表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

おこめがうごいた

作者: 藍染クロム

「おかーさん、おこめがうごいたー」


 リビングで娘が呼んでいる。洗濯物を置いて見に行けば、娘はそこのテーブルに顎を乗せて、テーブルの上の何かをじっと見ていた。


 娘の視線の先、テーブルの上に一粒の米がある。これを見ているの? 炊く前の、ひとつぶのお米。はて、どうしてここに。


「どうしたのー? ミカちゃん」


「おこめがうごいたよー?」


「おこめがー? 不思議だねー」


 米びつの中で、静電気か何かで米粒が浮いてくるくると回っているのを見たことがあるが、テーブルの上にあるのは一個の米粒だけだ。炊く前の、乾いたこめつぶ。


「ぎゃっ!」


 私はあわててそれを潰していた。お米が動いたのだ、突然、丸い背中がぱっくりと割れて、二枚の羽が現れ羽ばたこうと……。手を外して見れば、手の下には、潰れた白い虫がいる。気持ち悪い……さっさと手を洗って来よう。お米に似た虫なんて、今まで見たことがあっただろうか?


 私はキッチンで手を洗って、そこに置いてあった米びつに目が留まる。気になった私はしゃがみ、プラスチックの大きなケースに顔を近づけた。


 中には大量のお米が入っている。揺らしても、じっと見ていても、動かない。まぁ、大丈夫だろうか。昨日炊いて食べたし。それでも、一匹くらい、混じっていたりは―


「おかーさん?」


「なにー?」


「ほら、これー」


 不安に駆られ、私はケースの中を念入りに見ていた。娘は私の後ろに来ていて、振り返れば、その胸元に、飲み物を飲む用のコップを持っている。


 コップの中に、炊かれたお米がいっぱいに入っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
虫!こわ! ダンジョン飯に宝石に擬態する虫がいましたね。それを思い出しました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ