母さん。

まーたこんなに汚しちゃってー!とか言われることを想像しながらも呼吸を繰り返す俺を影が飲み込む。

誰なのか分かっている俺は顔を上げず、代わりに手を伸ばす。

「おーい大丈夫か?」

そう言って俺の手を引っ張り上げてくれたのは煌成。

「わりぃな」

今度は俺が謝って、2人で木の陰へと歩き出す。


「あっちー。これで5月ってマジかよ」

「やってらんねーよ」

俺たち以外にも多くの生徒が避暑地として利用している木の陰ではそんな会話が飛び交う。

「はぁ....つっかれたー」

「はは、あっちのスパイすんのが?」

俺の嘆きに茶々を入れる煌成に軽く小突く。

「しゃーねえだろ、後半まで体力持たねえんだから....」

「最後の取られたところ、パスじゃなくてドリブルで切り込めよ」

「うっせえ、お前じゃねぇんだからよ...」

煌成の返しに反論を入れつつもう一度深く呼吸をする。

かなり体力は回復したけど、それでもまだ全快とまではいってねぇな。...まあそりゃそうか。

「おいおい、大丈夫かー?」

そんな俺を見て心配そうに声を掛ける煌成の顔を見つつ、こう言ってやる。

「......お前こそ大丈夫かよ」

「......?、何が?」

「.....別にー」

ハテナマークを顔に浮かべる煌成の顔から眼を逸らして、俺は寝転ぶ。汗で火照った体を癒しながら、髪をはためかせる新緑のそよ風を感じながらも自分が発した言葉を反芻する。

朝の態度といい1限後の言葉といい、今日の煌成はどこかおかしい。授業中、ずっと上の空の様子だ。さっきの試合もそう。大の得意で大好きなバスケだが終始身が入っていないように見えた。いつもならバスケ部として無双しながらもチームを鼓舞しつつ、ボールに触れていないチームメートがいればパスを出す。なのに今日はことごとくボールを奪われ、チームへの声掛けも少ない。どこか空回りしているように感じる。...やっぱ、朝の俺の言葉か?...つーかこれしかありえないか。

軽い罪悪感を感じる。だが、どうしようもない。今更その話題をぶり返したところでなのでどうなるんだ。.......ここは昼休みまで変なこと言わずに待つべきだな。

むっくりと体を起こして煌成の背中をバシンと叩く。

「いって!!何してんだお前!!」

「うるせー、次勝つぞ!!」



「5限なんだっけ」

「現代文」

授業が終わって、昼休みに入る。俺と煌成は他愛もない話をしながら弁当を食べる。ちなみに、さっきの授業は全敗だった。.....俺だけのせいじゃないからな!煌成も良くないところあったし!

「うわだるー」

「お前どうせ寝るだろ」

「うっせ」

反論しながらおかずを口に運ぶ。体育のあとはやはり腹が減るが、のどに詰まらせないように俺はさらに白飯を頬張る。その後も中身のない呑気な会話を続ける。

「ごちそーさま」

「ごちそうさま」

ほぼ同時に食べ終わり俺はお茶を飲もうと水筒に口を付ける。

「....零斗」

徐に煌成が口を開く。ようやく来たか。

「...ここじゃなんだから外で話さねえか?」

「おう」

その提案を受け入れて水筒をしまう。そして、俺と煌成は教室を出る。


煌成の後ろをついていく際中、その背中を見つめながらぼんやりと考える。考えるのはカゲヤマという生徒の事、煌成との関係。それと.......百華の事。......百華は今、何をしているのだろうか。

メッセージでも送ってみようかと考えたが、それは今の彼女の精神状態を踏まえ逆効果になりかねないと判断してやめた。それにしても不安だ。もしかしたらこのままずっと......。

良くない想像ばかりしてしまい、取り払う様に頭を振る。

「.....」

「.....」

そんな中でも、2人の間に会話は無い。

階段を上って、やがて渡り廊下に出る。この学校の渡り廊下は本校舎と旧校舎間を経由するために増築されたものであるが、近年旧校舎での授業が少なくなっていることで人の通りが少ない。話をするにはうってつけの場所だろう。ここで、ようやく煌成の足が止まる。

「...ここらへんだな」

振り向いた煌成の顔は、いつもの面影を感じさせない弱弱しい表情だった。


「....」

「....」

こちらから内容を急く真似はしない。無蓋(むがい)の廊下に差し込む、ほのかな陽光を受け、煌成が話し始めるのを待つ。

「...えっ....とな」

やがて、煌成が口を開く。


「そのカゲヤマってのは....同じバスケ部のやつだったんだ」

「....そうか」

「......よく1on1とかしてたり。......めっちゃ仲良くてさ。.....でも」

そう言って再び口を閉ざす煌成。...なんとなくは予想がついていた。何かしらのかかわりがなければあそこまで気を落とすことはないからだ。ふと、視線を校庭の方へ向けると、男子生徒数名がバスケをしている。...それを見やりながら今度はこちら口を開く。

「...不登校になっちまったのか」

「.........え?....あ、あぁ..」

こちらも、朝の女子生徒の言葉や煌成の表情から予想ができる。.....それにしても引っ掛かる。

「....そんで、他には?」

「....え?」

驚いた表情の煌成に詳しく問う。

「..だから、他にはどんな関わりがあんだよ」

...引っ掛かったのにも理由がある。たとえ仲の良い、部活の友人が不登校になっても、ここまでは引きずらないだろう。いや、引きずるかもしれないが、数か月経ったであろう現在で日常生活に支障をきたすほどなんておかしいように思える。もしかしたら、急に名前を出したせいでこうなってしまったかもしれない。でも、問わずにはいられなかった。

「.....それは」

言い淀む煌成。俺は顔を動かさず、目線のみでこの廊下を見渡す。今現在、この廊下には俺たち以外誰もいない。珍しくないのかもしれないが、神様がそうさせたのかもしれないな、なんてぼんやり思う。

「お、俺の...」

続けたその言葉はどこか震えているように聞こえた。


「...幼馴染.....なんだ....」

まさかのカゲヤマと煌成が幼馴染!?とんでもねぇな...


ここまで読んでいただきありがとうございました!また次回!

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